第15話 奮闘する王子たち
中盤以降ウイリアム視点、ジュリアン視点もあります。
そのためいつもよりは長めです。
時は少し戻り散策事件の2週間前のお話。
私とリアム様は入学してから街でお忍びデートを重ねリアム様、ティアと呼ぶくらいには親しくなった。
リアム様はちょっと腹黒いところはあるけど、きっと私を信じてくれるはず。キョーコ様の手帳のことをリアム様に相談することにした。
イベント阻止の協力をしてもらうために、なぜ私が手帳を読むことができたのか、キョーコ様の言っている意味がわかるのか説明する必要があった。
私が異世界転生者であること、ここは乙女ゲームで本来のストーリーであれば私には悪役令嬢の役割があったが避けたいと願っていることを話した。
リアム様は少し考えたあと
「私との婚約を先延ばしにしていることも乙女ゲームとやらと関係あるのかな?」
「あのときはまだ乙女ゲームだと確証はありませんでした。でも悪役令嬢は王族の婚約者と相場が決まっておりますので少しでも外れたかったのです……」
「では、レティは僕が嫌な訳ではないんだね?」
「……まあ、そうですわね」
リアム様にハッキリ言われると小恥ずかしい。
お茶会で初めて会ったとき、ちょっと悪そうなことを考えている王子様スマイルにドキッとした。それに社交辞令だったかもしれないけど、あのワンピース姿も褒めてくれたしね。あのとき着ていったワンピースは前の世界でお父さんが好きだったデザインだった。
押されて始まったお忍びデートだったけど、それが本当に楽しかった。いつの間にか好きになっていた。
「もし乙女ゲームであれば、だいたいヒロインが入学するところからストーリーが始まりますもの。1年様子を見れば乙女ゲームかどうかわかるかと思いました」
「乙女ゲームとはそういうものなのかい?理解できないな」
「そういうものなのです!!」
「では、乙女ゲームとやらが終わりを告げればすぐにでもレティは婚約者になってくれるってことだよね?」
「えっ!?」
いったいどう考えればそんなことになるの?!
「この手帳の件については私に任せてくれる?みんなが幸せになるためにいい考えがあるんだ」
――――――――
《ウイリアム王子視点》
乙女ゲームの終わりというのはヒロインであるソフィアが婚約者を得て幸せになるということではないだろうか。相手が決まってしまえばイベントが起きる必要もないだろう。
この間の水晶が割れた事件でキョーコ嬢の魔法について闇の魔法の使用者疑惑が湧いているところだ。秘密を守れて力になる仲間も必要だ。
まずは情報収集とジュリーかな。
皆が寝静まった深夜
「ジュリー。今話せるかい?君の夢に関する大事な大事な相談があるんだ」
「リアム〜?こんな時間に意味ありげな言い方〜!でも僕の夢のこととなると看過できないな」
ジュリーの夢と言えば聞いてくれると思った。
「今度の聖なる森の散策で君の聖女様が関わる事件が起きるかもしれない。対策はしていくが、あのキョーコ嬢が関わっているので、上手くいくとは限らないんだ。お互いの幸せのために協力して欲しい」
「どういうこと〜?協力するのは構わないよ。でもキョーコ嬢って闇の魔法使用者疑惑がある娘だよね?危険があるなら散策自体中止したらどう〜?」
口調とは裏腹にジュリーは真面目な表情だ。
「いや、今回を避けても次に情報がない状態で事件が起きると対策が立てられないからね。何が起こるかわからないほうが困る。今回は日付が決まっていてベースとした流れもあるんだ。これを機に、キョーコ嬢の闇の魔法使用についても追い詰められるかもしれない」
「そっか〜。わかった!リアムがこんなに言うってことはスカーレット嬢も関わっているんだろ?お互いの幸せのためにとも言っていたしね」
ジュリーは抜けているようで意外に鋭いところがある。
「まあそういうことだよ。ジュリーには属性が確定した風魔法が操れるようになってもらいたい。正直に言うとソフィア嬢がどこからか落ちる可能性がある。それをジュリーの魔法で助けるんだ」
「何っ?!そんな危ないこと!……でも今回避けてもソフィアが同じ目に合う可能性があるんだよね?わかったよ!あと、2週間死にものぐるいで頑張ってみる〜!」
王族は魔法の力も強いというし聖女様のためならジュリーはやるだろう。
次に情報収集だ。
どうやってキョーコ嬢に近づこうかと思っているとあちらから近づいて来たではないか。
「リアム様〜♡今日も素敵ですぅ。一緒にランチでもしませんか?」
これは好都合だ。
「キョーコ嬢、それは光栄だな。ぜひご一緒しましょう」
愛称呼びなど馴れ馴れしい。不愉快な気持ちを隠し、全力のキラキラ王子スマイルを向けて返事をした。
キョーコ嬢と話をするとあまり頭はよくないようだ。
「キョーコが可愛いからみんなお願いを聞いてくれるですよぅ。リアム様はどう思いますか〜?」
周りを見ると取り巻きたちの目が虚ろだ。何らかの魔法がかかっているように見えるが確証はない。
私の手の者を監視に付けて様子を見ることにした。
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聖なる森の散策も手を打たなければ。
教師たちと話し、崖のない歩道にルートを変更した。教師たちも水晶が割れているのを目の前で見ているので、私の動きに何か思うところがあるのだろう。
さて、このルート変更でキョーコ嬢たちがどう動くかだな。
数日後の報告を聞くと、新しいルート付近の森の中、取り巻きたちに大きな穴を掘らせているらしい。そこにソフィアを落とそうとしているようだ。この間の件でレティもソフィアも警戒しているだろうし、どうやって誘い出すつもりだろうか?
