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……意識がふわふわと安定しない。
なのに、驚愕して倒れていく男の顔だけがやけにリアルで……
次の瞬間映るのは、同じように驚愕した瞳を見開いたまま血だまりに倒れる男の顔。
足がすくみ恐怖に心臓が握り潰される。
そうしてよく見ると東洋人の顔だった倒れている人物の顔が……
「ハッ!! はぁはぁっ……」
カリンがベッドから飛び起きると薄いシーツが肩から滑り落ちた。
「夢……」
心臓が早鐘の様に打ち、両手がぶるぶると震える。
「大丈夫か?」
ベッドサイドに座っていたロイがランプに火をつけた。
「う、うん……」
「うなされていたぞ」
疲労の色が濃い瞳に僅かに心配の色を浮かべながら、ロイが備品の水差しから水をカップに注いだ。
「ありがと」
そう言ってカップを受けとったカリンはコクコクと勢いよく飲み干してしまう。
「……人を撃ったのは初めてだな?」
「……うん」
カリンがそういうと、ロイは改めて身体を椅子に預けるように腰掛けた。
「だれでもそうなる。今夜はそのまま寝ていけ」
ぶっきらぼうにそう言うと、ロイはカリンに視線を送り……ランプの明かりの下で再び本を開いた。
「それ、何度くらい読んでるの?」
「……さあ。数えてないな」
「私ね。お母さんと農場をやってたんだ」
「そうか」
カリンがぽつりとつぶやいた一言にロイが相槌を打つ。
話してもよい、と判断したのかカリンはベッドから起き上がると、そのまま足を降ろした。
「小さくても結構評判がよくて……でも、去年の暮、お母さんが流行り病で亡くなった時に経営権は父さんの弟のものに」
「そういう法律だ」
ページをめくりながらロイが答える。
「詳しいの、法律?」
「ああ、マンハット大学で専攻していた。専門は……」
「連邦法だが」と肩をすくめ、本を閉じるとカリンに向き直った。
「それで、戻ったらどうする。冒険者以外にも生き方は多い。ここは新大陸。自由の国だ」
カリンは少し考え込み、静かに首を振った。
「私の目標、グレートプレーンズに農場を買うんだ。冒険者くらいでしょ、私みたいな歳でそんなお金を貯められるの」
「そうか……」
ロイは少しだけ口角を上げたが、その微笑みはどこか寂しげだった。
「笑わないの?」
「なにを?」
「私の夢」
カリンが首をかしげると、ロイは再び小さく微笑んで、首を振って見せた。
「立派な夢だ。自分以外の命に責任を負うなんて誰でもできることじゃない。少なくとも俺には……」
そこまで言ってロイは言葉を区切る。
「もう寝ろ」
「……そこにいてくれる?」
「ああ、朝までな」
「よかった」
「そもそも俺が取った部屋だ」と、自嘲しながらランプの火をもみ消し、ロイは椅子に座ったまま毛布にくるまる。
そうして、部屋には静寂が戻った。
「おやすみ」
「おやすみなさい……パパ」
暗闇の中から、ロイが「ふんっ」と鼻を鳴らす音が聞こえた。 が、カリンは満足そうに瞳を閉じた。




