第十七話:未来の事を言えば宇宙人が笑う
第十七話
五月に入り、中間テストが近づいてくる。それと同時に進路調査も本格的になってきた。
「……困ったなぁ」
俺にとっては進路どころではない。このまま卒業まで居るのかどうかわからないのだ。前の学園に戻る可能性もある。NKKに所属している時点で俺は行方不明扱いになっており、そのおかげでこの学園に入り込んだようなものだ。書類も偽造されている。本人が本人になっていると言う凄くややこしくて理解に苦しむ偽造だ。学園の上層部はこの事を知っている。
しかし、俺の担任はこの事を当然知らない。そういうわけで、先生は真剣に俺の進路について訊ねてくる。
進路調査を書き込む隣人を見て、俺は話を振ってみることにした。
「椎子は将来どうするんだ?」
「え? 将来……うーん、もうちょっと胸が大きくなってくれたら嬉しいなぁ」
「お前に聞いた俺が馬鹿だったよ」
「嘘だよ、嘘。軽いジョークだよん」
やれやれ、こいつは将来大物になるに違いないね。
どういった大物になるかは知らないが、将来どうするのかは気になったりする。
「それで、真面目な話どうなんだ?」
「お嫁さんだね。毎晩、旦那さんに……」
「そうか、頑張れよ」
「えー? あたしがお嫁さんっておかしい? ちょっと想像してみてよー」
まとわりついてくるので迎撃しながら考える。
椎子がお嫁さんかぁ……。
――――――
「お帰りなさい、冬治君。今日もお疲れー」
「ただいま」
「冬治君、これから何する? ご飯にする(椎子付き)? お風呂にする(椎子付き)? 椎子にする(椎子不在)?」
「肝心な物に肝心な奴がいない気がする」
「気のせいだよ。んもー、あたし選んじゃうなんて……冬治君も本当に好きなんだから」
「そこまで言われたら選べないな……じゃあ、ご飯で」
「ちぇー、やっぱりそうか。ま、いいけどね……何故なら裸エプロンつきなんだからっ」
「……お、おい、ご飯食うのに裸エプロンなんてされたら……」
「はい、エプロン」
「え、俺が?」
「うん。男の人は裸エプロンが好きなんでしょ?」
「……ご飯はいいや。風呂に入る」
「今なら椎子も付いてきちゃうぞ?」
「この前一緒に入ろうとして石鹸で滑って転んで大変な目に遭っただろう?」
「う、うう……そうだったね。このアパートのお風呂、狭いしなぁ……二人はきついもんね」
「だな」
「じゃあ、お風呂も無しだね? まさか消去法であたしとのあれやこれが一番に来るなんて……やっぱり冬治君、あたしの事好きなんだ?」
「好きじゃなかったら結婚してないだろ」
「……本当は身体が目的だったとか?」
「身体ねぇ……その、椎子。元気出せよ」
「そんなに残念そうな目で見ないでっ。冬治君がもっと揉んでくれないからだよっ」
「……揉んでも微々たる成長だろうなぁ」
「え、何か言った?」
「笑顔で包丁取り出すの辞めてくれ」
――――――
「おーい?」
「……退屈はしないだろうけど、家に帰ってきてこのテンション持続してたらきっついかもしれないな」
「?」
俺と椎子が話していると先生がやってきた。
「間山さんに夢川君は進路、決まったかい?」
「俺はまだ……」
「はいっ。専業主婦になって子どもは二人ぐらい生む予定ですっ。冬治君は二人ぐらい生む?」
「生まないよ……でも、子どもは三人ぐらいかな」
「じゃ、三人産みます。子どもたちがある程度大きくなったらパートに出て夫を経済面でも支えていきます」
おいおい、いくらなんでもそんな具体的な話を先生に話してもだな……。
そう言おうとしたら先生はしきりに頷いている。
「みんなも聞いたか? 間山さんはしっかりと将来を考えている。これこれこうやってー……と、ちゃんと計画する事がまずは大切だ。未来がわかる奴なんていない。だから、こうであってほしい、こうしたいという自分の願いや希望は思い描く事が出来る。あとは、それを自分で実現しようとする努力だ。周りに流されて自分の将来を決めた奴は他人がうらやむ環境に居てもどこか元気がなくなるもんだ」
久しぶりに先生が生き生きとした表情で教壇に立っている。心なしか、生徒達も真面目に聞いているようだ。
「……椎子って案外凄いんだな」
「え? やだなぁ、冬治君ってば……最初っからそうだよ?」
「そうだったかな」
下ネタ連発していたような気がするが……。
「そういえば、最近あまり下ネタ言わなくなったような気がする」
「それは……」
椎子が答えようとしたとき、先生が近づいてきた。
「それじゃあ、間山さん。その未来を実現するために今やる必要な事ってあるかい?」
「え、はい。今実践中です。恥ずかしくて、言えませんけど」
椎子が恥ずかしいなんて言葉を使うとは……俺以外のクラスメートは唖然として彼女を見ていた。
先生も例外ではなく、凄く感心していた。
「みんな、見たか? 進路を真面目に考えれば間山さんのように信じられない成長を見せてくれる」
本当にどうしちまったのだろうか。
俺は以前より楽しそうな椎子の顔を見て首をかしげるのであった。




