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勇者はマモリたい  作者: 覧都
第2部

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第二百二十三話 姫様は守られたい

「くくく。この剣は我がエルフ族の秘宝だ。人間なら鎧ごと一刀両断できる!」


 エルフ族の族長ギデルさんが腰の大剣をゆっくり引き抜きます。

 ギデルさんが上半身裸なのは、小細工をしないと無言で、あらわすためなのでしょう。

 少し白っぽい銀色の剣です。

 剣からの反射光は七色に輝きます。

 なにか、神秘の力を感じます。


「メイヤの奴、自信満々だが大丈夫なのか? な、なんだ、あのまがまがしい黒い剣は?? だが、相手の族長の剣は人間を鎧ごと一刀両断する剣だ。本当に大丈夫なのか?」


 エイゼン様がメイヤの収納していた、黒い大剣を手にするのを見て驚きの声を上げました。

 驚きの声を上げて、すぐに心配しています。

 いそがしいですねえ。


「メイヤの黒い大剣は、龍の首を一刀両断します。大丈夫だと思いますよ」


「なに!? 龍の硬い首を両断!! じゃあ、どっちが結局強いんだ?」


「さあ、どっちでしょう。見ていればわかると思いますが」


 ギデルさんが、笑みを浮かべ右手で手招きをします。

 メイヤの剣を見ても、エルフ族の秘宝の方が上と確信しているようです。


「ちっ!!」


 メイヤの大きな舌打ちです。

 メイヤは怒っていますね。

 きっと、僕に攻撃をしたことを怒っているのでしょう。

 また、ひどいことをしないといいのですけど。


 メイヤはゆっくり歩きはじめました。

 そして、蝕刀の間合いに入ったときメイヤは素早く動きました。


「おおっ!! メイヤの体がぐにゃりと揺れた!!」


 エイゼン様には、メイヤの動きが見えたようですね。

 でも普通の人には何も動いていないように見えるでしょう。


「ふん! 恐れをなしたか! 口ほどにもない!」


 ギデルさんが吐き捨てるように言いました。

 メイヤは蝕刀の間合いからそのまま元の位置までゆっくり戻ります。


「ちっ! バカが!」


 メイヤはちゃんと聞こえるくらいの声で言いました。


「なにーーっ!! このやろーーっ!! もう許さん!!」


 ギデルさんが、剣を振りかぶろうとしました。

 その瞬間、エルフ族の秘宝の剣が細切れになり、草の上にポトポト落ちました。


「ふっ!!」


 メイヤが挑発するように笑いました。


「なーーーーーーーっ!!!! ひ、ひひ、秘宝がーーっ!! エルフ族の秘宝がーーっ!!」


 ギデルさんが大きな口を開けて驚いています。

 メイヤは、黒い大剣をもう一度収納し素手になりました。


「すっ、すげーー!! あの一瞬であんな回数切り刻んでいたのか! まるで見えなかった」


 エイゼン様が切った事ではなく、切った回数に驚いています。

 ふふふ、エイゼン様、メイヤが動いたのが見えたのなら充分すごいですよ。


「ひ、秘宝がーーっ!! く、くそっ!! くそーー!!」


 ギデルさんが大きく後ろに飛びました。

 そこに、弓と矢が置いてあります。

 さすがです、こんなこともあろうかと置いたのでしょうか。


「ゆ、ゆるさんぞーー!! 見ろ!! これは、もう一つのエルフ族の秘宝だ!! そこを動くな!!」


 ギデルさんがやはり、七色に光を反射する矢を持ちました。

 しかし、真剣勝負で相手にそこを動くなとは。


「ふっ!!」


 メイヤはあえて受けるようです。

 言われたままじっとしています。

 エルフ族の秘宝の剣を細切れにして、少し機嫌が直ったようです。

 このまま、無事何事もなければいいのですが。


「ぶっ殺してやる!! エルフ族は弓が本職だ! かくごしろーーっ!!」


 ギデルさんが弓を引き絞ります。

 矢から稲妻のように光が出ます。

 さすがはエルフ族の秘宝です。

 恐ろしい力を感じます。


「マモリちゃんや、ありゃあすごいぞ!! 俺様でもやばいと感じる。メイヤの奴は大丈夫なのか?」


「ふふふ、どうでしょう。僕には余裕が感じられます」


 でも、油断しすぎなようにも感じますけど。


「な、なんだと……よっ、よゆうだと……」


 エイゼン様が黙り込みました。


「しねえぇーぇぇぇぇぇぇーーーー!!!!」


 手応え充分になったのでしょうか、矢が放たれます。

 バリバリいいながら矢がメイヤに一直線に進みます。

 同時にギデルさんが走りました。

 矢は、メイヤを真っ直ぐ狙っています――がその後ろに僕がいます。

 僕までねらっています。


 さすがですね。

