北へ
ミニラとの約束の昼迄に後1時間
ユージンが侯爵邸迄迎えに来た..王家の馬車で....はっきり言って乗りたくない。何この金ぴかな乗り物。確かに派手でも下品でもないけど黒光するほど磨かれた馬車には両サイドに王家の紋章が金で打ち出されている。
田舎貴族が乗っても罰っせられないか、本気で心配する。マナーとか常識(社交界)など全く知らないので..
「待たせたね」
ユージンが言う
「王家の馬車に王族以外が乗るのは駄目ではないのですか?」
田舎者は素直に聞きます
「王族の許可さえ有れば問題ないよ、普通に迎えとか差し向かわせるしね」
「そうなのですか、クライム男爵家の家風がマナーを覚えなくとも良い。とかなので何も知らなくて」
「アハハハ、魔槍将軍や魔剣団長らしいね。でも母君達は教えてくれなかった?社交界の炎姫と氷姫と呼ばれたお二人なのに」
「え?侯爵家の娘なのに姫ですか?」
「そうだね、普通は呼ばないけど。特別な人達の場合は別かな」
「特別ですか..凄く過保護な母達ですが..」
納得出来ません、特に石鹸に対するあの要求..
「ミ~ニ~ラ~」
少し速いが着いたので取り敢えず呼んで見る
あ!来た
「ゴルルル」
地上に降りた瞬間コテッと横になって撫でろ!の催促、1日放置してたので予測はしていたがいきなり過ぎませんか、ミニラさん
「凄く馴れてるね、しかし大きい..」
撫でてると、ユージンが近寄って来てミニラに触る。
「9メートル余り有ります。でも、北のドラゴンは17メートルとか。2倍近いですよ」
撫でながら話す、今止めると頭を擦り付けて来るので痛いし
「それでも勝つ気何だよね」
笑いを含みながらユージンが言う
「奪う事しか考えない理不尽に対して、たとえ片翼でも良いから奪ってやる!と言う覚悟が有るだけです。心が嫌がる事を拒否する為なら命も惜しまない。お前もそうだよなミニラ」
「ゴルルル」
「それが、ガンジー殿の生き方なのですね」
「呼び捨てでお願いします、ガンジーで。そろそろ参りませんと、北のドラゴンがどれだけ迫っているかも不明ですし..先発体が先に遭遇してし倒してしまったら。ただでさえ元気な祖父の口が更に元気になって手が付けられなくなってしまいます」
「ここ数年、祖父が。ジョンめが最近嬉しそうな顔で自慢ばかりしおる。同じ自慢なら五月蝿いと言えるのだが新しい自慢ではそうもいかん。しかも、しかめっ面しか見せなんだあのジョンがだ。あれでは、ただの好好爺ではないか、羨ましそうに話すのです。さもお前も頑張れと言われてるようで、私も困り果ててるのですよ」
遠回しに言った言葉の意味を悟ったようなユージンの言葉から逃げようとしたのだが、飛んでもない事を聞かされて一瞬固まってしまった..爺ちゃん何を喋ってたんだろう..不安になる
「それでは失礼致します」
「ミニラお願い」
兎に角退散する為に無理やり話しを打ち切りミニラと共に飛び立つ
北のドラゴンが最南下したのが王都から500キロの地点、頻繁に出没するのが王都から650キロ前後。それより北はかなりの惨状らしい..
北に接する隣国にも、ドラゴンが遠征するらしいが国交が無く。情報は商人がもたらすのだが、ドラゴンが出没する為商人の出入りが途絶え情報が集まらないのだとか。
先発隊が出発してから5時間遅れで。王都を飛び立った俺は、ミニラの背中で。王族に対する畏れなど微塵も存在しない前世の感覚で余計な事を言ったかな?とひたすら反省中です。王宮でも緊張して、用意していた言葉は忘れるし..言いたい事や伝えたい事の表現が上手く出来なかったですし..不安要素が増すばかりです..
実際に表向きは繕いますが、内面的には身分に対する拘りなど欠片も存在しませんし..
