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「それでは、確かに」
「ああ」
保安官事務所から出てきたじいさんは、早朝とはいえ強いフロンティアの日差しを受けながら外で待っていた二人に相変わらずの人のよさそうな笑みで分厚い札束をひらひらと振って見せる。
朝日と共に運び込んだウェンディゴに掛かっていた懸賞金は実際大した額で……フロンティアならば、ちょっとした屋敷程度なら手が出そうな金額だった。
その中から半分程をロイに渡すと、じいさんはカリンに預けていた手綱を受け取り、自身の馬にひらりと跨った。
「本当にいっちゃうの?」
「ええ、お嬢さん。今回は大物でしたが本来はギルドの報酬など大した額ではありません。必要なときにのみ集い、普段はそれぞれの道を行く。それが自由の地、勇者の故郷の冒険者ですよ」
ロイから受け取ったそれなりの厚さの分け前を鞄に詰め込みながら、首をかしげるカリンを、じいさんは人のよさそうな笑顔で微笑んでそっと呼び寄せた。
「ですが、お嬢さんは中尉殿にしばらくついているとよいでしょう。そういったしたたかさも冒険者には必要です」
耳下で囁くように言った老人の言葉に、カリンは目を丸くする。
が、すぐににっこりと微笑んで頷いた。
「よろしい! それに、我々は根無し草。そのうちお会いすることもあるでしょう」
「うん。またね」
「ええ、それでは」
眩しい朝日に向かって去っていく背中を見送り、カリンは小さくあくびをした。
「ふわぁ……ねむ」
「新米にしてはデカい仕事をこなしたんだ。しばらくは困らんだろう、寝床の場所は分かってるな?」
そう言いながらロイも手綱を引いていた自身の馬に跨る。
「だめっ、そうはいかないよ!」
だが、カリンも小柄な体格に似合わず軽々と愛馬に飛び乗ると、ロイの後をついて歩き出した。
「じいさんのありがたい薫陶を聞いただろう。宿でもとって次の仕事を探せ」
「いいえ、お供させていただきます、中尉殿」
「……好きにしろ」
溜息と共に諦めたように吐き捨てると、ロイは振り返りもせずに馬を操る。
「うんっ、好きにさせてもらうね」
視線の先で馬を駆る頼りがいのある大きな背中に、カリンは「じいさんの薫陶通り、ね」と、にっこりと魅力的な笑みを浮かべた。
冒険者としての技能や知識が身に付くまでは、彼の後を追っていれば報酬は少なくとも難儀することはないだろう。
そんな、どこか打算的なことを考えながら街並みを見回すと、朝日に照らされて起きだしてきた人々で賑わい始めた土の地面がむき出しの街路は、徹夜明けのカリンにもエネルギーを分け与えてくれるような気がした。
「ところで、これってどこに向かってるの? あっ、鉄道駅……」
答えが返ってくることを期待していない問いかけに、昨日歩いていたのとまったくの逆順をたどっていることに気づいたカリンがひとりで頷く。
「よぅ、フレミング! なんだい、コブつきかい?」
駅のプラットホームではなく、その脇。
次の列車に積み込むのだろう様々な貨物が山と積まれた荷下ろし場にたむろしていた一団の一人がロイに手を振った。




