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勇者はマモリたい  作者: 覧都
第2部

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第二百十四話 がんぷく?

 中央広場の石畳の上で、人相の悪い黒い執事が中央、その左右に白と黒の美人メイドが並んで立っています。

 3人の横では銅像の勇者エイゼン様が、これから何が始まるのかと台座の上から見おろしています。

 最初に動いたのはキュートルスリーの方でした。

 右手を前に出し、手のひらを天に向けてクイクイと曲げました。


「あああああぁぁぁーーーーっ」


 白と黒のメイドが声を出して距離を詰めます。

 黒い執事も距離を詰めますが、声は出しません。表情もまったく変えません。


 キュートルスリーは、白と黒のメイドと、黒い執事の攻撃を紙一重で次々とよけていきます。


「メイヤ! 大勢の見物人がいます。ケガをさせないようにお願いします」


 僕は嫌な予感がしたので声を掛けました。


「ははっ!! お任せください!!」


 3人の攻撃は激しさを増しますが、キュートルスリーはそれを見事にかわします。

 でも、勢いが増してくると少しずつ、キュートルスリーが後ろに下がっていきます。

 とうとう、エイゼンの絆の当主バルテンさんが倒れているすぐ前まで追い詰められました。


 白と黒のメイドと、黒い執事は攻撃をやめて一気に中央へ戻りました。


「さすがなのじゃ!!」


 白いメイドのシラタキ様が言いました。


「言うだけのことはあります」


 黒いメイドのジャスさんが言います。

 無口な黒い執事は無言です。

 キュートルスリーも中央まで戻りました。


「いきますよ。ユウキ様」


 メイヤが静かに言いました。


「いくのじゃーー」

「いきまーーす」


 シラタキ様とジャスさんが声をそろえます。

 体を大きくねじり、渾身の一撃です。

 キュートルスリーは両手を前に出して、左右の手のひらを重ねて衝撃に備えます。

 メイヤとシラタキ様とジャスさんが、身構えるキュートルスリーの手のひらに渾身の一撃を置きに行きました。


 わずかですが、シラタキ様とジャスさんの拳の方が先に、キュートルグリーンとキュートルイエローの手のひらに当たります。

 その瞬間、空気の密度が変わり、ゆらりと光が屈折して丸く広がります。

 丸い屈折は衝撃波です。

 音速を超えた衝撃波が広がります。


 メイヤはその大きさを確認して、力を変化させました。

 キュートルブルーの手のひらの衝撃波はシラタキ様とジャスさんの衝撃波より大きな物でした。

 メイヤは何か魔力をくわえたのでしょうか、見物人に届く前にメイヤの衝撃波が、シラタキ様とジャスさんの衝撃波を打ち消します。


 遅れて大きな破裂音がしました。

 破裂音と同時に、広場の中央に下から上に向かって、強いつむじ風が起きました。

 下から上に空気が巻き上げられると、気圧が低くなったためか、オクジイールの街の全ての辻から風が吹き込みます。

 吹き込んでくる風には街中のゴミが混じります。

 街中のゴミが広場の中央で天高く飛んで行きます。


「きれーーい!!」


 ユウキがキラキラ太陽の光を反射するゴミを見て言いました。


「おっおおおぉぉぉーーーー!!!!」


 男達が、汚いどよめきのような声を出しました。


 そうです。

 下から上に巻き上げるような風は、ご婦人達のスカートも持ち上げます。


「きゃあぁぁーーっ!!」


 ご婦人達が悲鳴を上げると一生懸命スカートを押さえます。


「じょっ、嬢ちゃん!! あんたはいいのか??」


 路上生活者のおじさんが僕の足元で寝そべって言いました。


「僕は、大丈夫ですよ。こんなこともあろうかと、いつもピンクの短パン……、えーーっ!! なっ、なんでーーっ」


 僕はキュートルスリーの方を見ました。

 3人娘が肩をゆらして、右手の人差し指でハートをかいています。

 どうやら、3人の変身魔法のようです。

 僕はスカートが巻き上げられ、キュートな白いパンツが丸出しになっています。

 本当はピンクの短パンなのですが、見た目はキュートな女性の下着になっています。

