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数時間後。
「証は?」
マスターの問いかけに応える代わりに、少女は鼻を鳴らしながら自信満々にカウンターへ麻袋を置いた。
「こいつは驚いた。あんたぁ坊やじゃなくて嬢ちゃんだったか」
言いながらも鮮血の滴る麻袋を引き取ったマスターはグラスを二つカウンターに置き、その中へ酒を注ぐ。
「ええ。でも、北部じゃ珍しくもないんでしょ?『パパ』に聞いたの」
グッと酒を煽り……隣で同じくグラスを持った男に悪戯に微笑みながら小首をかしげて見せた。
「そりゃぁそうだがよ、アンタみたいに別嬪で若いヤツは別だろうが」
黙ってグラスを煽る男の代わりにマスターが応え、カウンターに札束を置いた。
「で、どうする? 言っとくがな、決闘なら外でやってくれよ?」
その言葉に再び首をかしげる少女に代わり、男はグラスをカウンターに置きながら札束を少女のほうに押しやった。
「アンタがそれでいいならいいがよ。取りな、嬢ちゃん」
「あなたの分は?」
「……次の定期便は?」
「表にいたろ? アンタを待ってもらってたんだ。すぐにでも出発してえだろうぜ」
札束を受け取って半分を差し出す少女に応えず、男はカウンターから立ち上がる。
「待って! 冒険者ギルドの定期便の護衛でしょ! 私も行く」
「待ちな、二人とも!」
店を去ろうとする男と、慌てて後を追う少女の背中にマスターが声をかけた。
「嬢ちゃんのバッチの登録番号は控えたが、名前を記入しなきゃ報告できねぇぞ」
「カリン! カリン・オハラ!」
冒険者ギルドの書式にのっとった書類をひらひらと振るマスターへ元気よく答え、ポンチョを翻しながらスウィングドアを蹴り開けてサルーンから飛び出した。
「アンタも護衛かい? さっさと登録番号と名前をくれよ。汽車に遅れるぜ」
店の前で待機していた冒険者ギルドの紋章が描かれた荷馬車の御者が、咬みタバコを道へ吐き出しながら憮然とした態度と表情で声をかけてきた。
「ああ、悪いな。 で、カレン?」
「ううん、カリン。 Karin、でカリン」
サルーンの前へ馬を繋いでいた手綱を解き放ちながら少女が答え、御者は頷くと鞄から取り出した書類へ記入した。
「で、アンタは?」
「ロイだ。ロイ・フレミング」
馬の上から応えた男に少女は小さく微笑んだ。
「これでお互い名無しとはお別れね」
「OK、控えた。出発するぞ! 日が沈んじまう」
荷馬車の御者が馬を出発させ、二人もその後を追いかけるように馬を操る。
小さな開拓村には、まだ高い太陽に追い立てられるように長く伸びる影だけが残るのだった。
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