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勇者はマモリたい  作者: 覧都
第2部

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第二百十六話 救出

「全員うごくなーーーーっ!!!! これを見ろ!! 動けばこいつを殺す!! ひゃはっ! ひゃああぁーーはっはっ!!」


 副当主ゼキが勝ち誇っています。


「……」


 キュートルスリーと白と黒のメイド、おや、黒い執事までこっちを見て、人差し指を向けてハートを書きます。


 ――キャー助けてー! って、やれって事でしょうか。


 出来ませんよ。

 いくら何でも、僕は首を振ります。


「てっ! てめー達は馬鹿なのか!! 指ならいいってわけじゃねーんだ!! 次に少しでも動いたら本当に殺すぞ!! おいっ!! お前達、なにをしている。そいつらを全員拘束しろ!!」


 あーでも、震えていた方がいいですね。

 僕は全身を小刻みに動かしました。


「うっ、うぐうぅぅ」


 副当主ゼキの命令で動こうとしましたが、この部屋の手下達はすでに全員行動不能のようです。

 うめくことしか出来ないようです。


「くそう、役立たず共め!! おおぉぉーーい!! 2階の奴らー! 今すぐ下りてこい!!」


「はっ、はい!!」


 2階から様子を見ていた者達がおりてきました。

 胸のプレートはEクラスです。

 弱い人を避難させていたのでしょうか。


「くっくっく! こんな弱い小娘を連れて来たら、こうなる事ぐらい想像出来るだろうがよ!!」


 そうでした。

 僕はこのようにして、大切な家族も友も仲間も、人質にされて失ったのでした。

 だから、今はたのもしくなった仲間と来ているのです。

 そこの6人の姫神の戦士は、Aクラス冒険者以上の実力を全員持っています。

 自分の身は自分で守ってくれます。

 ユウキとノブコと、エイリの成長を思うと涙が出そうです。


「ひゃああぁぁーーはっはっはっ!! 小娘が恐くて震えて泣いているじゃねえか!! ぎゃあぁぁはっはっ!!」


 副当主ゼキが、大喜びです。

 僕の目から涙がこぼれたみたいです。


「すごい演技力です」


 6人の姫神の戦士が、僕の涙をみて言いました。

 いいえ、演技じゃないです。

 心からのうれし涙です。


「この、どあほうがーー!! この俺様の存在を忘れるんじゃねーー!!」


「ぐわああぁぁーー!!!!」


 副当主ゼキが、路上生活者のおじさんの所まで噴き飛ばされました。

 偽勇者エイゼン様が、副当主ゼキの脇腹を後ろから蹴り飛ばしたのです。

 不意打ちとはいえ、なかなかの破壊力のある攻撃です。


「まったくよう。かわいそうに、こんなに震えて涙まで流しておびえているじゃねえか。1番か弱い美少女の嬢ちゃん、もうでえじょうぶだ。安心しな! 俺様が守ってやる!」


 偽勇者エイゼン様がそっと肩を抱いてくれました。

 ちょっとかっこいいです。


「くそう!!」


 倒れていた副当主ゼキが、偽勇者エイゼン様をにらみ付けます。


「ふふふ、こえー顔だなあ!! メイヤ!! 下働きの執事のお前が、こいつに格の違いを見せてやれ!!」


 ふふふ、さすがですね。

 偽勇者エイゼン様は、6人の姫神の戦士の中で1番強いメイヤを指名しました。


「ははっ!」


 メイヤは怒るのかと思ったら、顔色一つ変えずに返事をして、副当主のゼキの所へ歩きます。


「うおっ!!」


 副当主ゼキが声を出すと、メイヤの顔を驚いた表情で見つめます。


「どうされました? 治癒と回復です。万全の体調でないと後で言い訳をされますので、そうしただけです。それ以上の意味はありません。勇者エイゼン様からのご指示ですから、正確に実行しないといけませんからね。どうぞお立ちになって、思う存分攻撃してみてください」


