第二百三十一話 手出し無用の豪傑
「ばっ! ばっかやろーー!! アテジェック!! てめーが射って外すんじゃねえ!! クソがっ!!」
バダマ王子がアテジェックという弓隊の隊長の所へ行き、頭を叩いて怒っています。
わたしには、ちゃんと当たるのが見えましたよ。
「ほっ……良かったぁ!! やはり今回の侵略軍の攻撃もはじきかえすぞーー!!」
閣下が現地司令部でモニターを見ながら胸をなで下ろしています。
現地司令部のテントの中には、監視用のモニターが大量に用意されています。
閣下は納得したようにうなずくと、視線を横に移します。
「準備はできています」
閣下の視線の先にはマーシーさんがいました。
マーシーさんは閣下の視線を感じると、めずらしく真面目な顔をして返事をしました。
英国陸軍の兵士がすでにドローンをいくつも飛ばしています。
現地の映像がモニターにドローンの数だけ映されています。
「うむ! マーシー殿! 配信を開始してくれたまえ。シマズヒサシ殿もおねがいします。わが英国陸軍の雄姿を全世界に配信してくれたまえ」
閣下が、2人に頭を下げました。
ヒサシさんの横には、英国美女の兵士さんが助手に入っています。
ヒサシさんは、今回美女に囲まれて映像の切替え係のようです。
「全世界の、マーシーの幻覚チャンネルをご覧の皆さんおはようございます! わたくしは今、仏国の戦場にいます。おぉーーと! 敵侵略軍の弓隊の攻撃がはじまりましたーー!! しかし、英国機甲師団の戦車隊は無傷でーーす!!」
少し前の録画映像が流されます。
「むははは、よーーし!! 全軍、砲撃開始じゃーーーー!! やったれーー!!」
閣下が吠えます。
「うおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーっと!!!! いよいよ砲撃が開始のようです!!」
マーシーさんも吠えました。
映像の中の戦車が砲撃を開始します。
「では、皆の衆、お願いいたします。閣下、車の手配をお願いします」
シマズヒサシさんが助手の美女兵士軍団に席を譲りました。
マーシーさんの助手が美女軍団にかわります。
映像は戦車の砲撃が敵侵略軍の塹壕を噴き飛ばす様子を映し出します。
シマズヒサシさんは、ひっそり司令部のテントを後にしました。
「ぐわああぁぁぁーーーー!!!! ななな、な、なんだぁーー!! なんなんだーー!! 魔導師隊、何をしている。結界を忘れるんじゃねえ!! 結界をはるんだーー!! 弓隊は何をしている、斉射だあぁぁーー!! うちまくれーー!! 騎馬隊は何をしているーー!! さっさと出撃しろーー!!」
爆風で土が豪雨のように降ってきます。
バダマ王子は狼狽しています。
「王子ここは危険です。後方へお下がりください」
ジェイカルがバダマ王子を、飛んでくる土からかばいながら言いました。
「ふ、ふん!! オレ様を他の王族と一緒にするなーー!! オレ様は、兵士達を置いてはいかねえ!!」
ジェイカルの言葉でわれにかえったのか、バダマ王子が落ち着きをとりもどしました。
「ぎゃあぁぁぁーーーー!!!!」
騎馬隊が、次々砲撃の餌食になります。
「くそっ!! どうなっていやがる!! こっちの攻撃は当たらねえ、バカ共の攻撃は威力をましていやあがる!! まるで歯が立たねえ!! だれだ、じゅうりんなんて、なめたことを言った奴は!!」
「この世界の人間も少しは、魔力の研究でもしたのではないでしょうか」
ジギンゲンが言いました。
そうですね。
マモリ様のチンコ玉で研究をしたみたいですが、21世紀の科学技術では、まだ何もわからないようです。
「ばかやろーー!! ジギンゲン!! これが少しの研究の成果かー!! オレ様の騎馬隊がーー!! 騎馬隊がーー!! 次々たおされていくーー!! 近づくこともできやしねーー!! くそっ、くそっ、くそおぉぉぉぉっ!!!! だれだーー!! シュバーリが貧民出の間抜けだなどと言った奴はー! こんな攻撃は王族のオレ様でも耐えるのは無理だーー!! こんな奴らを相手に、シュバーリ英国司令官は何日も戦ったのなら優秀じゃねえかーー!!」