 そして、キュートルスリーはズボンになっています。




 ――は、はずかしい。


 僕はスカートを押さえてしゃがみ込みました。

 そしたら、路上生活者のおじさんの頭をスカートの中に巻き込んでしまいました。


「な、なんということじゃーー!! 人生で初めて、美少女のスカートの中に頭を突っ込んでしまったーー。がんぷくのきわみじゃーー!!」


「だーーっ!! なんで入っているのですかーー!! さっき距離をおきましたよねえ」


「ひひひ、こんなこともあろうかと移動しておいたのじゃ」


 路上生活者のおじさんが、僕のスカートの中に頭を突っ込んでうれしそうに笑います。

 この路上生活者のおじさんは、少しずつこっちに芋虫の様に、はいずって来ていたようです。気が付きませんでした。

 僕は、しゃがんだまま3メートルほど横に飛びました。


「ちっ!」


 路上生活者のおじさんの舌打ちです。

 まったく「ちっ!」じゃねーつーの!!

 とんでもないおやじです。

 僕じゃなければ犯罪です。


「おみごとにございます」


 メイヤがユウキをたたえます。


「ほんとなのじゃ」

「ほんとうです。おみごとです」


 シラタキ様とジャスさんがノブコとエイリをたたえます。


「みなさん、どの位の力で攻撃をしたのですか」


 僕は、メイヤとシラタキ様とジャスさんに聞きました。


「だいたい1割というところです」

「だいたい、ごわ――なっ!? に、2割なのじゃ!!」

「はい、ごわ――えっ!? にわっ、2割です!!」


 3人が声をそろえて言いました。

 まあ、何を言ったかわかりませんが、全力ではなかったようです。


「うおーーーーーっ!!!!」

「すげーーぞーー!!」

「こんなすげーー戦いははじめてだーー!!」

「6人とも滅茶苦茶すげーー!!」

「さすがは、勇者エイゼン様のパーティーだーー!!」


 風が止むと、見物人から歓声が上がりました。


「ふふふ、いっぺんに街が綺麗になった。すごいもんじゃ」


 路上生活者のおじさんが言いました。


「くくくっ! わああぁぁぁはっはっ! ぐわああぁぁーーはっはっはーー!! おいっ!! 狂乱の貴公子バルテンさんよう!! これで証明されただろう!! この俺が、いや俺様が正真正銘の勇者エイゼン様だということがなあ!! ふひひひっ」


 ひげもじゃの勇者エイゼン様は、足が折れて倒れている、冒険者組織「エイゼンの絆」の当主バルテンさんを見おろして言いました。


「ちっ! アホが! その銅像は芸術家ギルドの彫刻家が想像で造った、勇者エイゼン様の銅像だ。本物の勇者エイゼン様を知る人は、まったく似ていないと言っている。そんな銅像に似ている時点で、てめーは偽物なんだよ」


「なっ!? なにーーっ?? うそだろーー」


「ふふふ、そんな事はありません。もう、何年もたっています。今ではきっとこんな顔のはずです。あっ!!」


 僕は言いながら、銅像を見ました。

 銅像はキュートルスリーの戦いのすぐ近くにいたためか、風の直撃をうけて縦に細く、長く伸びています。


「ひひひ、似ていたら偽物か! 俺はこんなにやせていねえ。似ていねえなあ。おい、バルテンさんよう。よくも偽物呼ばわりしてくれたなあ。慰謝料、金貨100万枚払ってもらうぜ」


「なっ! なんだと??」


「ふふふ。と、言いたいところだが、俺は悪党じゃねえ。これからの俺の会計を全部『エイゼンの絆』に請求させてもらうからよう。支払いをたのむぜ。それで、ゆるしてやるぜ。わあぁぁーはっはっ! じゃあ、嬢ちゃん達、飯でも食いにいこうや。お会計は俺にまかせておけ!!」


「それなのですが、僕達はすぐに森に行きたいのです。ここでお別れです。さようなら」


「そうか。さようなら……――じゃ、ねーーんだよ!! 俺も行くに決まっているだろーー!!」


「あのー、メルの皆さん。お願いがあります」


 僕達が森に向かおうとしたときに、受付のお姉さんメブラクさんが言いました。

 一瞬、メルの皆さんが僕達の事とは思いませんでしたが、メルは僕達のパーティー名でした。

 いったい、なんのお願いでしょうか?

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