闇の魔法では、人の心を操ったり、悪意を増強させたり心に干渉するものがある。その他、思い通りに顔を変えることができると聞いたことがある。あとは気温を下げる、霧を出す、他者を動けなくする、言葉を発せなくする、コウモリのような羽が生えて空を飛ぶ……なんてものも聞いたことがある。どこまで本当かわからない。危険すぎて研究が進まないのだろう。一般に知られている情報もここまで多くはない。
ソフィアを誘い出すために何か闇の魔法を使う可能性が高い。闇の魔法を使ったところを現行犯で捕えることが出来れば!
護衛の騎士を付ければソフィアに危険なく捕らえられるだろう。念の為、ジュリーには魔法の練習は続けてもらう。キョーコ嬢の魔法を封じるために魔封じの腕輪も用意しなくては。
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事件が終わってみれば、キョーコ嬢が使った魔法は人の心を操るものと霧の魔法だった。無事に現行犯で捕まえることが出来たのはいいが、キョーコ嬢の魔法にかかった騎士がいてこちらの動きが遅れたことが誤算だった。
しかしソフィアは突き飛ばされたがジュリーが風魔法で助けたのだ。ジュリーにも協力を依頼していて本当に良かった。
これで2人の仲は深まったはずだ。頑張りすぎてジュリーは倒れてしまったが、ソフィアが光の魔法で回復させた。それについてもジュリーは大喜びだった。
終わりよければすべてよしというが、ジュリーからソフィアを危険な目に合わせたとの責めは甘んじて受け入れようではないか。
《ジュリアン王子視点》
僕は昔から聖女様と結ばれたいと願っていたんだ。王太子にも興味はないので婚約も18歳のギリギリまで聖女を待つと周りにも宣言している。
なぜ聖女様と結ばれたいか?それは幼い頃のことが関係している。産み月より早く生まれたせいか僕は身体が弱くベッドで過ごすことが多かったんだ。
お忙しい王妃に代わって、乳母はよく枕元で絵本を読んでくれていた。特に聖女様が仲間と一緒に冒険をしながら民たちの病気や怪我を治すために国を巡る物語が好きだった。物語の最後には聖女様が一緒に冒険した仲間と結ばれてハッピーエンド。
僕のところにも聖女様が来てくれたら。そんなふうに願っていた。そうしたら僕も一緒に冒険の旅に出られるくらい元気になるんだ。そして最後には聖女様と結ばれたい。そう願っていた。
成長するにつれて身体は強くなったけど、聖女様への憧れとその願いだけは残ったんだ。
学園入学前に聖女様候補が現れたと聞いて僕は小躍りした。ついに!歳も同じだし運命に間違いない。
初めて見た時も優しそうに微笑んでいて、まさに聖女様という感じだった。
聖女様ことソフィア嬢はリアムの想い人であるスカーレット嬢と一緒に過ごしていた。ちょうどよくお近づきになれるかと思ったけど、リアムは約束とかでスカーレット嬢には学園では近づかない。僕は憧れた期間が長すぎて1人では上手く話しかけられそうにない。
そんな時、魔法適応試験でのソフィア嬢の金色の光!絵本で見た通りだったんだ!次にチャンスが来たら絶対話しかける!
数日後、ちょっとした事件がキッカケでソフィアと話すことが出来た。手を握ることになりドキドキした!このチャンスは逃さない!グイグイいってやる!!
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そんなある日リアムから相談された。ちょっと物騒な話だったけど、ソフィアを守るためなら風魔法でも何でも覚えてやる!王宮の魔法使いに教えを請いこっそり風魔法を練習した。実技はほとんどしていなかったから苦労した。でもソフィアの顔を思い浮かべて頑張ったんだ。
あの日はリアムが騎士を連れているから大丈夫と言ったのにソフィアは穴に突き飛ばされた。無我夢中で風魔法を使ったら、ソフィアを助けることが出来た。
力を使い果たした僕にソフィアは光の魔法を使ってくれた。
心地の良いあたたかい光だった。
結果オーライだけど、ソフィアが危険な思いをしたからリアムには文句を言ってやらないと!!




