お掃除失敗
毎日欠かさずドリーを構ってるのですが、今日は早朝から海岸に居ます。
「前に聞いた島へは真っ直ぐ南に行けば良いのかな?」
「はい、真っ直ぐ南に行くと小さな島とその島を囲むようにもっと小さな島が5つ少し離れて2つ有ります」
「ありがとう、後で行って見るよ」
人魚達は室内で生活しない、浜辺にはいくつものビーチハウスのような屋根だけの建物があるだけ。それと同じ数のかまど付きの鉄板焼きテーブルが存在してますが。鉄板には全て大理石コウティングしてありますけど。
最近、言葉使いが肉体年齢相応と老齢の混濁化が進行してます。感情が昂ると前世の言葉が出やすくなる傾向になるような気がします。微妙に不安定な気持ちに成りやすく困りますね。
「ミニラ、今日は遠出して狩りをしようか」
「ゴルルル!」
「乗せてくれる?」
「ゴルルル!」
ミニラがアゴを地面に付けて、俺があたまの部分からよじ登るのが通常時
設備(段差)が有る所では段差を利用しようと考えてますが、今は段差が有りますから背中に飛び乗ります
ミニラの背中の袋に入って飛んでます。
眼下には海原、前方には島が見えますが。遥かな海上と言う程でもなくクライム領の砂浜から5分で到着しそうです。現在俺とミニラの高度は50メートルくらい..高いよ..
中央の島の大体の外観は1キロ余りの長さと、300メートル程の巾の楕円形で1キロ程の砂浜が、50メートル程の巾で続いていて。島は東西に長い形で海に浮かぶように存在している。砂浜側は南に面していてその沖に2つの小さな島が、北側の緑色に覆われた方の沖には3つの小さな島が、真ん中の島から100メートルから300メートル程離れて、真ん中の島を囲むように存在してる。真ん中の島のから北に500メートル程離れて、島と言うより飛び出した岩の固まりみたいなデコボコした縦横共に30メートルくらいの岩場が有り、そこから更に200メートル程北にもう1つ島が有る。これが上空から見える8つの群島の簡単な全貌。
「ミニラ、真ん中の一番大きい島の砂浜に降りようか」
「ゴルルル!」
フワァッって軽い浮遊感と共に砂浜に降りるのが解る。袋から出て砂浜に降りたら、いきなり前方の砂が動き始め此方に向かってくる。反射的に魔弾を打ち込んだ。
「ザザッザー」
砂が持ち上がりミミズの親分みたいなのがが顔を出したので、炎魔法の炎球を打ち込んだらアッサリ黒焦げに焼けて動かなくなる直系80センチ程の太さ、体は砂にまだ埋もれてるから長さは解らない。炎が弱点かな?
「ミニラ、引っ張り出して」
「ゴルルル!」
ミニラが持ち上げると砂が捲れ上がり5メートルくらいの体が出てきた。魔石の場所が解らないので取り敢えずショートソードで開いて見た。ミスリルなので良く切れる。頭部の一番端から60センチ程の所に魔石は有った。握り拳程あり何故か金色。体液に触れるのはマズイかも知れないのでショートソードで掻き出す。ミスリルのショートソードで掻き出す何て..冒険者さんに怒られそうだ。魔石を水で洗ってミニラに投げると、口で受け取りガリガリ食べた。
何とかドラゴン狩りに出る前に島のモンスターを駆除して、人魚の隠れ家を確保しようと思ったけど..隠れてるモンスターを探して狩ったのでは時間が掛かり過ぎて無理。
どうしようか?と悩むも良い考えが浮かばない..
暫くして自分が、如何に頭が悪いか..と言うのと。最近の情況にどれだけ緊張してたのか..って事に幸運にも突然気付けて、自分で自分に苦笑する。視野が狭まるって言葉が有るが、文字だけじゃ意味が理解出来ないのが何度も体験した事実。今回も同じ。
少し気持ちが殺伐としてた事にも気が付けない程に。死の恐怖の存在を無理やり見ないよう考え無いようにしてた。それが思考の巾もゆとりも阻害して獣人の行動に苛立ったり、今も8つの島の全部のモンスターを駆除しなきゃとか思い込まされて焦ってた..
