第二百十三話 3人娘の実力
「ちょ、ちょっと待ってください。勇者様とは、さっきギルドで初めて会ったばかりです。わたし達は関係ないと思うのですが」
ノブコの言う通りです。
「あら、でもあなたはこの偽勇者を、パーティーの仲間にすると言いましたわ。これが、その証拠です」
受付のメブラクさんが書類を前に出しました。
そこには、僕達の名前とエイゼン様の名前が書いてあります。
「嬢ちゃん達、無駄だ! 最初から嬢ちゃん達も狙われていたんだ!」
偽勇者エイゼン様が言いました。
「ふむ、森の都オクジイールの中央広場の真ん中にある勇者エイゼン様の銅像。その横に立つ銅像そっくりの男。それを囲む冒険者組織エイゼンの絆の男達。群衆はエイゼンの絆を恐れて遠巻きに囲んで見ている。遠巻きにしているが興味津々で注目している。娯楽の少ないオクジイールでは、楽しいイベントのように感じているのだろう。冒険者組織エイゼンの絆の当主は銅像そっくりの男を偽勇者と呼んで殺そうとしている。そして、そのパーティー仲間の美女達にも危険が迫る。ひひっ」
銅像の足元に、一人の汚れた服を着たヒゲもじゃのおじさんが、寝そべったまま楽しそうに言った。
その場所は僕の足元でもある。
「あの、あなたは??」
僕は、1歩横に移動して距離をおいてから質問しました。
「ひひっ! なーに、ただの路上生活者じゃ。みりゃあ、わかるじゃろ」
でも、路上生活者にしては体格が良すぎます。
普通はもう少しやせていそうなものですが、筋肉りゅうりゅう、身長も高いです。
ボサボサの髪の毛と、同じくボサボサのヒゲを整えて、お風呂に入ってスーツを着れば立派な紳士になりそうです。
ただ者ではなさそうです。
でも、今はそんなことを詮索している場合ではありません。
「そうですか。確かに見たままです。――でも、困りましたね。このままでは偽勇者の仲間になってしまいます。ノブコどうしたらよいですか?」
「うふふ、簡単です。私達の手で、勇者様を本物にしてしまえばよいのです」
「さすがです。当主のバルテンさんはギルドのプレートではBクラスです。副当主のオズデンさんはCクラス。その他の方はDクラスで、たいしたことはなさそうです。3人に任せてもよろしいですか」
「もちろんです!!」
ノブコとユウキとエイリの3人が元気一杯で返事をしました。
「おいおい! BクラスはAクラスの下じゃが、そもそもAクラスなどは国王からしか与えられない最上級のクラスだ。実質Bクラスが最高位じゃぞ!! なめてはいかん。あんたらは何にも知らんのじゃな」
「うふふ、あの3人。姫神ユウキと姫神ノブコ、そして姫神エイリは、とても強いですよ。まあ、僕もまだその実力を確認していませんがたぶん大丈夫です」
ノブコ達3人は、前に進み出ます。
バルテンも部下を2人引き連れて前に出ました。
正々堂々戦うつもりのようです。
「おいおい、強いと言ってもFクラスじゃないか。しかも、震えておるぞ!!」
「ほ、本当です。大丈夫でしょうか??」
「おいおい、わしに聞かれてもしらんがな!!」
3人は、大げさに揺れています。
口からカチカチ音がします。
震えて、歯が鳴っているようです。
「くっ、くっ、くっ。震えているじゃねえか!」
「ひひひ」
「ひゃははは」
バルテンと部下の2人が笑います。
すでに勝ち誇っています。
「行くぞーー!!」
「おおーーっ!!!!」
バルテン達3人が、ノブコ達に襲いかかります。
「きゃーああああぁぁぁぁーーーーーーっ!!!!」
「えっ!! えーーーーっ!!!!」
僕は思わず二度見してしまいました。
ノブコとユウキとエイリが吹き飛ばされました。
そして、広場の石畳の上で何度も転がります。
ノブコとエイリはミニスカートをはいています。
見えてはいけない物が何度も見えているはずです。
でも、安心してください。僕は見ていません。
そして、2人は見えてもいい奴をはいているはずです。
ユウキのスカートは長いので見えませんでした。
もし見えたとしても、ユウキはこんな時のために青い短パンをはいています。
