7-1
お嬢様と分かれて数か月、季節はすっかり移り変わり、フロンティアにも厳しい冬が訪れる。
寒風が吹きすさぶどこまでも続く平野は、どこかもの悲しさを感じさせるようだった。
変わらず二人はギルドの定期便の護衛を受けながら、フロンティアを転々と旅していた。
州境を何度も越えて、地域ごとのさまざまな依頼をこなす日々。
数か月の共同生活でそんな生活にも慣れ、こなれた様子で馬に揺られるカリンが、白い息を吐きながら隣を行くロイに声をかけた。
「それで、今度は何なの? ゴブリン? それとも、何か珍しい仕事?」
トレードマークのポンチョの下に真新しい厚いコートを着込み、革製の手袋をもみながらカリンは器用に手綱を操る。
「ターキー鳥狩りだ」
「七面鳥? ふふっ、感謝祭の時期だもんね。でも、七面鳥ってあれでしょ、走るのがとろいわりにすごい声で鳴く……」
「南部の七面鳥じゃない。ターキー鳥だ……まぁ、すぐにわかる」
葉巻でもくわえているように白い息を吐き出しながら、ロイはそう呟くと馬を止めて目を細めた。
「なに、どうしたの?」
「いや……」
しばし黙りこみ、眉をしかめながらロイは前方をじっと見つめる。
その視線の先には、天井にバネで吊るされた歯の看板がぶら下がった、特徴的な外観の馬車が止まっており、付近で火も炊かれている。
「歯医者さん? ちょうどいいから、一緒にお昼ご飯にしちゃおっか?」
「迂回するぞ」
「ちょ、ちょっと!?」
突然馬の方向を変えたロイに続いて、カリンが慌てて手綱を操作する。
「なに、そんなに嫌いなの? 歯医者さん」
「いや、会いたくない顔が見えただけだ」
珍しく焦ったような顔でいい、馬を早足にさせる。
だが馬車の方向から、高く澄んだ口笛が聞こえた。
と、思うと馬の耳がぴくっと反応する。
「……クソッ」
踵を返そうとしていた愛馬は、まるで指示を無視するようにハミを噛んで元の進行方向へと戻ってしまう。
いうことを聞かない愛馬にロイは悪態をつき、天を仰いだ。
カリンはそんな姿にただ疑問符を浮かべて首をかしげたのだった。




