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勇者はマモリたい  作者: 覧都
第2部

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201/207

第二百一話 魔王の実力

 レイコの瞳が動きを止めました。

 じっと一点を見つめます。

 ゆっくり右手をあげます。


「…………ゾォ……」


 声が小さいので良く聞こえませんでしたが、レイゾォートと言ったようです。

 レイコの右手に、青く美しく輝く巨大な剣があらわれました。


「おお!! あれはまさしくウリグーリシム鋼製のレイゾールト様専用の剣、レイゾォートだ!!」


 見ている衛兵の中から声が聞こえました。

 レイコはレイゾォートのつかを手で握る事が出来ないので、3本の指でつまむようにして持っています。

 重そうな剣をつまむだけでしっかりささえています。

 レイゾォートを横に倒し切っ先を右下に向けました。

 冷気をまとう剣が青白く輝きます。


「おりゃああぁぁぁっぁっぁあぁーーーーーー!!!!」


 いつも控えめなレイコが大きな声で吠えた。

 レイゾォートを斜めに天をめがけて振り抜く。

 剣の切っ先から大きな破裂音がする。

 同時に白い三日月のようなものが空気を引き裂いていく。


 三日月は飛行機のように雲を作りながら天に向かっていく。

 真っ直ぐ天に向かう冷気は、まわりの空気を凍らせて雲を作り、雲からキラキラ光を反射しながら氷の粒が落ちてくる。


「雪です」


 ユウキがうれしそうに言った。

 両手を広げて手のひらでその雪のつぶを大切そうに受けとった。


「すっ、すげーーっ!! すげーーっ!!」


 あたりの兵士達から歓声があがった。


「冷たい。氷だ!! こおりだーー!!」


 兵士達も落ちてくる氷を手のひらに受けとっている。


「マ、マモリ様!!」


 コウさんが驚きながら僕を呼んだ。


「はい」


「まさか、レイゾールト様、いえ、レイコ様は以前より強くなっておられませんか?」


「そうですねえ……強くなっているかもしれません。召喚勇者達と日々修行をしていましたので、剣の技術のレベルは上がっているかもしれません。でもどうしてそう思うのですか?」


「な、な、何を言うのですか! すぐにわかりますよ!! 以前のレイゾールト様は、剣を振っただけで氷を降らせるなんて事はできませんでした。もし剣のレベルが上がっているのなら、恐ろしく上がっているということです。おそろしい、この幼さでこれ程の実力とは」


 まさか、レイコは転生して幼くなって伸びしろがリセットされて増えているということなのでしょうか。


「えっ!? そ、そうなんですか?」


「そうです!!」


 コウさんの鼻息が荒いです。興奮しているようですね。

 うふふ、これならバカ勇者エイゼンを楽々殺せる日が来るのが、近いかもしれません。


「じゃあ、次はマオの番ですね」


 その言葉を聞くとマオがうれしそうに前に出てきました。

 なにか、実力を示す方法があるみたいですね。

 腕まくりをしました。

 やる気満々です。


 今の魔王には束縛するものはなにもありません。

 解き放たれた魔王の全力の魔法はどれほどの威力があるのでしょうか。

 しかも、大勢の召喚勇者と修行を重ねています。

 以前とは比べものにならないでしょう。

 僕は緊張のため、喉がカラカラになっています。


「それには及びません。レイコ様の実力を見れば、マオ様の実力は見るまでもなくわかるというものです。これ以上お二人の実力を疑うということは臣下として、あるまじき礼を失する行為となります。もう十分でございます」


 コウさんが深く頭を下げました。

 マオが驚いた表情をして、しょんぼり頭を下げてちーちゃんの後ろに帰って行きました。

 少し可哀想な気もしますが、これでよかったと思います。


「皆の者!! 今のを見たであろう! 我が国に魔王様が復活なされた。復活なされたのだーー!!」


 コウさんはふたたび頭を上げると、右手の拳を高く天に上げて力強く叫んだ。


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」


 魔人達から雄叫びがあがった。

 お婆さん達も拍手で喜んでいます。

 泣いている人もいるようです。


「ところで隊長さん」


「は、はひーーっ!」


 隊長さんは突然の僕からの呼びかけに、少し飛び上がり悲鳴のような返事をした。

 死刑を言い渡された囚人のような表情をしています。


「なぜ避難民が飢えたままなのですか? 僕は十分な量の食料をゲドルさんに渡したはずですが」


「ははっ! お、おそれながら申し上げます。領主ゲドル様が出陣なさるおり、領都に残る人の分を残し全て持って行かれました。ゆえに難民に、ほどこす食料までは残っておりません。も、申し訳ありません」


 隊長さんはガタガタ震えながら平伏すると、額を地面にこれでもかとこすりつけました。


「隊長さん、あまり僕を恐れないでください。僕は魔人の命は奪わないと心に誓っています。隊長さんの事もすでに許しています。コウさんも、許してあげてください。ところで領主代行様、あらためてお願い申し上げます。僕はここで炊き出しをしたいのですが許可をしていただけますか?」


「もちろんにございます。今後はこのような事が無いように、姫神マモリ様の名を魔人国中に広めまする」


「それはやめて下さい。同時に魔王様の復活も魔人だけの秘密にしておいてください。マオはまだ幼いので人間達にばれると、だまされて連れ去られるかもしれません」


 まあ、隠しても隠しきれる事ではありません。

 きっと、密偵も入っているでしょうから。

 本当はなるべく長く隠しておきたかったのですが、それでも魔王が復活していると発表したのは、魔王の復活がわかった方が魔人達の士気が高まると考えてのことです。

 滅亡寸前の魔王軍には圧倒的な士気が必要なのです。

 士気が高ければ、少数でも大軍に打ち勝つことが出来るというものなのです。


「なるほど、マオ様の件はわかりましたが、なぜマモリ様の事を周知するのはダメなのですか?」


「どうしてでしょうか。僕にも良くわかりませんが、このように皆さんに平伏されるのは、うれしくないのです。いいえ、うれしくないどころか、嫌なのです。だから、どこにいても誰にも気にされないように、ひっそりと生活したいのです」


「ふふふ、なるほど。マモリ様のお気持ちはわかりました。では、マモリ様の事は何も知らせないようにいたします。ふふっ」


 コウさんは最後に不気味な笑顔になりました。


「ありがとうございます。では、これより炊き出しの準備に取りかかります。領主代行様、失礼いたします」


 僕はコウさんに頭を下げて、くるりと後ろに向かって声を掛けます。


「みんなあー!! これより炊き出しの準備に取りかかります。皆さんがお腹を空かしているはずです。一秒でも早く終わらせますよー」


「おおーーっ!!」


 メイヤをのぞいて全員がノリノリで返事をしてくれました。

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