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勇者はマモリたい  作者: 覧都
第2部

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第二百三話 作りたい物

「しまったのじゃー」


 シラタキ様が声をあげました。


「シラタキ様、どうしました?」


 僕はシラタキ様の横に行って聞きました。

 僕達は遺体を抱っこしたまま、領都の墓地まで移動が終った所です。


「穴をあけるのを忘れていたのじゃー」


「それなら、我らがやりますのでそのままお待ち下さい」


 衛兵達がスコップを持って来て、僕達の前で穴を掘り始めました。


「メイヤ、僕は王都を奪還したら作りたい物が出来たよ」


「ほう」


 メイヤが関心を示してくれました。


「お、お、王都を奪還??」


 僕達の横で穴を掘る衛兵達が手を止めて僕の顔を見つめます。

 先にそちらの説明からしないといけないようです。


「そうです。失礼ですが皆さんはどう考えていたのですか?」


「わ、私達は、このまま魔人の国は滅亡するのかと。できるのなら大森林に逃込み魔人族として細々と生きていければと。――そう話し合っておりました」


「そうですか。では、僕からの回答はこうです。魔王城までは割と早く奪還できるでしょう。でも、そこから先は王国も本気で反撃に出てくるでしょう」


「つまり、そこから先は予想できないと」


「はい、そうです。大森林では、龍王が不穏な動きをしています。まったく予想が出来ません。でも、魔王都の奪還はゲドル大将軍の電撃作戦が成功すれば出来ると思っていますよ」


「おおおおおおぉぉぉぉぉーーーー!!!!」


 作業をしていた衛兵達から歓声が上がりました。

 みんな、聞いていたみたいですね。


「して、作りたい物とはなんですか?」


 メイヤの関心は僕の作りたい物の方だったようです。

 まあ、メイヤも王都の奪還までは出来ると思っているようですね。


「ふふ、僕は魔王都を奪還したら、魔王都の中央に大きな敷地で」


 僕はもったい付けてここで区切って、メイヤの顔を見ました。


「大きな敷地で」


 メイヤはそう言いながら、考えを巡らせているようです。


「神社を作りたいと考えています」


「神社!?」


「はい、名前は安土神社」


「ほう、それは良い名ですね。土に眠る御魂を安んじるという神社ですね」


「うふふ、そうです」


 ――えーーっ!??


 そんな意味ではありませんでした。

 たまたま、ここに安土様が分体でいるので、そのまま神社のご神体になってもらおうと考えただけです。


「この戦争で亡くなった魔人全部の御霊をおまつりする神社ですな」


「はい、兵士も僕の胸にいる難民の方々も全員おまつりするのです」


「そういえば、偶然神様がいらっしゃいますな」


「ほ、本当です。あーーっ! 名前も偶然安土様です!」


「ふふふ」


 メイヤが表情を変えず、いいえ、少しだけ、ほんの少しだけ笑顔になって笑っているようです。

 僕の考えはメイヤに全部ばれているみたいです。

 僕は分体の安土様の顔を見ました。

 安土様は、少し不安そうな顔をしましたがコクリとうなずいてくれました。




「おい! もっとつまねえか! そんなことではいつまでたっても終わらねえぞ!!」


 領都の高い防壁の前まで戻ると声がします。


「りょ、領主代行!!」


 衛兵の隊長さんが驚きの声を上げました。

 領主代行のコウさんが様子を見に来たみたいですね。


「おい、さっさと放り投げて積み上げろ! こんな、くせえ汚え物を俺はさわれねえ、おめえ達さっさとやるんだーー!!」


「ひっ! ひぃぃぃーーーーっ!!」


 衛兵達が僕の方を見て怯えています。

 あーっ、たぶん僕の後ろのメイヤとシラタキ様が恐い顔をしているのでしょう。

 でも、僕も少しだけこめかみがピクピクしています。


「マ、マモリ様が、おっ、おいかりだぁーー!!」


 衛兵達がペタンと尻もちをついて後ずさりします。


 ――えっ??


 衛兵は今なんといいました?


