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勇者はマモリたい  作者: 覧都
外伝 尾張商人十田家のルーツ

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第二百三十七話 尾張商人のルーツ

「こ、これはたいへんダニー!!」


 わたくしは頭に強い衝撃をうけて失神したみたいです。

 目はまだ開きませんが、声が聞こえてきました。

 声の主がわたくしを抱き起こそうとしました。


「あんちゃん! カツトシは頭を強くうちました! 動かしてはいけないデェス!」


「そ、そうズラか」


 ――うっ!! 頭がすごく痛い!!


 何があったのでしょうか?

 頭がいたすぎてよく思い出せません。

 でも、ダニーさんとズラーさん、デェスちゃんの声がします。

 やっと、目が開きましたが、まだかすんでいます。


「よかった!! 気が付いたみたいです」


 見た事がない美少女がわたくしの顔をのぞき込んでいます。

 時代劇のような着物をきています。


「おキツは、先にかえるダニ。カツトシはしばらく動けないダニ」


 美少女の名前はおキツという名前のようです。


「じゃあ、おキツはオラがお屋敷へ送っていくデェス」


 デェスちゃんのような話し方の子供が、おキツちゃんの手を引っ張ります。


「おキツ! 心配はいらねーズラ。カツトシは、オラと兄者が見ているから安心するズラ」


 着物を着た美少女が心配そうな顔をして、わたくしを見ながら、なごり惜しそうに歩いて行きます。

 わたくしは美少女の後ろ姿から、視線を戻しました。

 目の前には、川があります。


 ――まさか、これが伝説に聞いた三途の川でしょうか?


 緑に囲まれた澄んだ水が流れる美しい川です。

 その周りは、見渡すかぎりの田んぼです。

 でも、まだ田植えは終わっていません。

 家は全然ありませんね。

 ど田舎なのでしょうか。

 美しい田園風景です。まるで絵画のようです。

 川の向こうが天国と言われても疑うことが出来ません。


「この川は、三途の川ですか? 渡ると死んでしまうのでしょうか?」


 わたくしは、横に立っている見た事の無い男の子に声を掛けました。


「あはは、何を言っているダニ! この川は五条川ダニ。頭でもうったのダニか?」


「兄者! カツトシは、オラ達の目の前で、いまそこですっころんで、その石で頭をうって気絶していたズラ」


「ひゃははは、そうだったダニ。カツトシ大丈夫ダニか?」


 うーーん、声も話し方もダニーさんとズラーさんなのですが、見た目が全然違います。

 二人とも子供の姿です。

 ズラーさんが、指さした先には大きな石があり、そこに血がついています。

 わたくしは、あそこで頭を強くうったみたいです。


 でも、カツトシって誰でしょうか。

 まさか、わたくしのことでしょうか?

 わたくしの名前は……思い出せません。

 名前だけではありません。

 いろいろ思いだせません。

 でも、この2人がダニーさんとズラーさんという事だけはわかります。


「あの、わたくしは、記憶を無くしてしまったようです」


「なんだズラー!? オラの事も分らねえズラか!?」


「いいえ、あなたのことはなんとなくわかります。あなたはカルッパン族のズラーさん。そして、あなたがお兄さんのダニーさん。本当の姿はカメのような甲羅があって、頭に皿があります。そうそう、おキツちゃんと一緒に行ったのは妹のデェスちゃんですよね」


