第二百二十二話 マモリ粉乳の効果
「気を付けてください」
まだ神秘的な巨木ばかりの森の中ですが、エルフ族の美女ナバッテさんが注意をうながしました。
「まだ集落までは、だいぶあるはずですが」
マッチャさんが聞きました。
「うふふ、斥候が大木の影から僕達の様子をうかがっています。すでに集落に何人かが、木の上を恐ろしいスピードで移動していきました」
「すごいですね。マモリ様にはわかるのですか?」
ナバッテさんが驚いた表情で言いました。
「木を隠すのなら森の中へと言いますが、森の木々の中に異質の、強い気配を持つエルフ族がいれば目立ちすぎます。すぐにわかりますよ」
「ひゃははは、さすがはマモリちゃんだ。1番弱い姫神のお姫様だけあって、危険を察知する能力がずばぬけている」
勇者エイゼン様が言いました。
勇者エイゼン様は僕を姫神一族のお姫様だと思っているようです。
しかも1番弱いと言ってくれます。
誰も訂正する気がないようなので、いつか気が付くまで、そのままにしておきたいと思います。
「はいっ!!」
僕は元気に返事をしました。
「うふふ、懐かしいですわ」
ナバッテさんが、目をうるませて言いました。
巨木がなくなり雑木林が見えてきます。
その雑木林の前に巨大な男がいます。
上半身裸でエルフ族の中では異常な大きさです。
身長が2メートル程ありそうです。
「とまれーーっ!!」
腕を組み鬼の形相です。
エルフ族はそろって美形です。
金髪でロン毛の美形のおじさんが腕を組んで僕達をにらみ付けます。
斥候の報告をうけて、村の入り口の前で待ち構えていたようです。
「あれは、族長のギデル様です。オーガの戦士と戦って勝ったことがあると、いつも自慢しているお方です」
ナバッテさんが心配そうな顔をして僕の顔を見ます。
「な、なんだと! エルフ族のくせにオーガ族の戦士の強さがあるのか! む、無敵じゃねえか!」
勇者エイゼン様が驚きの表情で、エルフ族の族長ギデルさんを見つめます。
「この先はエルフ族の村だ。用がないなら帰っていただきたい」
ギデルさんはうっすら笑いを浮かべながら言いました。
すごく不気味な雰囲気があります。
丁寧な言い方の影に何かが潜んでいます。
そう、殺意のようなものが。
「俺様達は、怪しいもんじゃねえ! ここにお連れしたエルフ族のご婦人を無事に村まで送り届ける為の護衛だ」
勇者エイゼン様が言いました。
自分で「怪しいもんじゃねえ」と言う人が、怪しくない事はたいていありませんけどね。
「ふん! 人間など信用できるか!! いいか、おかしな動きをするなよ! あの茂みの中でお前達をエルフ族の弓隊が狙っている」
「なっ!?」
勇者エイゼン様が驚いています。
のんきなエイゼン様でも、エルフ族の弓隊がねらっているという意味がわかっているようです。
「ふん! お前は、にぶいなあ。お前以外は全員茂みに視線が釘付けだ。おい! お前達、いつまで人間と共にいるのだ。さっさとこっちへ来い!!」
ギデルさんが言うと、ナバッテさん達がギデルさんの方へ歩きだします。
「マモリ様、私達がいなくなると攻撃がはじまるかもしれません、お気を付けてください」
ナバッテさんが僕の横を通り過ぎるときに小声で教えてくれました。
「ふふふ、人質がいなくなればもうこっちのもんだ」
「待て、何を言っている?」
「ふふふ、はあぁぁはっはっ!! さっしが悪いなあぁ、ヒゲのおっさんは! お前達人間共を、ぶち殺すと言っているんだ。我が一族の女子供を誘拐しては、もてあそぶ、そんな人間共を我らは心底ヘドがでるほど憎んでいる。貴様達は、見せしめのために殺して、死体をバラバラにして国境の柱の前にばらまいてやる!」
「ま、まてまて、俺様達はその誘拐されたご婦人を、助けて連れてきたんだぞ。なぜ殺されなければならんのだ」
「お前はバカなのか! いままで、我がエルフ族の者がどれだけ行方不明になっていると思うんだ! さらわれた者達の家族がどれほど悲しんだことか。今こそ、その恨みを晴らさせてもらおう!!」
「エイゼン様。土下座をして、人間を代表して謝って下さい」
