↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者はマモリたい  作者: 覧都
外伝 尾張商人十田家のルーツ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
241/281

第二百四十一話 褒美

 織田軍と山口軍、両軍あわせて3千弱の軍勢はジリジリ前進します。

 前面に足軽の槍隊、中央に弓隊、左右に騎馬隊がいます。

 敵山口家の総大将は軍の後方から騎馬で戦場を見つめます。

 織田軍の総大将の三郎は軍の中央で、やはり騎馬で十田三人衆を見送ります。

 そして、その三郎のいる場所にわたくしもいます。




「なんだ、あいつらは??」


 敵総大将が、近習に聞きました。

 若くて体格はいいが、みすぼらしい服装の足軽が、武器も持たずに余裕で小走りになり近づいています。


「わかりません。使番でしょうか?」


 三郎の軍からたった3人が抜け出して、そのまま体を寄せ合って走り出しました。


「使番なら名乗りを上げ、旗ぐらい振るだろう。あの顔を見ろ、やる気満々じゃねえか! ふんっ!! 使者ではない!! 死にたいらしいな! かまわない弓隊射殺せーー!!」


「はっ!!」


 山口軍の弓隊が、3人に矢を射掛けました。

 大量の矢が宙に舞います。


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」


 矢が宙に舞うと、ダニーさんとズラーさんとデェスちゃんは全速で走り出しました。


「ちっ! 速い!! 弓たーい!! 3人はいい!! バカが射程に入った。そのまま敵将信長を狙いうてーーい!! それでしまいじゃーー!!」


「おおーっ!!」


 弓隊が、三郎を狙います。

 わたくしは、近くの足軽からヤリを借りました。


「おっ、おやかた様をお守りしろ!!」


 三郎の近習が慌てます。

 三郎は慌てる様子がありません。

 きもがすわっているようです。


「ふふふ、必要ありませんわ。わたくしにおまかせください」


 わたくしはヤリを手に三郎の馬の前に立ちます。

 三郎も腰の刀を抜きました。


 わたくしの体は、十田雄利です。

 だから、小指にはマモリ様の紋章はありません。

 魔法も魔王のマオちゃんと鍛錬した体でもありませんので、普通のか弱い男性です。

 でも、目だけは機能しています。

 敵の矢が、止まって見えるほどゆっくりに見えます。


 風を切る矢が、ピュンッと三郎に近づきます。


「多いなあ」


 わたくしはつぶやきながら、最小限の動作で、最小限の力を使って矢の腹を数ミリずつ動かします。

 もちろんケガ人が出ないように、後ろの掻盾に当たるようにコントロールしています。


「うおおおおぉぉぉぉー!!」

「すげぇーー!!」

「すごすぎる!!」


 次々掻盾に刺さる矢を見て周りの兵士から驚きの声が上がります。

 三郎も驚いた表情でわたくしを見つめます。

 こんなことで驚かれるとは、カツトシは見くびられたものですね。


「うおっ!! カツトシの奴、なかなかやるダニ!」


「うふふ、あんちゃん。あれはエイリデェース」


「そうズラ。エイリズラ」


「オラ達も、負けていられねえダニ! 行くダニー!!」


「おうっ! ズラ」

「はい! デェース」


 ダニーさんとズラーさんとデェスちゃんが三方向に別れて、全力で走り出します。


「おいっ!! バカが突っ込んで来た! 槍隊! 突き殺せーーい!!」


 敵総大将が叫びました。

 その声に反応して、槍隊が立てていたヤリを寝かせます。

 ヤリが倒れるのを見ると、ダニーさんとズラーさんとデェスちゃんはそのヤリの上を、低い姿勢にかがんでからジャンプして飛び越えました。


「ぐわああぁぁぁぁーー!!!!」


 三人が敵兵の中に飛び込むと。

 兵士達が宙を舞います。


「うぎゃあぁぁぁーー!!!!」


 兵士が叫び声を上げながら、人間、間欠泉のように次々宙に舞い上がります。


「ななな、なんだあいつらはー!?」


 敵総大将の目玉が飛び出しています。




「すっ、すごい!! 三郎、ダニーさんとズラーさんとデェスちゃんは、いつもあんな感じなのですか??」


「おいおい、カツトシは知らなかったのか?」


「はい! ふふふ、ちょっとやりすぎですね」


「いや、あれでよい。不思議とあれで戦いが終わると死者が出ていない。今回の戦いは、わしの子飼いの兵だけできた。あの3人の力を知る者ばかりだ。負けた山口教吉が言いふらすこともないだろう。騎馬隊、今だ!! 敵、兜首を上げてまいれ!! 敵の山口家の兵士は我が織田弾正忠家の兵だ。なるべく殺さんようにな!!」


