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第七話:首無し美人

第七話

 羽津女学園の一員となった俺が廊下を歩いていてもさしておかしい事はない。ちなみに、本年度より羽津め学園となった。これまでは羽津じょ学園だったがな。

 思ったより女子生徒達にも受け入れられているようで色々と声をかけてもらっている。

「あ」

「え?」

 三年生から頼まれた資料配布をC組に持って行くとすごく目立つ子を見つけた。

 美人過ぎるとか、その逆だと言うわけではない。

 圧倒的な存在感を他者に与えながら、いないとして扱われるある種の透明人間。

 その子はあたまに黒子の被る面をつけていた。

 ……この前、更衣室で出会った女の子に違いない。

「えーと、何か?」

 少女は俺が見ていた事に気づいて、首をかしげている。

「あ、えっと……俺、隣のクラスに転校してきた夢川冬治っていうんだ」

「は、はぁ……えっと、わたしは間山恵理奈です」

 俺が自己紹介を下からそれに仕方なく返したという雰囲気だった。この人は何なんだろう、あまり話したくないなという雰囲気が漂ってきている。

 それはともかく、俺がこの女学園に来たのは勉学のためではなない。ある意味、お仕事のためなのだ。

「ちょっと来てくれない?」

「え……」

「こっちだよ」

「あ、ちょっと」

 間山恵理奈を廊下に連れ出し、誰も人がいない事を確認すると警戒心を抱かせないように笑って見せた。

 無理やり引っ張っている時点でアウトだけどさ。

「あのさ」

「は、はい……」

 間山恵理奈はどうやら緊張しているようで廊下の壁に背をつけ、がっちがちに固まっている。

「君は何者なんだ?」

「え?」

「首から上が無いみたいだけど」

 どうやら隠していた事だったようで彼女は凄く驚いていた。

「どこで、それを……?」

「それは……」

「もしかして、お姉ちゃんが言ったんですか!」

 変貌の仕方が凄かった。まるで鬼の形相(顔は見えんが)で俺の襟を掴んで睨んでくる。

「き、君のお姉ちゃんはよく知らない」

 丸めこもうとしていた俺は逆に命の危険を感じていた。

「嘘言わないで下さいっ。B組にいるでしょう? 椎子って子がっ」

「あ、ああ、椎子ね。いや、全然似てなくって気がつかなかったよ」

「……」

 しらけた雰囲気で見られて俺は自分の間抜けさを呪った。

「いや、顔が似てないって事じゃないぜ? 雰囲気だよ。あっちはちょっと電波が入っている感じがしたけれどさ、君は話しかけ易くて静かな大人の感じがした」

「……本当ですか? 根暗っ子はちょろいぜとか思ってませんよね?」

「思ってないってば。大体、被り物があるからそういうのはわからないだろ」

 襟を掴まれていた力が徐々になくなっていき、俺は人心地つけるようになった。

 一体、何事かと生徒の何人かが俺達を見ておりため息をつく。今日はこのくらいにしておいた方がよさそうだ。

「ま、今後よろしく」

「あ、はい……」

 人が徐々に集まってきている。やはり、今の状態で話を続けるのは無理だろう。場所を変えたら変な噂が立ちそうだしな。

「しかし、思ったより早く手がかりが見つかったなー……」

 この分なら調査とやらもすぐに終わるだろう。

 ポケットに未だに入っている黒子の面の事を思い出し、いつか返さなくてはと思うのだった。


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