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「……違う! 群れだ!」
森を割り、積雪を爆発させながら躍り出たのは、一頭や二頭ではなかった。
体高は馬の肩並み、頭部から長い首にかけて羽根もない興奮した巨大な怪鳥の群れ。
七面鳥などという生易しいものではない、フロンティアの悪夢「ターキー鳥の狂乱集団」だ。
三股の太い脚が凍土を叩きつけるたび、地響きが激しく足裏を揺らす。 先頭の一頭が、血に濡れた鋸歯状の嘴をカッと開かれ、耳を刺す高周波の狂吼を上げた。
「ひっ!?」
「カリン! 狙いは胸元だ!」
ロイが吼えるのとほぼ同時に、右手のライフルが火を吐いた。
放たれたライフル弾が、最前列を走る巨鳥の羽根の間を正確に撃ち抜いた。
巨体が前傾姿勢のまま雪原を滑り、後続の2頭を巻き込んで盛大に転倒した。
「相変わらず黄金を握っているわね!(Avoir de l'or dans les mains )!」
ジャクリーヌの涼やかな声が重なる。
メルトンウールの裾を翻した彼女のカービン銃から、寸分の狂いもなく吐き出された連続の火花。
狙撃されたターキー鳥の太い脚関節が打ち砕かれ、凄まじい悲鳴とともに雪煙の中へともつれ込んだ。
流れるようなコッキング、無駄のない排莢。
ギャンブル中毒のヤブ医者という触れ込みとは裏腹に、その立ち回りは熟練のガンファイターそのものだった。
「こんなの七面鳥じゃないでしょ?!」
馬車の屋根に這い上がったカリンが、半狂乱になりながらライフルを構える。
一頭の巨体が雪を跳ね上げ、鋭い爪を剥き出しにして馬車へ飛びかかろうと跳躍した。 カリンは風圧と飛んでくる羽根に目をつぶりそうになるのを必死でこらえ、トリガーを引き込む。
乾いた銃声。
弾丸は巨鳥の胸肉を掠め、鮮血をまき散らしてバランスを崩したターキー鳥は車輪の目と鼻の先に激突して転がった。
「ナイスショット、カリンさん! でも目線は下げないで、次が来るわよ!」
「……っ! んのっ!」
寒風を裂く弾丸の悲鳴と、硝煙の臭い。
ロイは淡々とレバーを操作し、薬莢を吐き出し、迫る巨躯の胸部を的確に狩り続けていく。
「ドクトル! 左の木立から回り込んでくるやつを抑えろ!」
「言われなくても! 私の可愛い商売道具に傷をつけさせはしないわ!」
ジャクリーヌが懐から取り出したのは、二連銃身のショットガンだった。
重厚な金属音が響き、至近距離まで迫ったターキー鳥の喉元を吹き飛ばす。
肉片と羽が舞い、返り血が彼女のシルバーブロンドの髪と白い頬に一筋散った。だが、その青い瞳は冷徹な勝負師の彩りを失わない。
どれほどの時間が過ぎただろうか?
数十回に及ぶ絶え間ない銃撃の末、最後の1頭がロイの放った一撃に肺を撃ち抜かれ、重い音を立てて雪の上に崩れ落ちたのだった。




