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勇者はマモリたい  作者: 覧都
第2部

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第二百二十五話 錬金術

「私達はオクジイールの街にいます」


 ノブコはギデル族長に言いました。

 オクジイールの街に来て勇者エイゼンを訪ねればいいのですから、説明はこれ以上はいらないでしょう。

 さすがはノブコです。


「シラタキ様、龍王は来てくれるでしょうか?」


 僕は変身を解除しないキュートルホワイトに話しかけました。

 たぶんシラタキ様は、龍族の大長老の白龍とギデル族長にバレるのを警戒しているみたいですね。

 死んだ事になっていますからね。


「まあ、来ないじゃろうのう。あやつは気位が高い。じゃが勇者エイゼン様のことは恐れておる。じゃから無視はできまいて、何らかの対応はしてくるじゃろうのう。1ヶ月後が楽しみじゃ。かーーっかっかっ!! では、帰ろうかのう」


 ギデル族長がシラタキ様の方を見ました。

 何かを感づいたみたいですよ。

 完全にバレる前に退散したほうが良さそうです。

 僕は、オクジイールの中心にある勇者エイゼン像の台座に付けた紋章まで、移動魔法で移動しました。


 細くて長身になった勇者エイゼン像の下に到着して、僕達はとりあえずギルドに向かいました。






「あ、あれは、勇者エイゼン様とそのパーティーのメルだ」


 僕達が冒険者ギルドに着くと、ギルド内の冒険者達がザワザワしています。


「お疲れ様でした」


 受付のお姉さん、メブラクさんの愛想がよくなっています。

 笑顔で頭を下げてくれました。


「メブラクさん、あそこのテーブルとあのテーブルの人達は誰ですか?」


 レストランスペースのテーブルから、敵意むき出しの視線を感じます。

 テーブルを囲む人達が僕の視線に気がついてニヤニヤといやな笑いを浮かべました。

 僕は、敵意を向ける人達を誰なのかメブラクさんに聞いてみました。


「あれは、冒険者組織『エイゼンの光』と『エイゼンの影』の方々ですわ。『エイゼンの絆』の方々は、今日は全員いないみたいですね」


「そうですか。僕達は歓迎されていないみたいですね」


 僕は視線をメブラクさんに移しました。

 エイゼンの光と影とは、トラブルがなければいいのですけど。


「うふふ、そうですね。あっ! そうだ! 皆さんが戻ったらギルドマスターから『案内してくれ』と言われておりました。あたし、いえ、あたくしがご案内いたしますわ」


「ええっ!! 僕達は別に会いたくないです。少し情報がもらえれば、よいだけなのです」


「あの、ちなみにどの様な情報でしょうか? あたしでわかることならお答えいたしますけど」


「それは助かります。実はエルフ族やオーク族、その他の大森林の民で捕らえられている人を助けたいので、その情報をいただきたいのです」


 エイゼン様がエルフ族の族長に、捕らえられたエルフ族を助けるといいましたから、ついでにほかの種族も助けたほうがいいでしょう。


「うふふ、それならやはりギルドマスターに会って頂いた方がよろしいですわ」


「えーーっ!!」


「ぷっ」


 僕の後ろで吹き出す声が聞こえました。


「姫様は偉い人に会うのがいやなようじゃのう」


「うん、僕は偉い人は苦手なんだ」


「ワラワは相当偉い方の存在じゃがのう。ワラワからみればギルドマスターなどゴミのようなものじゃがのう」


 たしかに龍族の大長老はギルドマスターよりも偉い気がします。


「そうだ、姫様! 俺様だってこの国では、誰もが知る存在だ! 姫様は自分を卑下しすぎなんだ。もっと自信をもってもらわないとな! 何と言っても俺様達の姫様なのだからな」


 勇者エイゼン様もギルドマスターより偉いのかーー。

 僕はそんなに偉い人にかこまれているのか。


「では、姫様参りましょう」


「はぁーっ、しかたがないですね」


 じゃ、ねーーっ!!

 なんで全員姫様と僕を呼ぶのですかーー!!

 僕はいつからどこの姫様になったんですかーー!!


 もういいです。あきらめましたーー!!

 あきらめたくないけど、あきらめましたーー!!