「マモリさまぁぁーーーーっ!!」


 僕の後ろから大きな声がします。


「どうしました?」


「はあっ、はあっ。は、はい、ユウキ様が呼んで来てほしいと」


「そうですか。それなら小指の爪をこすればいいのに」


「はあ。それが、そこまで緊急ではないと、なにか手が離せないようならその後でよいと、私はこっちへ増援で呼ばれたついでに言付けを頼まれたのですが、姿が見えたのでつい走ってしまいました」


「そうですか。では、少し手が離せないので、その後にしましょう。ふっふっふっ、僕はこれから、お説教でいそがしくなりますから」


 僕は、なるべく可愛い表情になるようにしてコウさんを見ました。


「あーーっ!! マ、マモリ様!! 領主代行には、わた、わたくしめから、よく言っておきますので、ユウキ様のところへすぐに行ってあげて下さい。きっと緊急のはずです」


 隊長さんがあせって、体をガタガタ震わせながらコウさんと僕の間に立って僕に言いました。


「そうですか。なるほど、ユウキは気を使ってくれているのかもしれませんね」


「は、ははは、はひ」


「そういうことなら急ぎましょう。隊長さん、申し訳ありませんが、あとはよろしくお願いします」


「は、はは、はい!!」


 僕はメイヤとシラタキ様と3人でユウキのいる、領都の門の前まで急ぎました。

 いったい、何があったのでしょうか。






「ユウキ!!」


「あっ、神様!!」


 ひたいに汗をにじませて、ユウキが顔をあげて僕を見ました。

 ユウキは大きな鍋をかき混ぜている最中でした。

 いつも通り可愛い顔です。

 世界一の美少女です。

 幸魂学園の制服に白いエプロンをつけています。


「何があったのですか??」


 僕はつい笑顔になりました。


「はい……。――その前に!!」


 ユウキが眉間にしわを寄せて僕をにらみます。


「えっ!? な、なんですか??」


 ユウキの顔が恐いのですけど。

 僕がいったい何をしたというのでしょうか。


「なんで、メイヤさんまで臭いのですかーー!! ま、まさか3人でだきあっていたのですかーー!! うらやましすぎますーー!! 3人とも食料の近くには寄らないでくださーい!!」


「ご、ごかいだよーー!! それに僕はメイヤには抱きつかないよーー!!」


「わたくしもでございます。マモリ様に抱きつくなど恐れ多いことにこざいます」


 メイヤがうやうやしくユウキに頭を下げました。

 ユウキの吊り上がっていた眉が平行になりました。

 誤解はとけたようです。

 さすがは、メイヤです。


「そんなことはどうでもいいわ!!」


 そんなことはどうでもいいわって、ユウキが自分で言ったんですけど。


「これですよ!! これ!! 料理がくそまずいのです。こっそり持って来た調味料を入れてもなんともなりません。何をしようがくそまずいままなのです」


 ユウキは、大鍋のスープをこれでもかと何回も指さします。


「ああ、それですか。良薬、口に苦しといいます。良料理、口にまずしです」


「はーーっ!! そんなの聞いた事がありません!! 何とかして下さい」


「な、なんともならないよーー!!」


 僕は困ってしまいました。


「くひっ!」


 後ろでメイヤが吹き出す声が聞こえました。


「どれどれ、ワラワがみてやろうかのう」


 シラタキ様が僕の後ろからでてきました。


「はいどうぞ」


 鍋から離れて立っている僕達の所へ、ユウキがスープの入った器をもってきました。


「ぐはーーっ!! なんじゃこれはーーっ!! 猫のヘドより最悪じゃーー!! どうするのじゃこんなもの、みてみろ、難民がもうこんなに並んでいるぞよ」


「うふふ、伝説に聞く脱脂粉乳のようですね」


 後藤先生がいいました。


「脱脂粉乳? なんじゃそれは?」


「ふふ、それは、日本人が貧しくて、民衆が飢えて餓死寸前だった時に進駐軍が配給してくれた食品ですわ。餓死寸前だった日本人ですら、まずくて飲めなかったと言います。でも頑張って飲んだおかげで日本人は、餓死せずにすんだというしろものです」


「なるほど、これはマモリ様の脱脂粉乳というわけじゃな」


「その代わり、きっととても元気になれるのでしょう。がんばって食べてもらいましょう」


 後藤先生がいうと、全員がうなずきました。




「みなさーーん、お待たせしましたー。マモリの脱脂粉乳でぇーす!! くそまずいですが、とても元気になれるスープでーす。がんばって食べてくださーーい」


 複雑な心境ですが、配給がはじまりました。

 食べてもらえればきっと元気になれるはずです。

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