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深夜の墓場にまったく似つかわしくない騒乱が続いていた。
うめき声をあげ、腐った皮膚を剥がしながら動く死体たちは、墓地の中をふらついていたが、騒ぎに誘われるようにじわじわと外周へと広がっていった。
「逃がすなよ! この数が近隣に散らばってみろ手に負えんぞ」
ロイはガンベルトから弾丸を引き抜き、リボルバーを二つ折りにして素早く空のシリンダーに弾を込めた。
装填が終わらぬうちに死体が迫るが、ロイはそいつを蹴り飛ばし、即座に腐った頭を踏み潰した。ブーツ越しに広がる不快な感触に、舌打ちが漏れる。
「ロイ! こっちに集まってる!」
墓地の中を彷徨っていた死体たちは、境界をたどって唯一の開口部……入口へとふらふら集まり始めていた。
「お嬢様! お下がりを!」
「いいえ、今はおのおのが自ら身を守るべきですわ」
着剣したライフルで死体の額を刺し貫いたハリーの傍らに手を伸ばしてきた別の死者の頭を撃ち抜き、シャーロットは冷静に微笑んで見せた。
そうして装填を終えたカリンと並び立つと、二人は息を合わせたかのように真っすぐに利き腕を伸ばした。
パンッ
銃声が一つに聞こえるほど同じタイミングで飛び出した弾丸は、先頭集団の脳天をそれぞれ貫いた。
「ナイスショット」
「そちらこそ」
二人は短く言葉を交わすと、すぐに次の敵へと狙いを定めた。
墓地の入り口で繰り広げられる光景に、場違いだと知りつつもロイは小さく微笑んだ。
「楽しそうですね」
「俺がか?」
「いえ。あんなに楽しそうなお嬢様は、私も初めて見ました」
「……そいつは結構だな」
ロイもニヤリと笑みを浮かべた。
「で、この騒ぎはいつになったら終わるんだ? 日が昇るまでとは言ってくれるな……よ!」
ロイは背後から気配を殺して近寄ってきた人影に、反射的に銃口を向けた。
だが、その影達は震えながら声を上げる。
「う、撃たないでくれ!」
「お前ら何してる……」
ロイは銃口を向けたまま、一瞬考えこむと溜息をつき、若者たちの背後から歩き寄ってきた死者を仕留めて、ぽつりと呟いた。
「上でじっとしているように、言われたはずですよね?」
エミリーがまるで幼い子供たちへ言い聞かせるように指を立てるが、若者たちは震えながら首を振った。
「お、俺達アンタらを手伝おうと思って」
「こんなはずじゃなかったんだ!」
「……こいつら人を襲い始めて! 術者の命令に従うはずなのに!」
口々にこんなはずではなかったと涙交じりに告げる若者たちに、ロイは立てかけてあったエミリーのレバーアクションライフルのスリングに足を引っかけて蹴り渡した。
「お前らに内戦は遠い話だろうが、北国雁くらい撃ったことあるだろう? とりあえずそれで十分だ」
「あ、ああ」
「弾はそちらに」
震えながらも頷いた青年に、エミリーは自分のサドルバッグを示しつつ、背後から迫っていた死者を冷静に撃ち抜いた。
「あとの三人、柵を超えて入り口に回れ。 装填くらいは手伝ってもらうぞ」