「ロンカ様」


 メブラクさんが声を掛けると、ギルドマスターの部屋の扉をノックしました。


「おう、メブラクか! 今はいそがしい、後にしてくれ!!」


「はい! わかりました。勇者エイゼン様、メルの皆様、ギルドマスターはいそがしいそうなので行きましょう!」


「なっ!! なにーーっ!!」


 声が聞こえると、乱暴に扉が開きました。

 扉の中には、はだしのギルドマスターがいました。


「いったい何をしていたのですか?」


 メブラクさんが「あきれた」という表情で、冷ややかにはだしのギルドマスターを見つめます。


「それは、じつは……」


 ギルドマスターはメブラクさんの耳に口を近づけて、他には聞こえないように小さな声で言いました。


「なっ! なんですってーー!! 足の爪のゴミを取っていたですってーー!!!!」


「あ、メブラク!! こらっ!!」


「ふむ、姫様!! 俺様達は足の爪のゴミ以下だそうだ。帰ろうか!!」


 勇者エイゼン様が不機嫌さをあらわにして言いました。


「うふふ、はい!」


「ままま、待って欲しい。わしがわるかった!! 反省した!! だから」


「くっくっく」


 メブラクさんが肩をふるわせて、笑いをがまんしています。


「こら、メブラク!! 笑っていないでお前からも頼むんだ!!」


「うふふ、皆さん。どうぞ中へお入り下さい。そしてくつろいで下さい。お茶をお持ちしますわ」


「ふふ、はい」


 僕は重い気持ちでここに来ていましたが、このやりとりのおかげで肩の力が抜けました。


「どうぞ、こちらへ」


 応接セットには全員が座れないので、会議用の机に案内されました。


「嬢ちゃん、じゃない。姫様! 聞いて欲しい!!」


 僕は嬢ちゃんもいやだけど、姫様より嬢ちゃんの方がいいのですけど。


「なんですか?」


「ふむ、助けた女の子じゃが、帰る先が無い者がほとんどじゃった」


「ええっ!?」


「ふふふ、悲しいことじゃが、この国は治安が乱れておってのう。誘拐された者の家族はもういないのじゃ、盗賊共が家族を皆殺しにしたようじゃ。エイゼンの絆の話では、奴らが彼女達をその盗賊達から保護したと言っていた。おそらくは盗賊達から買い取り転売をしようとしていたのだろうがな」


「そうなのですか」


「そこで相談なのじゃが、助けた女の子達を引き取って欲しいのじゃ」


「ええーーっ!!」


「他の者に頼めば同じ事じゃ。転売されておしまいじゃ。姫様に頼むのが一番と考えたのじゃ」


「そうですか。助けてあげたいですね。でも、僕には経済力がありません」


「そうか。ふーーむ。こまったのう」


 僕とギルドマスターは腕を組んで考えこみました。

 なにしろ、僕は自慢じゃありませんが文無しです。


「ふふふ、それなら、一つ策があります」


 ノブコがメガネをキラリと輝かせました。


「えっ?」


 全員がノブコを見ました。


「どうせ、そんな事だろうと錬金術を考えていたところです」


「メガネの嬢ちゃん! それは……」


「ふふふ、ノブコです。これを見てください」


 ノブコは小さな紙の包みをテーブルの上にのせました。

 開くと中に白い粉が入っています。


「これは、なんじゃ??」


「マ薬です」


「ななな、なんだってーー!! それはまずいよーー!! ノブコーー! どこで手に入れたのかは知らないけど麻薬だけはだめだよーー」


「これを、貴族に売ります。必ず飛ぶように売れます」


「いやいや、ノブコ! 聞いていましたー? 麻薬はダメだってー!!」


「ふふふ」


 ノブコは顔に影を落として悪党の顔になりました。

 いくら何でも、正義を貫こうとしているのに麻薬はダメです。


「お茶をお持ちしました」


 そこにメブラクさんがお茶を持って来ました。


「丁度よかったです。メブラクさんこの粉を、少しだけなめてみてくれませんか?」


「えっ? これを? いったいなんですか?」


「とても、体にいい薬です。疲れが取れて元気になれる薬です」


 あーーっ!

 だめな薬だ。

 絶対駄目な薬です。

 なぜ、ノブコはこんなことを。

 いくら何でも人助けの為とは言っても、こんな薬を売ってはいけません。


「だめーーっ!!」


 手を伸ばそうとするメブラクさんを、僕は叫んで止めようとしました。

 でも、いち速くその僕を、事もあろうにユウキが止めました。

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