第五話:可愛い子には苦労をさせよ
第五話
「羽津学園から転校してきた夢川冬治です。えーと、唯一の男子生徒ですが……その、よろしくお願いします」
これまで結構転校したけどさ、女学園に転校とか生まれて初めてだわ。
女子の方も何だか引いている人の方が多いし、先生も困った顔で俺を見ている。
「えーと、夢川の席だが……富木の隣は空いてるよな?」
「わ、わたし、いやです」
「そ、そうか……」
びくびくした感じの女子生徒に否定されて俺は微妙に凹んだ。微妙どころではないな、涙までためられているし、まさかここまで嫌われるとは……何もしていないはずなんだがな。
「あ、えーと。夢川君。これは別に君個人を嫌っているわけではないんだ。ここは、女学園だからな?」
「あー、はい」
先生も男だが、まるで俺を投下された爆弾みたいな感じで扱ってるな。
これ、もしかしてクラスに受け入れられなくて廊下で授業を受けることになる可能性を考えたほうがよさそうだ。
そう思っていた俺の耳に声が聞こえてきた。
「センセー、その人あたしの隣でいいよー」
「本当か!」
先生の喜びっぷりは凄かった。俺の沈みかけていた心も浮上の準備を始めている。
「よかったなー夢川。あの子は間山椎子。ちょっと変わっているけどいい子だから」
「それ余計ですよ」
苦笑している女子生徒の隣に鞄をもって向かう。自身の机と椅子は間山椎子さんとやらが運んで来てくれた。
「よっこいせっと」
「ひっ……」
俺の隣に成るはずだった前の席である富木さんが驚いてびくっとなる。
傷つくなぁ……。
「あ、気にしないでいいよ。富木ちゃんは男性恐怖症だから」
「そ、そうか……えーと、ありがとな。俺はさっきの紹介でも言ったけれど夢川冬治って言うんだ……あれ? どこかで会った事無いか?」
間山椎子さんの顔を何処かで見たような気がする。ずっと前ではなくて、凄く最近にだ。
「えー? そうかな。あれじゃない? オタマジャクシの頃にライバルだったとか?」
「は?」
「こうやって隣に席を並べているとオタマジャクシだった頃を思い出すね? あの時はエッチの差……じゃなくて、タッチの差で太陽に触れて受精されちゃったけど今度はそうはいかないよ」
「えっと……?」
何を言われたのかわからなかった。宗教の話だろうか。
「ノリ悪いなぁ……ま、息子ともどもよろしくね?」
「息子? え? 子どもがいるのか?」
もうすぐ三年って時期に引っ越してきたわけだが(既に二月後半だ)、この歳で子どもがいる人が学園に通えるのだろうか?
「違う違う。あたしじゃなくて、そっちの息子」
細い指が俺を指差していた。
「俺? 俺に子どもなんていないぜ?」
場にそぐわない言葉を使えば当然、視線を集めることになる。息子なんて言葉を使えばなおさらだろう。
しかし、ここでは違うのか誰も話しかけてこず、先生の話を聞いていた。
真面目というわけでもなさそうだし、何故だろう。
「息子だよ。ほら、それだってば」
「それ?」
間山椎子さんの人差し指を追いかけて行くと……。
「……」
これ以上は、言うまいよ。
「あたしは間山椎子。椎子って呼んでね。どう呼んだらいいかな?」
「……好きなように呼んでくれ」
「じゃ、冬治君って呼ぶね。よろしく」
「こっちこそ、よろしく」
差し出された右手に自分の右手を重ねる。
間山椎子か……これは、何だか凄い奴が隣になっちまった。
そして、朝のHRが終わり、少しの間休み時間になった。
「……おかしい」
それなりに転校を続けてきた俺だが、休み時間に距離を置かれて観察されるのは生まれて初めてだったりする。
「あれ? 何だかみんな距離があるねー」
間山椎子だけは違い、近い。というか、近すぎる。
「なぁ、何で俺の膝の上に乗ってるんだ?」
「仲良くなるには最初が肝心じゃない? 変に壁とか作っちゃわないようにこれがナチュラルポジションみたいな?」
「周りに引かれてるから。どいてくれ」
椎子に引いているのか、それとも俺に対してなのかどっちかは分からない。それでも、あまりいい空気で無いのは確かだ。
昼休みまでその時間は続いていたが、徐々に変な空気が無くなってきた。話しかけようとかなーという雰囲気も伝わってくる。
「さーて、お弁当の時間だー」
椎子が自分の机に弁当を広げた。俺も自分で作ってきた弁当を広げる。
「あれ? 冬治君お弁当なんだ」
「ああ」
「おっぱいしゃぶってるママから作ってもらったの?」
「しゃぶってねぇよ。これは俺が作ったんだ」
おっぱいとか言うんじゃねぇよ。周りが凄い顔をしてみてるだろうが。
「ふーん、みていい?」
「別にいいぜ」
特にめぼしいものが入っているわけでもない。卵焼きにウィンナーを炒めたもの、あとは塩ジャケくらいだ。
「うっわ、冬治君のウィンナーって大きくて、太―い。こんなの(弁当箱に)入っちゃうんだ」
「お前、悪意ありすぎだろ」
ぺろっと舌を出して椎子は頭を叩いていた。
「ナイスだよ。もっと叩いてほしいなぁ……お尻の方がいいのなら突きだすけど?」
「……はぁ」
俺は頭が痛くなってきた。
ああ、そうか。どうやら、この微妙な空気は俺ではなく椎子に対して向けられていたのか。そして、俺に向けられている視線はものすごく同情を感じ得ないものだ。
「ふふん、どうやら気付いたようだねぇ、冬治君」
「何にだ」
「あたしがはみ出し者であると言うことに……ふふ、冬治君もこれで同じ、はみ出し者だね。あ、大丈夫……そっちははみ出してないから」
「……」
「あれ? 無視しちゃうの?」
こういう輩は無視するに限る。
「二年B組っ。間山椎子っ……脱ぎますっ」
「って、おいっ」
声をかけた時点で既に一枚脱いでいた。
「うう、さぶっ」
「お前、何がやりたいの?」
「謝ってよ。全力であたしに謝って? 冬治君がちゃんと話を聞いてくれてたら脱いだりしなかったから」
一枚脱いだらもう下着だ。淡い黄緑色のブラジャーに包まれた胸は平均的な大きさだった。
「……悪かったよ」
「よっし、ありがとう。じゃあ、冬治君への感謝のつもりで今度はスカート、脱いじゃいますっ」
前の学園の人達へ……俺、今すぐにでもそっちに帰りたいです。
ここからばらばらに話が進んでいく感じにおそらくなっていくんじゃないかなぁと思ってみたり、思わなかったり……。気になるシリーズのヒロイン初回登場がどれも短いのはおそらく、作者の考えないのが問題ですかね。本当にさわりだけ……しかも、今回に至ってはプロローグのほうが長いという結果に。ああ、そうそう、一話目で書くべきことを描いていなかった気がするので今回書いておきます。感想、意見、メッセージその他ありましたらよろしくお願いします。ならびに、誤字脱字を万が一見つけられ場合も御指摘お願いします。それではまた。