「はっ!! 申し訳ありません!!」
ジェイカルさんが頭をさげました。
わたしの知る限りシュバーリ司令官の悪口を言っていたのは、バダマ王子だけだったと思いますが、ジェイカルさんが頭をさげました。
きっと、恥をかかせまいとしたのでしょうね。
出来た重臣です。
「ぐはあああぁぁぁ!!!! な、な、な、なんだあれは!! なんだー! あの攻撃はーー!!」
後ろに控える歩兵隊に、空母から飛んで来たのでしょう攻撃機が爆撃をはじめました。
「くそうっ!! だれだーー!! バカ共の攻撃はCGだなんて言った奴はーー!! このやろーー!! 全部現実じゃねえかーー!!」
「も、申し訳ありません!!」
ジギンゲンさんが頭を下げます。
バダマ王子に恥をかかせないように、自分の責任のようにしました。
さすがは出来た重臣ですね。
CGって言っていたのは、わたしの知る限りバダマ王子だけだったはずです。
「王子! この上は被害を最小限にするため一時撤退を! わたくしめが時間を稼ぎます!! 魔導師隊!! オレに最大の防御強化の魔法をかけろーー!! 攻撃強化は必要ない!! 結界も小さくして、強力にしろ!! 王子をお守りするのだーー」
ジェイカルが武器を手に取り、言いました。
結界は広い範囲より小さく絞れば、同じ魔力でもより強力になるようです。
「ふふふ、では、わしの最大魔力でジェイカル殿に防御強化を」
ジギンゲンが両足をがに股にして、両手を肩まであげて両手の平を開きました。
それをジェイカルに向けて「うーーーむ!!」とうなります。
「おおおっ!! これは!! さすがはジギンゲン殿!」
ジェイカルがうれしそうにします。
私の目にも空気のゆらぎが見えます。
かなりの強化魔法です。
「くそ! くそ! くそ!」
バダマ王子が親指の爪を噛みながら言いました。
「ジギンゲン殿!! あとは頼みましたぞ!!」
ジェイカルが馬の手綱をつかみ、バダマ王子をチラリと見て言いました。
ジギンゲンがジェイカルと目を合せて、深くゆっくり頭を下げました。
「ゆくぞおぉぉぉぉーーーー!!!!」
ジェイカルが馬に乗ると、いっきに走り出します。
「おおおおぉぉぉぉーーーーっと!! ここで、一騎の騎馬が戦場に躍り出ましたーー!! 大きい! 大きな男だーー!! かの人間山脈のようだーーーー!! その実力は、どのようなものでしょうかーー!!」
「ふふっ!!」
閣下が鼻でわらいます。
ジェイカルは、1台の戦車の砲撃をまともに受けました。
「おおーーっと!! 出て来ていきなり砲撃を受けましたーー!! 何をしにきたのでしょうかーー!!」
爆煙で何も見えなくなりました。
ゆっくり煙が消えます。
「……っ!!??」
司令部に沈黙の驚きが広がります。
煙の中から、無傷の将が出て来たのです。
無傷の将の口が動きました。
「バカメ」と動きました。
「うおおおおおおおおおぉぉぉぉーーーーーーーー!!!!!」
ジェイカルが、太いヤリを頭の上で回転させます。
戦車隊が、何度か砲撃を仕掛けますがすべてよけられます。
さっき当たったのはわざとのようですね。
ジェイカルは、先頭の戦車に斜めから切り込みキャタピラを破壊しました。
一撃で戦車が動けなくなりました。
次々、戦車が1人の騎馬によって動けなくなります。
「あれは、マモリ様が言っていた司令官クラスの豪傑。手出し無用の相手です。閣下! マモリ様をお呼びしなくてはいけません!」
マーシーさんが配信を忘れて言いました。
「むう!!」
閣下がうなりながら、金玉に手を近付けます。
「お待ち下さい! あれを!!」
可愛い声で、助手の胸が大きい金髪美人兵士さんが言いました。
助手の巨乳美女兵士さんの指さしたモニターには、1台の装甲車が止まっています。
扉が開き、1人の男の影が出てきました。
「!?」
ジェイカルがそれに気が付きました。




