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「悪いね、借りるよ」
そのままギルドの定期便を積み込んでいた鉄道作業員の手から目録の束を奪い取ると、ラッキーはパラパラとリストをめくっていく。
「コイツだ。先月の報酬引渡し履歴。すまないね」
不満そうな鉄道作業員に目録を返し、ラッキーは書類の束が積まれた棚にもたれかかった。
「護衛の仕事じゃないの?」
適当な鉄の箱に腰掛けて小声でロイに問いかけたカリンに、ラッキーは小さく首を振って見せた。
「なに、いつものギルドのお使いさね。お嬢ちゃんがママに言われて雑貨屋さんに煮豆の缶詰を買いに行くのとおんなじ」
「……何が言いたいの?」
カリンが視線を鋭くすると、腰に回した腕に合わせてポンチョが揺れた。大量の物が積まれた車内に緊張が走る。
が、ラッキーはニヤニヤと笑みを浮かべたまま、値踏みするような視線をカリンに向けたままの体勢を崩さない。
「それで、問題は?」
貨車の安普請の壁によりかかっていたロイが続きを促す。
「この棚のどっかにリッチの隠れ家を襲ったバカ野郎の情報が載ってる」
「リッチ?」
親指で自身の寄りかかっている棚を示したラッキーに、ロイは眉を顰め、カリンは疑問符を浮かべながら問いかけた。
「まあ、フロンティアじゃよく聞く悪党の一人さ。とにかく、奴がバカな賞金稼ぎ崩れにお礼をするために名前が知りたいと考えたなら……」
「東海岸のギルド本部につく前そいつを強奪するしかない」
ラッキーは、ロイの答えに満足げに頷く。
その時、列車の車輪が軋む音が一際大きく響き、汽笛が遠くの丘にこだました。
ラッキーは合図を受けたかのようにやれやれと振り返ると、側面の貨物用扉が閉められ薄暗くなった車内に目を向けた。
「ゲイリー、このカバレロと可愛いお客をご案内しな」
「あいよ、ラッキー」
ラッキーの呼びかけに、壁にもたれて座り込んでいた東洋人が立ち上がり、二人に先導して前方車輛と繋がる連結部への扉を開けた。
「とにかく、フレミング。アンタには期待してるよ。きっと、ひと暴れしてもらうことになるからね」
背中にかけられる言葉を無視してさっさと出ていったロイに続くように、カリンは金庫から腰をあげた。
薄暗い車内から光の中へ踏み出すと同時に響いたけたたましい汽笛の音に顔をしかめ……ふと、貨車の車内に振り返る。
するとラッキーが相変わらずニヤニヤと笑みを浮かべたまま、小さい子供にするように小さく手を振っていた。
「……ふんっ」
カリンは鼻を鳴らして、先に連結部を飛び越えていたロイとゲイリーに手を引かれて同じように連結部を飛び越えたのだった。




