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6-8

 深夜の墓場にまったく似つかわしくない騒乱が続いていた。

 うめき声をあげ、腐った皮膚を剥がしながら動く死体たちは、墓地の中をふらついていたが、騒ぎに誘われるようにじわじわと外周へと広がっていった。


「逃がすなよ! この数が近隣に散らばってみろ手に負えんぞ」


 ロイはガンベルトから弾丸を引き抜き、リボルバーを二つ折りにして素早く空のシリンダーに弾を込めた。

 装填が終わらぬうちに死体が迫るが、ロイはそいつを蹴り飛ばし、即座に腐った頭を踏み潰した。ブーツ越しに広がる不快な感触に、舌打ちが漏れる。


「ロイ! こっちに集まってる!」


 墓地の中を彷徨っていた死体たちは、境界をたどって唯一の開口部……入口へとふらふら集まり始めていた。


「お嬢様! お下がりを!」

「いいえ、今はおのおのが自ら身を守るべきですわ」


 着剣したライフルで死体の額を刺し貫いたハリーの傍らに手を伸ばしてきた別の死者の頭を撃ち抜き、シャーロットは冷静に微笑んで見せた。

 そうして装填を終えたカリンと並び立つと、二人は息を合わせたかのように真っすぐに利き腕を伸ばした。

 パンッ

 銃声が一つに聞こえるほど同じタイミングで飛び出した弾丸は、先頭集団の脳天をそれぞれ貫いた。


「ナイスショット」

「そちらこそ」


 二人は短く言葉を交わすと、すぐに次の敵へと狙いを定めた。

 墓地の入り口で繰り広げられる光景に、場違いだと知りつつもロイは小さく微笑んだ。


「楽しそうですね」

「俺がか?」

「いえ。あんなに楽しそうなお嬢様は、私も初めて見ました」

「……そいつは結構だな」


 ロイもニヤリと笑みを浮かべた。


「で、この騒ぎはいつになったら終わるんだ? 日が昇るまでとは言ってくれるな……よ!」


 ロイは背後から気配を殺して近寄ってきた人影に、反射的に銃口を向けた。

 だが、その影達は震えながら声を上げる。


「う、撃たないでくれ!」

「お前ら何してる……」


 ロイは銃口を向けたまま、一瞬考えこむと溜息をつき、若者たちの背後から歩き寄ってきた死者を仕留めて、ぽつりと呟いた。


「上でじっとしているように、言われたはずですよね?」


 エミリーがまるで幼い子供たちへ言い聞かせるように指を立てるが、若者たちは震えながら首を振った。


「お、俺達アンタらを手伝おうと思って」

「こんなはずじゃなかったんだ!」

「……こいつら人を襲い始めて! 術者の命令に従うはずなのに!」


 口々にこんなはずではなかったと涙交じりに告げる若者たちに、ロイは立てかけてあったエミリーのレバーアクションライフルのスリングに足を引っかけて蹴り渡した。


「お前らに内戦は遠い話だろうが、北国雁ノースガンくらい撃ったことあるだろう? とりあえずそれで十分だ」

「あ、ああ」

「弾はそちらに」


 震えながらも頷いた青年に、エミリーは自分のサドルバッグを示しつつ、背後から迫っていた死者を冷静に撃ち抜いた。


「あとの三人、柵を超えて入り口に回れ。 装填くらいは手伝ってもらうぞ」

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