表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死刑—世界を救えば死ねるらしい—  作者: 茄子田わさび
第三章:愛と精霊の鎮魂歌
68/69

第63話:再会

ギルドに戻り、報告を済ませた俺たちは併設(へいせつ)された酒場に足を運ぶ。

 そこにはやはり、あの男がいた。


「……久しいな、バロン」

「お前……シュラグじゃねえか!」


 シュラグが声を掛けると、バロンは驚いたように椅子からずり落ちる。

 そして彼の元に駆け寄り、ぺたぺたと体を触った。


「元気にしてたのかよ! まさか町に顔を出すとは……その様子を見るに、ヴァニたちとよろしくやってるみたいだな」

「ああ、色々と事情があってな。世話になることにした」


 そしてシュラグは「それより……」と話を切り出す。


「長いこと、顔を見せずにすまなかったな。友よ」

「へっ……バカ野郎が……! お前が元気なら、俺はそれで構わねえよ!」

   

 その光景を、俺たちは微笑ましく見つめる。

 ノエルに至っては涙ぐんでいた。


 彼らの友情は本物のようだ。

 

「ここは二人っきりにしてやろうか」

「……そうね、積もる話もあるでしょうし」

「はい。私も賛成です」

 

 俺たちはそっとその場を後にする。


 ギルドの外に出て町をぶらぶらと歩きながら、考える。


 この町に来た当初の目的は果たされた。

 無事に弓士であるシュラグを仲間に迎え入れ、彼の腕前が信頼に足るものだということも確認できた。

 

 となれば、次の目標はやはり──


「【終末の使者(ヴォリオノ・ラフィネ)】か……」


 俺は呟く。

 奴らを探す理由は今のところ二つ。

 

 一つは、シュラグの復讐のため。

 彼とはそういう契約で仲間になったのだから、当然といえば当然だ。


 二つ目は俺自身のため。

 奴らが世界を滅ぼそうとしている元凶だというのならば、奴らを潰せば俺の不死の祝福は消える。そうすれば、俺はようやく正しく死ねるというわけだ。


 ……ああ、三つ目があったな。


 俺は、何だかんだ言ってこの世界を気に入っているようだ。

 この世界には、既に大切な存在が何人もいる。

 

 ノエル、セスカ、メルシエラ……それにシリウスたちやシュラグだってそうだ。

 彼らの笑顔を、平和を奪わせることは断じて許さない。だから止める。


 それに、鏡花も言っていた。『世界は、優しくあるべきだ』と。


 俺は彼女の言葉を守りたい。実現したい。

 だから邪魔なんだよ、終末思想のキチガイどもは。


「ヴァニさん」

「ん?」

「なんだか、これから(・・・・)って感じがしますね。ふふっ」

「……ああ、そうだな」


 ノエルにつられて、俺も微笑む。


 これから、か……。

 確かに彼女は、こういう冒険に憧れてる節があったな。


 そしてそれはノエルだけじゃない。


「セスカも、楽しめてるか?」

「え? ええ、アタシはヴァニと一緒にいれるだけで──ごほん、アンタたちとの旅も悪くないわ」

「ははっ、そうか。それなら何よりだ」


 セスカは何かを言いかけて、それから顔を赤らめながら肯定する。

 

 確かに、俺たちの旅の最終目的は暗いかもしれない。

 だが、その道中が楽しいことだって間違っちゃいないだろう。

 

 そう思って歩いていると、前方から見覚えのある顔が三人やってくるのが見えた。


「おう、ヴァニか」

「お前は……ギリアムか」


 あまり出会いたくない相手だった。

 バロンの警告を受けた今では、猶更(なおさら)


「どうしたの、ヴァニ。知り合い?」

「ああ、まぁちょっと色々あってな」

 

 ギリアムはその悪人面をニヤリと歪めて俺たちを見る。


「丁度いい所で出会ったな。ボスが是非お前に会ってみたいと言ってる。ついてこい」

「断る、といったら?」

「地の果てまで追いかける」


 ほらな、面倒くさいことになった。


「……ヴァニさんに、何の用ですか」


 ノエルが硬い声で問いかける。

 それを受けて、ギリアムは一層笑みを深くした。


「ただの世間話(・・・)だ。取って食おうってわけじゃねぇ。嬢ちゃんたちも来な」

「へへっ、可愛い顔してんなぁ」

「全くだ、美女二人を(はべ)らせて羨ましいぜ。けっ!」

「……不快な連中ね」


 以前抱きかけた「話の分かる奴らかもしれない」という認識が、一瞬で(くつがえ)る。

 俺は二人をギリアムたちの視線から庇うように前に出て、低い声で警告した。


「もしこいつらに何かしようとしてみろ、全員斬り刻んで沈めてやる」

「はははっ! そいつぁお前次第だ。で、どうする?」

「……従おう。今のところは(・・・・・・)、な」

「ちょっと、ヴァニ……!」


 止めようとするセスカに、俺は静かに首を横に振る。

 

 今はこいつらについていくのが得策だ。

 こんな街中で騒ぎを起こしたくないし、何よりここで断って彼女たちが狙われるのは御免被(ごめんこうむ)りたい。

 

 だが、もしものことがあれば相手が何人だろうが殺し尽くしてやる。

 

 そう思ってギリアムたちの背に続こうとしたとき。



「私の友人たちを何処(どこ)へ連れて行くつもりだ?」



 俺たちの背後から、シュラグの声が聞こえた。


「あぁ?」

「見たところ堅気(かたぎ)の人間には思えないが……もう一度だけ問う。私の仲間たちを、何処(どこ)へ連れて行こうとしている」

「こいつもお前の仲間か、ヴァニ?」


 振り返って半目で尋ねてくるギリアムに、俺は沈黙で返す。

 そして代わりにシュラグに問うた。


「シュラグ、お前どうしてここに」

「君たちの姿が見えなかったのでな。まったく……要らない世話を焼くものだ」

 

 彼は呆れたように肩を竦める。


「なら都合が良い、全員ついてこい。拒否権はねぇぞ」

「ふむ……その顔、『百目鬼(どうめき)』のギリアム──ギリアム・ホークレイか」

「知ってるのか?」

「ああ、その悪評は私の耳にも入っている。例えば、より高い金を積まれたから依頼主を裏切ってその背を斬り付けた──とか」


 ギリアムの方を見ると、奴はニィッと白い歯を出して笑ってみせた。


「当り前だろ、俺たちは傭兵だ。傭兵にとっちゃ金が全て。倫理観なぞドブに棲む魚に喰わせちまえってんだ」

「人としての誇りを棄てた輩に従う必要は無い、な」


 一触即発の空気。 

 シュラグとギリアムは互いに(しばら)く睨み合う。


 だが、俺は敢えて口を開いた。


「いいさ、行こうぜシュラグ」

「……何?」

「奴らのボスが直々に会いたいんだと。俺もそいつがどんな面してるのか気になってたところだ。それに、ここで逃げてもどうせまた出会うことになる」


 俺がそう言うと、シュラグは大きくため息を吐いた。


「……分かった。そういうのならば君に従おう。私たちのリーダーは君なのだからな」


 そうして今度こそ、俺たちはギリアムたちの背に続いて歩き出す。

 さて、一体どんな奴らが待ち構えているのやら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