第四十話:遠くて近きは男女の仲
第四十話
「驚いた?」
一瞬だけ消えた夕花が現れた。
「……そこまでは驚かなかったな。消えて無くならないって約束したし」
夕暮れを眺めて俺はため息をついた。悪戯娘め……内心かなり焦っちまったぜ。
結局、俺はなんだかんだ言ってユウカの事が好きなのだ。あの時は恥ずかしくて言えなかったし、今もかなり恥ずかしいけど、いつか俺の方から告白したい。
「顔に凄く焦っていますと書いてるよ?」
「んなわけあるか……そんなことより、帰るぞ」
「はーい」
そろそろ夕食の時間だ。
夕花の手を引いて俺は歩き出した。
「冬治君の手は暖かいね」
「夕花の手は言葉では言い表せない感触だな。すべすべしてて、ドキドキする」
好きな女の子だから特別そう感じるんだろう。
「うーん」
「今度はどうした」
「こんな日が長く続いてくれればいいなーって」
「……お、おい、それは何だかいっちゃいけないセリフじゃないか」
「え? そうかな」
「そうだよ。何だかこれからひと波乱起こりそうな感じがするぞ」
夕花は今一つわからないと首をかしげた。
「……わたしに子どもが出来るとか?」
「そういうのだったらいいんだが……」
「よくないよ。冬治君はまだ、学生だもん」
「確かにそうだが……俺のいいたいことは違う。夕花と離れ離れになるとか、夕花が消えるとか……あとは」
「冬治君が浮気するとか?」
「しないってば」
本当かなーと睨まれた。
「本当だよっ」
こんな感じでだらだらと過ごせるのなら、それが一番の幸せのはずだ。
まだまだ、俺と夕花は付き合い始めて日が浅い。お互いの価値観の違いもあるかもしれないし喧嘩して別れそうになる可能性だってある。
そうならないようにするのが一番なんだけれど、もし、そうなってしまっても俺は絶対にあきらめたくない。
「夕花」
「え、何?」
振り向きざまに両肩を掴んで引き寄せる。
「俺はお前が消えたとしても、絶対に現世に引き戻す。天国に行ったならそっちに探しに行って、駄目だったら地獄を探すよ」
「いきなりどうしたの?」
「俺の誓いみたいなもんだ。夕花と一緒に居られるのなら、俺は何だってする」
「……うん、よろしくね」
しばらく見つめ合って、キスをする。
短い間唇を重ねていても相手の気持ちがわかるような気がした。
「あ、そうだ。実は冬治君に見てもらいたい一発ネタがあるんだよ?」
「へぇ」
そういって俺と身体を重ねる夕花。
「腕、四本っ」
「……」
「あれ? 受けなかった?」
「悪い。面白くない」
そっかぁ、それだけいっても夕花は出てこなかった。
「夕花?」
「出られなくなっちゃった。てへっ」
俺と夕花がこの後、富木さんの家を必死に探して駆けこむのはまた別の話である。