「ははっ!! いくぞーー!!」


 騎馬隊が乱れてパニックになっている、敵山口軍に襲いかかります。

 敵山口軍の指揮官が三郎の騎馬隊にうたれて次々倒れます。

 陣形がみるみる崩れます。


「くそーーっ!! ひけーー!! ひけーーっ!! 城までてったいだーー!!」


 収拾のつかなくなった敵軍は撤退を開始しました。

 この戦いで、戦場には大勢が倒れていましたが、死者は両軍合わせても数十人、100人に満たない数でした。

 三郎の軍の死者は敵軍に突っ込んだ騎馬隊の中の30人ほどでした。






「ふふふ、ダニー、ズラー、デェス。お前達のおかげで、被害が最小だった」


 織田弾正忠家の兵の被害が、最小だったのがうれしかったのか、三郎は上機嫌で感謝の言葉を3人にかけました。


「ひひひ、朝飯前ダニ」


「カツトシ!! 褒美はなにがほしい!」


 馬上で三郎が不意に質問しました。

 三郎の目が不気味に光ります。

 長い付き合いなのでわかります。

 わたくしは、ためされています。


 三郎は物欲を嫌います。

 ここで、物欲を見せるとみかぎられます。

 かといって、いりませんというのも、機嫌をそこねます。

 なにか、ちょうどいいものを、おねだりしないといけません。

 名案はないでしょうか?


 ――そうだ!


「三郎、お願いがあります」


「ふむ、わしとカツトシの仲だ。申してみよ」


「ふふふ、織田家が大きくなったら、盛大な相撲大会を開いて下さい」


「なに? 相撲大会だと」


「相撲!? ひひひ、いいダニ。名案ダニ」

「相撲!! そりゃあいいズラ」

「相撲やりたいデェース!! 楽しみデェース」


「なるほど、3人衆のためか」


「いいえ、それだけではありません。織田家のためです。相撲大会を開いて強い者を織田軍に加えれば、織田軍の強化につながります」


「ほう、なるほど、相撲好きの3人衆のためであり、わしのためか。カツトシらしい答えだ。いいだろう、織田家が大きくなったら、3人衆が手柄を上げる度に相撲大会を開いてやろう」


「はい、ありがたき幸せ」


「ふふふ、だが、カツトシ安心するのはまだ早い。おみゃあの欲しいものを、まんだ聞いとらん!! おみゃあの欲しいものを言え!!」


「ちっ! 三郎め!!」


「うっ!!」

「すげーー!!」

「あのおやかた様に舌打ちをしたぞ!!」

「すげー!!」


 わたくしの舌打ち1つで、近習達がザワザワしています。

 三郎は、恐れられているようですね。

 おかげで考える時間が出来ました。


「わたくしがほしいのは」


「ほしいのは? なんじゃ! じらすな! はよ申せ!」


「ふふ、『商人になることをゆるしてほしい』これがわたくしの答えですわ」


「なにっ! 武士を捨てるというのか」


「はい。飢えるガキ達を武によって腹一杯にするのが三郎の仕事。わたくしは、米の値段を少しでも安くして、価格の安定によってガキ共の腹を一杯にします。それがわたくしのやりたいこと、ゆるしてほしいことですわ」


「ふぁあーはっはっはっ! カツトシが武士を捨てるのはもったいない気がするが、尾張にカツトシがいて、がめつい商人どもに目を光らせてくれたら、尾張に腹をすかせるガキがいなくなりそうじゃ。庶民が貧困から抜け出せそうな気がするのう」


 信長が、鳴海の田畑を遠い目で見つめました。

 爽やかな風が吹きます。

 じきに田植えが始まり、秋には沢山のお米がとれそうです。


「よし!! 那古屋へきゃーるぞ!!」


 わたくしたちは那古屋城へむかいました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。