気付けたきっかけは簡単な計算からその後は理解が頭の中で拡がり始めた。一番北の小さな島でも南北100メートル程、東西200メートル程は多分有った。前世の感覚だと畳が1万枚以上楽に敷ける。1人2畳で窮屈だが5000人収容できる。少し離れた岩場でさえ単純計算で480畳分以上の広さ。こんな簡単な事にも目が行かなくなってた自分の肝の小ささに笑えた。
「ミニラ、一番北の島に向かって欲しいのだけど良い?」
「ゴルルル!」
ミニラは何時も変わらない、恐怖さえ感じないのか?それとも、それさえ楽しんでるのかな。と今の俺には思えた
憑依されてた恐怖が落ちた為かどうかは謎だが、高さが怖くなくなってた。多分..死ねない!死ねば家族が、ミニラが、人魚達がって独りで全部背負った積もりで居たのかと、自分の命が全てを握る鍵だとか思い上がってたのかと再度気付かされる。守る以前に自分自身が守られていた事、今も守られている事を思い出せた。
爺ちゃん、父ちゃん、母さん達、家族の言葉を思い出してた。今なら解る、俺が決めたから家族達が運命を賭けるのではなく。家族の誰かが決めて、納得さえすれば家族全員がそれに向かって進む。
爺ちゃんが言ってた言葉
「お前が王家を相手に戦うならば横に並んでやりを振るおう」
立場が変わって爺ちゃんが国に喧嘩を売ったら?爺ちゃんが独りで王都に向かって一騎掛けするのを見てるか?答えは否だ、爺ちゃんの行動の原因を聞いて。納得したら一緒に突撃する!それは間違い無い。その時に死んだら?とか考えるか?答えは否だ。死ぬ覚悟も無く死地には向かえない。
やっと今になって家族の考えが理解出来た。明日を思う為には覚悟が要る、それは戦いに赴く男だけの物ではない。家を守る女性達、幼いジーンズにさえ必要なのだと。死と隣り合わせに生きる世界。領域のモンスターが領地に攻めよせる、近隣の領主が攻め込んで来る、国家間の戦争勃発。常に近くに死が有ったのを。前世の平和な日本の暮らしの記憶が邪魔をして目隠しされてた。
子爵の奴隷狩り達、50人近い殺害を自分だけの覚悟で済ませた積もりになってた挙げ句に自分が死ぬ覚悟さえ見失って..
シッカリしろ!殺す者は殺されるのも当たり前だろ!自分の命だけを惜しむのは、間違いだ
ミニラと北の小島に降りた時には、心も体も軽くなってた
「ミニラあ~、ガンガン行こうかあ」
「ゴルルル!」
俺のテンションの高さが感染したのかミニラの鳴き声も軽い気がする
夕方迄弾けたように狩り捲った、ミニラが食べ切れなかった魔石は袋に入れて持ち帰る。帰り道のミニラの背中も全く恐怖を感じなかった。感覚が麻痺したとかでは無いハズ..多分
俺の衣服は見るも無惨にボロボロ、傷も無数に有ったが、毒とかの異常も無く簡単に治せた。服は廃棄処分になるだろうが..
海岸の砂浜で大隊長全員と食事を取り、その後ルールーの足を枕にして寝転がってお腹の上にドリーを乗せてる。大隊長達も近くで寝転がって話し掛けてくる。
「全員で一緒に発情する何て珍しいね」
マールーが冗談を言ってくる、自分で言い出した言葉だが..いい加減発情って言葉はやめて欲しい..気まずい
「ドリーの前では、そういう言葉や会話や態度全て禁止します!これは領主命令です。違反者は構うのやめます」
本気とも冗談とも取れる口調で話す
「ひっどおい!差別だ、ドリーも私達と同じ女だよ」
マールーが苦情を言うのを少し不思議に思いながら
「ドリーは女とは違う俺の娘だよ」
アッサリかえすと全員、ルールーさえ不思議そうに俺を見る。少し考えたら直ぐに納得出来る答えが見付かった。人魚達には父親の概念が存在しない。父親として振る舞う人間も知らなければ、父親が娘に対する態度も知らない。今迄は人魚達に取って男とは子種を得る手段に過ぎなかったのだと気がついた。
今、ここには誰でも良いではない、誰誰が良い!の気持ちを持ち始めた人魚達が居る。だから、ちゃんと言わなければと思った。
「お前達人魚も自分の子供を可愛いと思うだろう?それと同じ気持ちだ。ドリーはルールー独りで作った子供じゃ無い。俺とルールーで作った子供だ!それは、俺がお前達と作った子供にも同じ事が言える。俺は自分の娘を愛するが、自分の娘に発情する事は無い!絶対にだ」
真剣な声で伝えると
「それは、私達が自分の子供に対する想いと他の人魚の子供を可愛がる思いが違うのと同じ事と言う事ですか?」
サールーが聞いてきた。
「サールーは賢いな、そうだよ。自分が産ませた人魚の子供も他の人魚の子供も可愛いと思うが、その可愛いと思う気持ちは別の可愛さなんだよ」
納得する者、悩んでいる者、俯いている者様々な反応..全て理解するのは難しいだろうな..
「やっぱり子種が欲しい..」
メイリンが呟き、頷く数名
「あれえ、俺に、構っていらない者が居るみたいだなあ」
俺が呟くと慌てて顔を別方向に向けて知らない顔をするのが面白かった..
夜眠る時、久しく忘れてた痛みが襲ってきた。それもとびきりの..痛みに悶えてると、周りで寝ていた人魚達が心配して体を撫でてくれた。人魚達にも位階が上がる痛みに理解が有るから、何も聞いて来ないし変な部分にも触れて来なかったのは当然ですが




