第二百五話 呼び出し
「ふわあぁぁーーぁぁーー!! ど、どうしたことじゃーー!!」
炊き出しの横で腰をおろして、スープを飲んでいるお婆さん達から声が聞こえてきました。
「わわっ?! す、すごい!!」
吉田先生と後藤先生が驚いています。
「腰がシャキッとして、肌がすべすべじゃーー!! ついでに、しわもなくなればよいのにのう。残念じゃー」
「マ、マモリ様!! これは、どういうことですか??」
吉田先生と後藤先生の2人が声を合せて、僕につめよります。
「僕の出した携帯食料は、僕が長期間魔法で収納していた物なので、魔法で熟成されたみたいです。味が悪くなる代わりに、美容と健康にもいいみたいです」
「ななな、なんですってーーっ!! ユウキちゃん!! そのまずいスープを私達にも、ちょうだい!!」
「だめですよー!! 順番です!!」
「わ、わかりましたーー!!」
吉田先生と後藤先生はユウキに敬礼すると走り出しました。
行列の一番後ろに走っています。
さすがは日本人ですね。
「わかりましたじゃないですよー!! 人手が足りないのにー!!」
ユウキが、走って小さくなる吉田先生と後藤先生の背中に向かって言いました。
「嬢ちゃんや! 人手が足りないのなら、このババ達が手伝ってやろうかいのう」
「本当ですか? ありがとうございます。心から感謝いたします」
「何を言うのじゃ。心から感謝するのはわしらのほうじゃて。のうみんな」
「ほうじゃ! ほうじゃ!」
お婆さん達が全員で炊き出しに参加してくれました。
「よぉーーぉーい!!」
数日が過ぎ、僕達が領都の門の前の片隅で、いつものように炊き出しの準備をしていると、林の中から声がしました。
出て来たのは古い鎧をつけた老人達です。
「あの?」
「おお、なるほどこりゃあ可愛い嬢ちゃん達じゃわい。わしらは見ての通りの爺じゃが、元気になってのう。いくさの役にたてそうじゃから、武器を持ってやってきたのじゃ。領主様はおりますかいのう」
「ふふふ、わたくしが領主代行のコウです」
コウさんは多くの時間をこの場所で過ごしています。
今日も夜明けと共にやってきました。
「おおっ!! コウ将軍!! わしらはゲドル軍の兵士を退役した爺じゃ。だが、体が元気になってのう。これなら戦場でもう一働きできそうじゃから、まかりこしました」
「ふふふ、なるほど。ですが、足手まといでは困りますなぁ。少し剣を振っていただけますか」
「いいじゃろう」
お爺さん達は武器を取ると不敵に笑いました。
鞘からゆっくり剣を抜きます。
そして、僕の姿を見つめます。
「きえぇぇぇーーーー!!!!」
「うわあぁーっ! な、なんで僕なんですかーー!!」
お爺さんは真剣な表情で、僕に次々襲いかかってきます。
お爺さんは50人ほどいますが、1人、また1人とかわすと2度目の攻撃はしてきません。
「ひぃぃーひっひっひっ!!」
笑いながら次々襲って来ます。
なかなか素早い腰の入ったいい攻撃です。
熟練の兵士の攻撃です。
同時の攻撃ならよけきれない攻撃もあります。
「すげー嬢ちゃんもおったもんじゃ!! わしらの攻撃がまったく通用しないとはのう」
攻撃が終わったお爺さんが、武器をしまってアゴのヒゲをさわりながら言いました。
「まったく、じいさん達じゃなければ、ぶん殴るとこだ!!」
コウさんがあきれていますが、止めてはくれないようです。
「ふーーーーっ! まったくこれでおわりですか?」
全員の攻撃を、かわし終わりました。
「どうじゃ、嬢ちゃん。わしらの攻撃は? 新兵よりは、いくらかマシじゃと思うがのう」
「ふふふ、新兵よりましなんてとんでも無い、戦場で充分役に立てる熟練兵士の攻撃でした」
「しかし、嬢ちゃんは変なパンツをはいておるのう。ひぃーひっひっ!!」
「なっ!」
まあ、パンツが見えるほどの動きをしないと、よけきることができませんでした。
充分戦場で働ける熟練兵士です。
「よし、いいだろう!! 兵士の数は足りていない。現役復帰を認めよう」
コウさんが言いました。
「おおおおおおぉぉぉぉぉーーーー!!!! コウ将軍のお墨付きじゃーー!!」
お爺さん兵士が歓声を上げました。
「これでまた国の役に立てる」
数人のお爺さんが涙ぐんでいます。
「もう、終わりましたか? 終わったらどいて下さい。掃除の邪魔です」
子供達が掃除道具をもってやってきました。
親を失い、落ち着いた子供達が共同生活を始めています。
朝と夕方のお掃除は子供達の仕事です。
まだ、母親が死んだことを受け入れられない子供が、遺体の側を離れられないでいますが、母親の死を受け入れた子供達は、元気に新しい生活を始めています。
「きゃっ!!」
僕と目があったマオが、ちーちゃんの後ろに隠れました。
いつになったら慣れてくれるのでしょうか。
「コウさん、お願いがあります」
「はっ!! 何なりとお申し付け下さい」
コウさんは領主代行なのに、僕にうやうやしく頭を下げてくれます。
「ふぅぅーーっ! この子供達に生活の場を作りたいのですけど、許可をいただけませんか?」
僕はため息をつくと言いました。
そして、コウさんにうやうやしく頭を下げました。
「お、おやめ下さい。マモリ様! わたくしなどにもったいない」
「うふふ、では、僕にもやめて下さい。僕は領主代行様に頭を下げてもらうほどの者ではありません」
「ふむ、マモリ様は、そうお考えなのですね。でしたら、そういたします。――子供達の共同生活の場所ですか。ひょっとするとマモリ様は、そのために来たのですか?」
「はい。子供達を守るためにきました。この子供達に食事と教育の場所を作りたいと考えてきたのです」
「ふふふ、マモリ様……マモリ様は、そこまで我ら魔人の事を考えてくださっていたのですね。で、あれば、私の方からお願いいたします。子供達をよろしくお願いいたします。足りない物があれば何でも言ってください。このコウ、できうる限りの協力をいたしましょうぞ」
これで、子供達の学校を作る許可を領主代行様からもらえました。
ひと安心です。
「あっ!!」
「どうされました??」
「うん、ゲドル大将軍が呼んでいます。僕は行かなくてはなりません」
「ゲドル大将軍が」
コウさんが少し緊張した表情になりました。
僕は、お爺さんの兵士と、ユウキとノブコとエイリ、ちーちゃんとマオ、ナナさんとレイコをつれて、ゲドル大将軍の呼んでいる場所へ移動しました。




