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何処までも続く乾いた草原。
その中を一本切り裂くように赤い土が顔をのぞかせた道に荷馬車が揺れる。
視界を360°回してもどこまでも続く何の変哲もないグレートプレーンズの草原は、きっと世界は平たいのだろう。と思わせる力があるようだった。
「ギルドの定期便って大変だよね」
「ははっ! まぁ、あんたらにゃありがたい仕事だろうがよ」
フロンティア全体。いや、北新大陸の全土を覆う冒険者ギルドの支所から上納金や依頼の報告書を集める定期便。
そんな役割の割に口の軽いギルドの荷馬車を操る御者が、前方で馬を駆っている男の背中に視線を向けた。
「もう二日目だってのに随分と愛想が悪いじゃねぇか、なぁ?」
「まぁ、お友達が多いタイプではなさそう、かな?」
ガタガタという馬車の騒音の中で聞こえるか聞こえないか程度の陰口に、フロンティアの強い日差しを受けてキラキラと輝くシルバーブロンドをたなびかせた少女、カリンがどうにもばつが悪そうに答えた。
「それで、嬢ちゃんはなんだって冒険者なんてやってんだ? その器量なら親父さんがさっさと嫁にやっちまいそうなもんだがよ」
御者は何の気なしに問いかけるが、カリンは困ったように形の良い眉を顰める。
「あー、その、父は私が生まれる前に戦死してて……」
「おっと、すまねぇな。南か?」
「うん。でもー」
「見えたぞ」
カリンの言葉を遮る様に、先頭で馬を駆っていた男。ロイが小高い丘の上から振り返って二人に声をかけた。
「え?」
「そうか! それに……よしっ、なんとか間に合ったな!」
カリンは反射的に前方に目を向けるが、見えたのは遠く丘の向こうにぼんやりと姿を現した街の影だった。
「あそこが目的地? ついたってこと?」
カリンが馬を早歩きにさせ、ロイに追いついて声をかける。
だが、ロイは答えることなく、進行方向に遠く見える賑やかそうな街ではなく周囲へ油断なく視線を回す。
「ねぇってばっ……どうしたの?」
ロイが渋い顔で微かに視線を向けた先に、カリンも目を凝らす。
草むらに転がるのは、野生動物にやられたであろう家畜の死骸だった。
「牛の死体……? かわいそうに狼にでもやられたみたいね」
「そうだな」
それだけ言うとさっさと行ってしまうロイの背中に「もうっ!」と口をとがらせながら、カリンは再び定位置である荷馬車の側面に戻ったのだった。