 これでは、メイヤが矢をよけられません。

 メイヤが矢をよければ僕に命中です。

 メイヤは後ろを気にしながらも、目の前の矢と、ギデルさんから視線を外せません。


 その時です。


「うおおおぉぉっ!!!!」


 エイゼン様が驚きの声を上げました。

 同時にギデルさんがニヤリと笑います。


「貴様も大事な物を失いやがれ!!」


 ギデルさんが、メイヤに襲いかかりながら言いました。


 矢がメイヤの前で進路を変えたのです。

 矢は弧をえがき、メイヤをよけて僕を狙います。

 エルフには飛んでいる矢の進路を変えるという、とんでもない技もあるのですね。


「くそっ!!」


 メイヤが出し抜かれた悔しさをあらわします。

 矢を追いかけたいのでしょうけど、ギデルさんが迫っています。

 これでは、動けません。


「ひぃぃぃぃーーひっひっひっ!!」


 ギデルさんが大喜びです。

 あのー、お喜びの最中ですが、僕はこんな矢では死にませんよ。


「あっ!!」


 そう思った瞬間、もう一度矢が変化しました。

 矢が分裂したのです。

 恐ろしい矢ですね。

 自由に進路を変えて、最後は分裂ですか。

 さすがはエルフ族の秘宝です。


「マッ、マモリ様!! くそーーっ!!」


 メイヤがあせっています。

 メイヤは、僕がこんな矢でやられることはないと知っているはずですが、攻撃が僕に届いたことを恥じて悔やんでいるようですね。

 あのメイヤを、出し抜くとはエルフ族の族長あなどりがたしです。


 ――さて、どうしましょうか。


 矢をすべてよけてもいいです。

 防御魔法で弾き返してもいいです。

 すべて、つかんでしまってもいいです。

 でも、それだと僕が今後、正義の勇者エイゼン様に守ってもらえません。


「くそーーっ!!」


 正義の勇者エイゼン様が、分かれた矢の一つでもつかもうと、手を伸ばしてくれました。

 僕が守ってもらいたいと思った瞬間です。

 かっこいい正義の勇者エイゼン様になりつつありますね。


 でも、矢がピクンと動いてエイゼン様の手をすり抜けました。

 ギデルさんがニヤリと笑いました。


「ははははっ!! 貴様達の姫様はもらったーー!!」


 ギデルさんが勝ち誇ったように言いました。

 僕はずっと考え込んでいます。

 まだ、どうすればいいのか結論が出ていません。考え中です。

 このままでは、ケガくらいはしそうです。


 その瞬間でした。

 僕の目の前を白い影が通り過ぎました。

 その影が、僕と矢の間に入ってくれました。


「な、なんだと!! 全部はじくだとーーっ!!」


「はあーはっはっはっ!! ワラワにこんな細い矢が通るわけがない!!」


 キュートルホワイトの、シラタキ様が僕の盾になってくれました。

 龍族の長老の体には、魔力が込められた矢でも、分裂して細くなっていては通用しないようです。


「あの、シラタキ様、もう終わったのですか?」


「あたりまえじゃ。ワラワ達龍族は鼻が利く。毎日風呂に入っとれば別じゃが、大森林の民など、たいして風呂に入って体を洗っておらん。臭いがきつすぎるくらいじゃから、すぐにわかるのじゃ。茂みのエルフ族は全部で200人から300人位じゃ。ノルマの50人を倒してきた」


「さすがですね」


「まあのう。姫は、ケガはないかのう?」


 うん、姫?


「ありません。でも、姫はやめて下さい!!」


「それは、よかったのじゃ!!」




「らめーーーーっ!!!!!!」


 ユウキの絶叫が聞こえます。

 声の方を見ると。

 メイヤが大きく体をねじって、拳に力をため込んでいます。

 拳が黒いモヤに包まれ、赤い稲妻がパチパチいっています。

 あんなのをくらったら、龍族でもはじけ飛びそうです。


 メイヤはその拳を迷うことなく、襲いかかるギデルさんに叩き付けようとしました。

 メイヤは怒っていますね。

 われを忘れるほどに。

 僕を攻撃するからですよ。


「ぐわああぁぁぁーーーー!!!!」


 ギデルさんの体が吹き飛びました。

 体が爆発したように吹き飛ばずに、エルフ族の弓隊が潜む、茂みの中に吹き飛んでいきました。


 見るとユウキがメイヤの腕を抱えています。

 どうやら、ユウキがメイヤの攻撃を弱めてくれたようです。

 これで、治癒魔法を節約出来ました。

 さすがはユウキですね。


「こんなものが飛んできました」


 マッチャさんが、ギデルさんの長い金髪をつかんで、ズルズル引きずって来ました。

 どうやら、失神しているようですね。


「茂みの弓隊は全て倒しました」


 ノブコとエイリが戻って来ました。

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