3人は中央広場の石畳の上で倒れたまま動かなくなりました。
「よしっ!! 見せしめだ!! 服をぬがせろ!! 丸裸にしてしまえ!!」
バルテンと部下が3人に襲いかかります。
「メイヤ!!」
僕は思わず声を出しました。
「はっ!!」
「ふふっ!!」
「私も行きます!!」
メイヤが行動を開始します。
それにシラタキ様とジャスさんが同調しました。
「うぎゃああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!!」
一瞬でした。
悲鳴が一回しか聞こえません。
「な、なんという事じゃ!! 信じられん!!」
路上生活者のおじさんが驚いています。
「うわあああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」
囲んでいた群衆が大歓声を上げました。
僕達を囲んでいた冒険者組織エイゼンの絆の全員、50人位の男達が倒れています。
全員足が折れているようです。
さすがは、メイヤと龍人のシラタキ様とジャスさんです。
桁違いの強さです。
しかも、殺さずに手加減して倒しました。
「お見事です!」
「はっ!! ありがたきお言葉!!」
「うふふ」
メイヤが頭を下げます。
横でシラタキ様とジャスさんがうれしそうに笑いました。
「えーーーーっ!!!!」
倒れていた3人が頭を上げて、倒れるエイゼンの絆の男達の姿を見て驚きの声を上げました。
「お見事ですじゃ、ありませーーーーん!!」
ユウキが怒っています。
いったい、どうしたのでしょうか。
「ユウキ様、どうなされました?」
メイヤが倒れるユウキに近づき、聞きながら手を差し出しました。
「これから、キュートルスリーに変身して倒そうと思っていたのにーー!!」
「えっ!? でも、変身しても強さは変わりませんよね」
ユウキ達が変身したところで見た目が変わるだけです。
僕はおもわず質問していました。
だって、変身って元の姿を隠すためだと思っていましたから。
「かわりませんよ。でも変身したら強くなるように、変身の前は弱そうに演出するものなのです。神様も漫画喫茶、間違えた、オカルト研究部の部室でテレビのヒーロー戦隊番組を一緒に見たじゃありませんかー!」
そういえばそうでした。
テレビの番組では、変身前は弱そうにしていました。
「じゃあ、わざとやられたのですか? 震えていたのも演技ですか?」
「あ――あ、あったりまえでーーす!! 神様は私達をどれだけ弱いと思っていたのですかーー!!」
「ふんふん」
ノブコとエイリが、鼻息も荒く何度もうなずきます。
3人とも怒っていますね。
どうしよう。
「では、1度変身なされて、私達の一撃を受けていただけませんか?」
メイヤが言いました。
メイヤは僕の考えがわかるみたいです。
「ふふふ」
3人が顔に影を落として笑います。
不気味です。
「オイサスト! シュヴァイン! あっ間違えた!!」
ユウキは間違えてしまったようです。
なにと間違えたのでしょうか?
「ヴァルキリーレヴォリューション!!!!」
ユウキとノブコとエイリの声が綺麗にそろいました。
3人がそれぞれのポーズを取ります。
なんだか、いろいろ小物が体についています。
3人は召喚勇者になり、変身魔法が使えるようになっています。
自分達で好きにデザインしたみたいです。
「三人あわせてキュートルーー!! スリーー!!」
「三人そろってキュートルーー!! スリーー!!」
「私達ーー、キュートルーー!! スリーー!!」
ここは、相変わらずそろわないのですねえ。
キュートルブルーがユウキ。
キュートルグリーンがノブコ。
キュートルイエローがエイリです。
キュートルブルーの前にメイヤ。
キュートルグリーンの前にシラタキ様。
キュートルイエローの前にジャスさんが立ちました。
あたりが静寂につつまれます。
誰もが恐れるエイゼンの絆を、一瞬で全員倒した黒い執事と白と黒のメイド。
その前に青と緑と黄色の戦士が対峙します。
これから何が起きるのか、全員がカタズをのんでその様子を見つめます。