種族に対する差別意識なども存在しませんが、珍しげに見てしまうのは仕方無いです。前世のネット社会では此方の世界で奴隷扱いされてる獣人や人魚は神様扱い的な信奉者も居ましたしね。獣人の女性や他の獣人の特徴を未だ知らないので明記は避けてますが、今まで見た獣人は、人間が頭髪と耳と尻尾を付けたコスプレの少し毛深い人くらいの感じですし。
獣人の可愛い女の子の尻尾を触って殴られてる自分が見えるようです..
暫くして走る騎馬の集団を視界に捉えました
先頭を走るのは、兜も被らず走る爺ちゃん..予想通り過ぎます。大将なんだからのんびり守られて真ん中を走れば良いのに気性が許さないのでしょうね。のんびり飛んだとはいえ1時間近く飛んだハズですから少なくとも、100キロ以上は進んだ計算になります。
甲冑姿で時速20キロ近くとか..馬と騎士達にどれだけ無理をさせてるのか..
300メートル程先に飛び越して降り立ち爺ちゃん達に向かって歩く、馬が怯えて進まなくなるので..
「お祖父様、少し休まれては?」
爺ちゃんが駆け寄り馬から降りたので話し掛ける。後続の騎士達は近付いて来ない。ドラゴンが恐ろしいのか?爺ちゃんが恐いのかは解らないが
「ガンジーか、もう来たのか。騎士たるものこれくらいで疲れて何とする」
相変わらず脳筋な事いって相変わらず脳筋な事を言ってる爺ちゃん..後ろの騎士達は肩で息してますよお
「まあ、そう仰らず少し休んで下さい。今日は何処まで進まれる予定なのですか?」
爺ちゃんに話しを降って休ませて上げないと、馬や騎士達が可哀想だ..
「今日はタルミーの町迄じゃな」
王都から北へ180キロ程の所にタルミーと言う町が有るそうだ
結局15分程休憩後に出発、途中で1度馬を替える為に町に寄り日暮れ前にタルミーの町に到着した
「私はミニラと町の外に泊まりますので、ここで」
騎士達と話すのが面倒だと思って逃げようとすると
「飯だけでも食っていかぬか?」
珍しく遠慮がちな爺ちゃん..仕方なく頷くと。嬉しそうに爺ちゃんは笑った
「ミニラ、ご飯食べて来て。俺は1時間半くらいでここに戻るから。あ!食事は山の中でお願いして良い?余り人を驚かせたく無いから」
「ゴルルル!」
如何にも解ってるよ。と言いたそうに鳴いて飛び立って行く
「お前達は、本当に会話が出来てるように見えるのお。あんなに難しい話しがミニラに通じるのか?」
「ええ、多分..」
俺に聞くなよ爺ちゃん
タルミーの町は人口500人余り程の町で北への商人達が使う宿屋が建ち並ぶ町並みなのだが、今は活気がまるで無かった。300人に及ぶ騎士達の分宿が宿屋だけでは賄えるハズもなく、先触れに従い急遽代官が整えたらしい。
俺が懸念してた騎士達との会話は、爺ちゃんの射殺すような視線で撃退されて回避出来た。爺ちゃん..自分が話すのを邪魔されたくないと言う理由だけで睨んでたらしいが..
「お祖父様、今回の王宮の件の事は忘れますが。次に同じ事をなさった場合には私にも考える余地が無くなるかも知れませんので」
「う、うむ。解ったのじゃ、じゃから許せガンジー」
話も聞いたが、釘もちゃんと刺して置いた。俺には甘い爺ちゃんなので
夜はミニラと寝た
ご飯食べたのか?って聞いたら満足そうな顔で鳴いてたので問題無いだろう。何時ものようにミニラの頭の所で眠る。今では、野外でもミニラの側なら無警戒で眠れる。殺気とか怪しい気配にミニラが敏感に反応してくれるので..ドラゴンの眠りは浅く思える。爆睡していたのは最初の1年くらいだけ。物音がすれば目だけ開けて伺って又目を閉じる感じだ。
朝が来て再び北を目指す
騎士達の速度に合わせてるので眠くなるのだが..