「はあーーっ!?」


 二人が顔を見合わせて驚いています。


「いろいろ、間違っていて、知っていてはおかしいことを知っているダニ」


「えっ!?」


「まず、オラはダニーじゃねえダニ。ポッポダニ」


「オラはズラーじゃねえズラ。ペッペズラ。妹はデェスじゃねえズラ。ピッピズラ」


「それに、なんでカルッパン族なんて知っているダニ。この世界じゃ知られていねえはずダニ」


「まだあるズラ、なんで本当の姿を知っているズラ」


 そう言うとズラーさんが本当の姿になりました。

 あの、オドロオドロしいカッパの姿です。

 恐さを助長するように上目遣いになり「殺すぞ!!」というような鋭い視線を向けてきます。


「うわあぁ、ズラーさんですわ!!」


 でも、わたくしには通用しません。

 わたくしは思わず抱きついてしまいました。


「オラの姿がこわくねえズラか?」


「うふふ、わたくしとズラーさんは仲良しですわ。恐いはずなどありませんわ。うっ! いたたた」


「カツトシ、急に動いては駄目だ。頭をうったばかりダニ。安静にしておくダニよ」


「はい。そういたしますわ。ダニーさんはいつも優しいですわ」


「うーーん。なんだかカツトシがおかしくなったズラ。話し方までおかしいズラ」


 ズラーさんが姿をもとに戻しました。


「わたくしの名前はなんですか?」


「ふむ、ほんとうにわからねえダニか。名前は十田雄利ダニ。あそこの生駒家の家臣で宗家様の娘のお吉様の護衛係ダニよ」


 わたくしの名前はトダカツトシということのようです。

 ダニーさんが指さした先には小さくお屋敷が見えます。

 でも、かなり遠いのにあれだけ見えるということは、巨大なお屋敷です。

 全体を囲む塀まであってまるでお城のように見えます。


 ――十田雄利??


 なんだか、遠い昔聞いた事があるような気がします。

 あれは――そうだ!

 幼かった頃、お婆様から聞いた覚えがあります。


「エイリ。十田家はもともと武士でした。でも、織田信長様が稲葉山に居を移したときに、先祖の十田雄利様が同行を拒否し尾張に残り商人になりました」


 ――はっ!?


 そうだ思い出しました。

 わたしの名前は、エイリです。

 カツトシって、ご先祖様の名前ですわ。




「おい!! ガキ!!」


 不意に頭の上で声がしました。

 ボロボロのみすぼらしい着物を着て、帯のかわりに荒縄を使っているガキです。

 髪の毛もボサボサです。山賊の子供でしょうか。

 後ろに近習でしょうか2人ガキがお供をしています。

 土手の上から、馬から下りずにわたくしを見おろして言いました。


「なんですか?」


「ここら辺で、おキツという娘を見なかったか?」


「見たらなんだというのでしょうか?」


「ふふふ、べっぴんさんだと聞いた。見つけたら抱くに決まっているだろう」


「はーーーーっ!!」


 なんだーーっ!! こ、こいつー!!

 ガキのくせになんて言ったーー!!


「聞き捨てにならねえダニ」

「そうズラ」

「わたくしはトダカツトシ! おキツ様の護衛係、あんたの好きにはさせねえ!! あたた」


「カツトシは、頭をうったのだから休んでいるダニよ」

「そうズラよ」


「わあーはっはっ!! なさけねえ護衛係だなあ!! そこで頭をぶつけたのか。とんだドジやろうだ!!」


 ボサボサ頭の視線が血の付いた石に向いています。


「くっ!! わ、わたくしはへっぽこでも、この二人は最強の戦士です。なめると痛いめにあいますよ」


「ほう!? おもしろい。こいつらはわしの子分だ。北尾張のガキの中じゃあ、1番と2番の強さだ」


「では、相撲で勝負をしましょう」


「なに!? すもう!!」


 ダニーさんとズラーさんの目がランランと輝きます。

 すもうと聞いてやる気満々になりました。


 川のすぐ後ろの田んぼに入ります。

 まだ、草しか生えていない田んぼなので、すもうにはもってこいです。


「もしダニーさんとズラーさんが勝ったら、おキツ様はあきらめてください」


「わしが勝ったら、カツトシ!! きさまの首を切らせてもらう!!」


 そう言うと、ボサボサ頭は刀を抜きました。

 身なりはボロボロなのに刀はピカピカで良く切れそうです。

 そして、ギラギラした目でわたくしをにらみ付けます。


「あれは、本気の目ダニ」

「そうズラ。やばいダニ」


「うふふ、あらあら、ダニーさんとズラーさんは、負けるつもりですか?」


「ふひひっ」


 ダニーさんとズラーさんが、ボサボサ頭と同じ目をして笑いました。

 笑いながら田んぼの中央に進みます。

 同じように、ボサボサ頭の子分が田んぼの中央に進みます。


「よーーし!! やったれーー!! どたわけ共にいたゃーめをみせたれーー!!」


 ボサボサ頭が叫びました。

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