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第十四話:清濁併せ呑む

第十四話

 三年になっても未だに漠然としている点がある。なので、俺は由乃にあることを聞いてみた。

「なぁ」

「何?」

「羽津女学園で俺がやるべき事って人外の存在を探すんだよな?」

「そうよ」

「……人外ってそもそも何だ?」

 人外を探すように言われて女学園へと俺は転校……ということになったわけだ。人外というのが今一、わからなかったので適当に頷いた結果がこれだ。

 小学生に動物園でジラフを写真に撮ってきてと頼んだら首をかしげられた事があった。ちゃんとした説明が必要である。

「……あんたね、わからないところがあったらすぐに聞くのが常識よ? 学校じゃあるまいし、義務を怠るなんて馬鹿じゃないの?」

 正論なので黙って聞いておくことにする。反論したりすると由乃はヒートアップして口を動かすだけではなく、手も追加されて悲惨な結果を招くのだ。

「俺が全面的に悪かった」

「ののの屋のクレープね」

 其処で何故、甘いもんが出てくるかは知らん。しかし、歩み寄ってくれている? のだ。ここで知るかよと言っても結局は俺を財布として連れて行く。

 捕まえるときはある程度弱らせるもんだって言うもんな。由乃も俺をある程度痛めつけて連れて行くのだ。この前もお店の人から『何あれ? 浮気がばれて手ひどい目に遭わせられたのかしら』と言われた事がある。

「返事は?」

「わかりました……」

 くそう……今月、ちょいと厳しいんだよなぁ。まぁ、ミスは俺の責任だし仕方のない事だが。

「それで、人外の説明は?」

「人外って言うのは定義的に難しいんだけれど人間以外ね。つまり、見た目は人間でも、特殊な能力を持っているのならNKKでは人外としてる。もちろん、人間の姿をしていなかったり九割が水でできている……あとは自然に干渉できるような人間も人外というわけね」

「自然に干渉できるってそれ神様じゃね……」

 神の怒りを思いしれーって神なり落とすおじいさんを想像してしまった。

「何よ?」

「いいや、何でもない」

 そういえば、目の前にも俺が失敗したら雷落とす人がいるなぁ。

「ま、見る人によっては自然を扱う人間は神様ね。日本は神様が多いから何とも言えないけど……私もこれらの人達は資料でしか見た事がないわ」

「そっか、それはよかったぜ。うようよいたら怖くて外出歩けなくなる。もっと人間社会に潜んでいそうな人外はどういうのがあるんだ?」

「狼人間、吸血鬼ってところね」

 その二つなら俺も見た事がある。両者ともに戦闘能力が非常に高い。お前ら西洋のモンスターだろと言う突っ込みを入れたいもんだ。

「ま、挙動が怪しいような人間を見つけたら調査して」

「ああ、わかった」

「せいぜい、気をつけることね。狼人間の中には正体がばれると襲いかかってくるような奴もいるから」

 俺をおどかすように笑っていたので少しだけ仕返ししようと思う。

「なぁ、それなら幽霊は……」

「幽霊なんていないわ。あれは、透明人間よ!」

「そ、そうか……」

 凄い剣幕で迫られた。じゃあ、あいつを調査したらどうだと言いたかったが、何も言えなくなってしまった。

 両肩を痛いほど掴まれていたのでやんわりと押し返す。

「……あのさ、その人外を見つけて、由乃に報告したら……どうなるんだ?」

「言ったでしょ、五百万約束通り払うわよ」

 べらぼうな金額である。俺はまだ学園生なのにこれほどの額をもらえるなんてなぁ……貯金しとくべきだが。

 しかし、今は金より聞きたい事があった。

「金の話じゃないよ。その、人外がどうなるか、だよ」

「危険と判断したら除去するわ」

「除去って……」

「だって、そうでしょう? リスクを内包している連中が人間と一緒に生活するなんて危ないもの。単純に我を失って腕を振り回しただけで大惨事ね」

 それが正しいのだと由乃は信じて疑っていないようだ。ユウカはセーフか?

「……そうか」

「そうよ。何か問題でも?」

「いや、由乃がそう思うのは何だか悲しくってな」

「はぁ?」

「由乃だって吸血鬼だ。我を失って腕を振り回したら危険だ。それでも俺は……ぐっ」

 突如、由乃が俺の首を絞めそのまま持ち上げはじめた。

「うぐぐ……由乃、いきなりどうした? プロレスごっこか?」

「……冬治、あたしは吸血鬼よ。あんたがどんなに力を入れても振りほどけないでしょう?」

「それがどうしたんだ?」

 苦しいながらも俺は声を振り絞って下から睨みつけてくる吸血鬼を笑ってやった。

「……このまま、首を折ることだって簡単な事よ?」

「何が言いたいのかさっぱりわかんな、げほっ」

「人外の調査は命じたけれど、深入りはしないと約束しなさい。じゃないとここで……」

 かなり凄まれた。美人が凄むと怖いと言うが、由乃はまだまだだ。

「お前がそんな事、出来るわけないだろう? やれるんならやってみろよ。その代わり、ののの屋のクレープを俺の奢りで食えなくな……うぐっ」

 そこまでいって意識が飛びそうになった。

 しかし、今度は尻もちをついて由乃の部屋に意識が戻ってきている。

「げほげほ……少しは手加減しろよ」

「あのね、冬治。あんた……」

「ほら、ののの屋に行こうぜ? 話ならそこで聞く」

 由乃の手を引いて俺は廊下に出るのだった。

 その手は、人間と違って何処か冷たい。

「俺には由乃がいるよ。助けてくれるって信じてる」

「……馬ぁ鹿、いつか襲われても知らないんだから」

 聞こえてくる声には温かさがこもっていた。


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