 メイヤが深々と頭を下げます。

 視線が床に向きました。


「このやろーー!! なめやがってー!! ふざけるなー!!」


 不意打ちです。

 本当にとことん腐っているようですね。

 でも、メイヤはそれをさそっていたようですよ。


「ふぁっ」


 メイヤは軽くよけると、大きく口を開けてそこに手のひらを置きます。

 あくびをしました。


「ちっ!! くそがぁーーっ!!」


 連続攻撃です。

 素早い攻撃ですが、メイヤにはかすりもしません。


「くそーーっ!! なんなんだーー!! てめーらは!! いったいなんなんだよーーっ!!」


「わたくしは、あなたが人質にしたマモリ様の執事です。ですから仕事は戦闘ではありません。この中では、1番したっぱの下働きです」


「す、すげーー!! ゼキ様がまるで相手にならない」


 拘束しようと下りてきた手下の冒険者達が、手を止めて2人の戦いを見つめています。


「なんということじゃ!! 下働きの執事があの強さ!! ゼキは性格に難があるから、副当主じゃが戦闘の実力ならエイゼンの絆では1番だったはず」


 路上生活者のおじさんも、大きく目を見開いて言いました。


「くそーーっ!!」


 ゼキは攻撃の手を緩めませんが、肩で息をはじめました。


「さて、あまり御主人様を退屈させても申し訳がありません。そろそろお休みください」


「ごっ、ごあぁぁぁーーーー!!!!」


 メイヤは楽々ゼキの懐に入ると腹に一撃を入れました。

 ゼキは目を見開き、口から汁を出しながらヒザをつきます。

 ヒザをつくと、そのままゆっくり前に倒れました。


「いっ、いちげき……」


 エイゼンの絆の手下と、路上生活者のおじさんがつぶやきました。


「では、案内してもらいましょうか」


 メイヤはおりてきたEクラスの、エイゼンの絆の手下に視線を移します。


「ひっ!」


 手下は、小さく悲鳴を上げると部屋のすみの大きな戸棚を指さしました。


「隠し扉です」


 ノブコが戸棚の中の扉を見つけました。

 扉の奥には階段があり、地下に続いています。

 地下の薄暗い階段を下りると、地下の石作りの部屋の中は真っ暗です。

 ひどい臭いもします。

 明かりをつけると、中にオリがありました。


 オリの中には全裸の女性が入れられています。

 ずいぶん痛めつけられたアトが見られます。

 さらに奥には、オークやエルフの美女の姿もありました。


「ひどい」


 ユウキが言いました。

 キュートルブルーのユウキの表情は、見えませんがきっと涙ぐんでいますね。




「どうぞ」


 メイヤが上で行動不能のエイゼンの絆の、手下の服を持って来ました。

 女性達にそれを着てもらい外に出ました。

 外には受付のメブラクさんが待っていてくれました。


「メブラクさんのお願いはこれですか?」


「はい!」


 メブラクさんが言いました。

 メブラクさんのお願いは、捕らわれている女性を助けて欲しいということだったようです。


「さて、この人達をどうしましょうか」


 大勢の女性を助け出しましたが、どうしていいか途方にくれました。


「ふふふ、それならギルドであずかろう」


 路上生活者のおじさんが言いました。

 いつの間にかボサボサだった髪を、後ろに束ねています。


「ああっ!! ロンカ様!!」


 メブラクさんが言いました。


「ロンカ? メブラクさんのお知り合いですか?」


「はは、はい。あのロンカ様はギルドマスターです」


「えーーっ! なんでギルドマスターが路上生活者をしているのですかー?」


「ひゃははっ!! 街の本当の姿は、一番下からでないと見えてこないものなのじゃ。おかげで面白い物を見られたわい。人間の女性は引き受けたが、エルフやオークは無理じゃ」


「それなら、僕が行って来ます。どうせ、いまから大森林へ行こうと思っていたところです」


 エルフとオークの女性はエルフが3人、オークが2人です。

 全部で5人です。

 これなら大森林でも、まもりきれるでしょう。


「それは、ありがたい」


「では、僕達は出かけます。ジャスさん、案内をお願いします」


「はい!」


 黒いメイド姿のジャスさんがうれしそうに返事をしてくれました。


「嬢ちゃん、気を付けてな。今度はわしが一緒についていけない。1番弱いのじゃから、今度はちゃんと隠れておくのじゃぞ」


「うふふ、はい。ありがとうございます」


 僕達は、ギルドマスターと偽勇者エイゼン様と受付のお姉さんに手を振りながら大森林に向かいました。


「元気でなー!! じゃ、ねーんだよ!! お前達は、この勇者エイゼン様の、勇者パーティーだろうがよ!! すきあらば俺様を置いていこうとするんじゃねーー!!」


 偽勇者エイゼン様が小走りでついて来ます。

 せっかく置いていこうと思ったのに残念です。

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