ノブコが突然エイゼン様の耳元で言いました。
言い終わると、ノブコのメガネが二度光を反射して白く光ります。
ノブコはそのメガネを人差し指で持ち上げました。
何か名案が浮かんだようです。
すごく、悪い笑顔になっています。
「すまなかった!! 人間を代表して謝罪する!! どうか許して欲しい!! 今後は俺様が、泣いているエルフ族を人間の世界で探し出し、1人でも多く救出する事を約束する。だから許してくれ!!」
エイゼン様がヒザをおり両手を地面につけて頭を下げました。
「お前ごときが、あやまったところでなんになる! はなてーー!!!!」
ギデルさんの言葉で、茂みから大量の矢が飛んできました。
「うおっ!! あぶねえ!!」
勇者エイゼン様が僕に飛んできた矢をつかみました。
エイゼン様に飛んできた矢は、メイヤが全部処理します。
ユウキもノブコもエイリも楽々弾き飛ばします。
シラタキ様とマッチャさんは何もしませんが、矢が龍族の2人に刺さることはありません。
龍族の2人の体に当たった矢が、バラバラと地面に落ちます。
「エ、エイゼン様! あ、ありがとうございます」
僕は助けてくれた、エイゼン様に御礼を言いました。
「な、なぜだーー!! なぜ、俺様がエルフ族の矢を受け止められたのだーー??」
エルフ族の矢を反射で受け止めたのでしょうか。
エイゼン様が驚いています。
でも、とっさにエイゼン様は僕を守ったということですね。
僕は少し感動しています。
「ふふふ、それは、マモリ様のマモリ粉乳を食べたからにございます。マモリ粉乳には、食べた人を強くする力もございますので」
メイヤがエイゼン様に、表情を変えないで笑い声を出しながら言いました。
「ええぇぇーーっ!!」
僕とエイゼン様が驚きの声を出しました。
僕のマモリ粉乳にはそんな効果があるのですかー!!
じゃないよー!! マモリ粉乳ってなんだよーー!!
「そ、そうか! あれは、マモリ粉乳のおかげなのか! 矢が止まって見えた!」
えっ!?
エイゼン様の目には、エルフの矢が止まって見えたようです。
「な、な、な、ななな、なんなんだ!! なんなんだよー!! おまえたちはーー??」
ギデルさんの美形の顔の表情がくずれてしまいました。
「ふふふ、せっかく誠心誠意、謝っている者に対するエルフ族の答えがこれですか! 残念です。皆さん、構いません、少しこらしめてやって下さい」
僕は、怒りをにじませて言いました。
「ヴァルキリー! レヴォリューション!」
ユウキとノブコとエイリが言うと、キュートルスリーに変身しました。
「ヴァルキリー! レヴォリューション!」
シラタキ様とマッチャさんが白と黒のキュートル戦士に変身しました。
ユウキ達と打ち合わせしていたみたいですね。
「ええーーっ!? なんで、勝手に変身しているのですかーー!!」
ユウキが驚いています。
シラタキ様とマッチャさんは、勝手に無許可で変身したようです。
「ふふふ、ワラワ達は非公認戦隊キュートルツインなのじゃーー!!」
シラタキ様が言いました。
楽しそうですね。
「はあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!!!!!」
声と共に5人のキュートル戦士が茂みの中に走ります。
矢が次々に飛んできますが、全て払いのけられます。
そして、メイヤがゆっくりエルフ族の族長ギデルさんの前に進み出ます。
「ふわああぁぁぁぁーーはっはっはっ!!!!!! バカめ! 執事ごときがなんの用だ!!!」
「おいおい、マモリちゃんや! メイヤが行ってしまったぞ。あのエルフ族の族長は無敵だぞ、大丈夫なのか??」
「うふふ、姫神の一族の使用人はどの位の強さなのでしょうか? ドキドキします。でも、自分から行きましたのでお任せしましょう」
「ふむ」
「まあ、メイヤがやられたら、次は強くなられた勇者エイゼン様に行っていただきましょう」
「はああぁぁーーーーっ!? 無理じゃーー!! そんなもん俺様には絶対にむりじゃーー!!」
「くすっ」




