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第十五話:脂に画き、氷に鏤む

第十五話

 休み時間の間にトイレでも言っておこうと廊下に出る。

「お」

 奥に歩いていく女子の頭に黒子の面をつけていた。廊下で見かけてもどこでみかけても一発でわかるような目印だ。

 他の女子生徒が驚かないのは三年が単純に恵理奈の黒子の面に慣れてしまったからだろう。一年生の中には驚く人もいそうだ。

「おーい、恵理奈」

「あ、夢川君」

 ちょっとは嬉しい顔をしてくれているのだろうか。俺の声に気付いて振り向いてくれた恵理奈の顔は見えてないが、嬉しそうだった。

「お姉ちゃん見ませんでした? あの人、わたしの辞書勝手に持って行ったみたいなんですっ。黙って持って行くなんて信じられませんっ」

「お、怒ってたのか」

「はいっ、お姉ちゃんに対してですけどっ」

 どうやら、俺に恵理奈の表情を判別するのは無理らしいな。滅茶苦茶怒って居らっしゃる。

「椎子か……いや、知らないなぁ」

「知らないってわけはないでしょう? 隣に座ってますし」

「そうだけどさ」

「だったら、知ってますよね? お姉ちゃんをかばっているんですか? わたしたち、友達だってこの前言っていましたけど? あの言葉、早速反故にする気ですね? そうなんですね? 男の人って信じられないって富木さんが言っていましたけれど本当に信じられないんですねっ」

 普段は大人しい感じの女の子なのに姉である椎子の名前が出たり、絡んでくると態度を豹変させるようだ。

 三秒でセリフを言い終えてなお、彼女の瞳は猛禽類のような鋭さを湛えている。

「わかった、わかったよ。椎子を見つけたら言っておくよ」

「あまり信じられません」

「俺にどうしろと?」

「友達ならわかっていますよね」

 一体、どういう事をさせられるのだろうか……まさか、何か人質にとられるとかか?

 戦々恐々としながら待っていると恵理奈はスマホを取りだした。

 まさか、それで恥ずかしい写メを撮る気なのだろうか?

「友達だったら、メルアドぐらい交換しているはずですっ。まだしてませんよ」

「……あ、ああ、そうだな」

 俺はほっと胸をなでおろすのであった。

 友達だから……というわけでもない。人から信頼を得るのはとても大変な事なのだ。今は恵理奈の言う事を聞いておいた方がいいだろう。俺は教室に居た椎子に辞書を返すように言うとあっさりと返しに行ってくれた。

 少し時間が経って椎子が戻ってくるとちょうどチャイムが鳴り響いた。

 誰ひとり騒ぐ者がおらず、滞りなく授業が進められていく。昼下がりだったら寝ていただろうなぁ……。

 先生が黒板に問題を書いてクラスを見渡す。

「……では、この問題を解いてくれる人はいますか」

「はい」

 椎子が手をあげた事にクラス全員が驚いていた。

 一番驚いていたのは先生で、目を白黒させている。

「あ、え、えっと、では間山さん、どうぞ」

「……せんせー、隣の人があたしのおっぱい揉んできます」

「ぶっ……お前いきなり何言ってんだっ」

 椎子は機嫌が悪くなると(滅多にないが)人に当たるタイプである。

 どうやら、恵理奈に辞書を返しに行った時に何か言われたようだな。

「間山さん……夢川君はそのような人ではありませんよ」

「そうですか?」

「ええ、友達思いの優しい子です。ですよね、皆さん」

「はい」

 普段からちゃらんぽらんな椎子とは違って、俺はそれなりにクラスの為に頑張っている。普段はあまり評価されていないとしても、こういう有事の時に助けてもらえるのだ。

「……授業中でもそんなことするんだ。怖い……」

 富木さんが怯えた目で見てくるのはいつもの事だ。評価零どころかマイナスである。

 授業が終わって椎子から逃げるように廊下に出ると恵理奈がちょうど教室から出てくるところだった。

「あ、夢川君」

「なぁ、恵理奈」

「何ですか?」

「お前さん、椎子に何か言わなかったか?」

 辞書を返しに行くまでは至って普通だった。つまり、行って帰ってくる間に会った人物から何か言われたと言う事だ。

「えーと……?」

 しばらく顎に指を当てて恵理奈は考えている。

 そして、軽く手を叩いた。

「ああ、お姉ちゃんに対して言いましたよ」

「辞書の事、結構きつく言ったんだろ? 機嫌が悪かった」

「一言言っただけです」

「本当か?」

「はい、夢川君はわたしの友達ですから気易く話しかけないで下さいって」

「……」

 何だか、話が変な方向に行っていないか? 電話番号とか交換したの、今日だぞ。

 ふと、背後から音がしたので振り返ると頭半分だけ出してこっちを睨んでいる椎子がいた。

「あれ? お姉ちゃん?」

「冬治君酷くない?」

 教室から出てきた椎子は機嫌の悪そうな顔をしている。

「何がだ」

「あたしのこと、見た目どころか、身体も全く魅力のない子だって恵理奈に言ったそうだね」

「言ってない言ってない」

「え? じゃあ、夢川君はお姉ちゃんみたいな人が好みなんですか? この前はわたしのほうが好きだって言ってませんでした?」

 何だ、この修羅場みたいな雰囲気は……。

「それは大人しい子がどっちかというと好きってだけで……」

「やっぱり、冬治君はあたしの事、嫌いなんだ」

 誰か助けてっ。


『救済してやろうぞ』



 おおっ、俺が困っているところを神様は見逃していなかった。ちゃんと、タイミング良く教室から女子生徒を出してくれたのだ。

「あ」

 富木さんが俺たち三人を見ている。すごく、怯えた目だが……この際、藁にもすがってやるさ。

「助けて、富木さんっ」

「きゃっ、怖いっ」

 そういって教室の中へと入ってしまった。

「夢川君っ」

「冬治君っ」

「きゃっ、怖いっ」

「逃げられると思ってるの?」

「はっきりさせてくださいっ。どっちが友達なんですかっ」

 そういって俺も教室の中へ逃げようとするが、すぐさま両肩を掴まれるのであった……その後の記憶があまり残っていない。


もうこの時点で何気に気になるあの子と透明人間、書き終わってます。詳細は作者の活動報告で。さて、十五話ですね。今回はいつもより見直している回数が多いので誤字脱字も雨月の他の作品に比べてびっくりするほど、少ないかと思います。頑張ろう、推考。アップテンポが全くないように心掛けていますのでゆるーく読めるかな……おもしろくなかったら作者の文章力の無さの所為ですがね。本当は読者がいるから文を書くんじゃなくて文章書くのが楽しいから何かしら物語を考えて頭から現実に文章として具現化させるんですよね。偉そうなことを言っていますがやはり、読者数って言うのは気になるもので、評価も気になるもんですよ。さて、原点に帰るとき気をつけなくてはいけないことがあります。私は何で小説を書いているんだろう、こうやって自分探しをし始めると非常に危ない。見つけられなかったら大体、その人は辞めてしまうんですよ。意味を見いだせなくてそれを負担だと思ってしまう。勝負に出ない人間は、こうなりませんがね。ここで文を書いて五年以上……一度たりとも結末を考えてから作品に取り掛かった事はないですし、誤字脱字ばかりの小説とも呼べない代物を投稿してきました。そろそろ私も本気を出して一作考えてみようかなと思います。

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