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2-3

「再会と新たな出会いを祝して!」


 じいさんに続いて掲げたグラスに口を付ける、とカリンがゴフッ!と派手にむせた。


「おや、大丈夫ですかな?」

「気を付けろ。濃い酒は久々だったんだろ」


 二人に声をかけられたカリンはむせながらも「大丈夫」と首を振ると、「スープを取ってくる」と軽くせき込みながら立ち上がった。


「俺のも頼む。で、じいさん」

「はて、なんでしょう、中尉殿?」


 人を食ったような顔でとぼけたように酒を煽る老人に、ロイもグラスを飲み干してから身を乗り出した。


「あんたが見返りもなく人に酒を驕るわけがない。何を抱えてる」

「さすがは中尉殿。まずは明日、ギルドの定期便輸送が一件。まぁ、こっちは小物ですな。ところで保安官事務所には?」

「いや? つい一時間前についたばかりだ。詳しく……」

「はい、お待たせ。どうしたの?」


 二人の間に豆のスープと固そうなパンを置いたカリンが不思議そうな顔で首をかしげる。

 が、男たちは何事もなかったかのように乗り出していた体勢を整えて座りなおした。


「ねぇ?」

「いいから座って食え。冷めたら食えたもんじゃないぞ」


 そう言って、自身の前に置かれた皿からスープをすするロイに、カリンは肩を竦めて見せた。


「なんなの? もうっ……!」

「まあまあ、カリンさん。それより、今夜のお宿はもうお決まりですかな?」

「いえ、つい一時間前にこの街に入ったばかりで。 ……あー、いい宿があるの?」


 ロイの態度に頬を膨らませながら、カリンもスープを口に運び……なんとも言い難い表情でスプーンを置いてから小首をかしげて見せた。


「もちろん! バッチ付きだけが利用できる一番の宿ですよ」

「ギルドの?」


 じいさんが頷き、ポンチョに止められ、キラキラと光を放つバッチに視線を向ける。


「勿論! 老婆心かもしれませんが、初めて行く街ではギルドの印付き以外は避けろ。は鉄則ですからな。 ときにお嬢さん、ギルドの設立経緯はご存じかな?」


 じいさんが再び人差し指を上げて微笑み、再び琥珀色の液体で満たされたグラスを傾ける。


「ええ。話では」

「素晴らしい! 旧大陸でのギルドの設立背景には、冒険者や傭兵たちを組織立てて秩序を守ろうとした意図がありましてな。しかし、新大陸においては、もっと現実的な理由があります」


 一気に話し終えるとじいさんはグラスの中の液体を飲み干して、溜息を吐き出した。


「独立戦争以前は開拓者の寄合的な面が強かったようですが、今では広大なフロンティアの開拓や守備のため、支所を連携させて情報の共有。ウィスキー反乱以降は連邦保安局の覚えもめでたく、住民を守る体制を整えとります」

「安全な宿、物資の流通、依頼の仲介。この、新大陸でギルドが行っている役割はざっとこんなもんですな」


 一人で誰にともなく垂れ流される情報にカリンは意を決して食べ勧めていた豆のスープから再び顔をあげた。


「おじいさん?」


 顔を赤らめ、グラスを片手に上機嫌で豪快に笑うじいさんに、カリンは小さく首を傾げ……自前の大きなナイフで、革のように固い白パンを削るようにしていたロイを肘でつついた。


「ねぇ、おじいさん飲み過ぎなんじゃ?」


 ロイは苦労して削り取ったパンを、まるでビーフジャーキーの様に強引に咬みちぎり、じいさんにちらりと目を向けてから首を振った。


「まぁ、じいさんにはよくあることだ。素面でいる方が珍しい」


 「昔からな」と言い添えて立ち上がると、ロイは懐からクリップ止めされた札束を取り出すと半分を差し出した。


「お前に五枚、俺に五枚だ」


 カリンが受け取って頷くと、ロイは踵を返して歩き出す。


「えっ? ちょっと、おじいさんは?」

「見ててやってくれ」


 手元のスープとじいさんを相互に見ながら問いかけたカリンに、ロイは振り返りもせずに歩き去る。


「ねぇ、ちょっと! ここは満室でしょ? 宿はどうするの!? もうっ!」


 背後から投げかけられる悲鳴に近い非難の声を無視し、報酬の臭いを嗅ぎつけて寄ってくる娼婦をあしらいながら、ロイはサルーンの扉を開けて強いフロンティアの日差しに身をさらした。

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