第四話 納品へ行こう その2
第四話投稿させていただきました。
「ふんふふーん♪」
ミィは楽しそうに荷車を引いている。側から見ると、か弱い少女に重い荷物を運ばせている酷い絵面になっている。
しかし、この村では何気ない日常なのだ。すれ違う村人もいつものことのように「おはよー。今日もお仕事頑張ってるね。」と声をかけている。
本人もそれが嬉しいようで「今日もお役に立ってます。」とにこやかに返事をしている。
人の活気も溢れ、もう直ぐ村の広場に着く頃だった。ミィに声をかけようと振り返ると、直ぐ後ろにいたミィの姿はなく少し離れたところでどこかを見つめ立ち止まっていた。
ミィの目線の先には、道沿いのベンチに座って談笑に花を咲かせる仲の良さそうな男女の姿があった。微笑ましく会話をしている2人をミィはじっと見つめている。
「ミィ。どうかしたの?」
そう声をかけると、ビクッと体を震わせ小走りで近づいてきた。顔を赤らめさせて目線をわざと合わせないようにしている。
まあ、だいたい予想はついている。ミィも獣人とは言えそう言う年頃だ。それに、両親もいないしそういった関係にも憧れがあるのかもしれない。
ミィの方を見ると何か小声でモゴモゴと話しかけていることに気づいた。
自分が恥ずかしいと口籠ってしまうのはミィの可愛いところだ。
少し落ち着いたのかミィは呼吸を整えてから話すことができた。
「ア、、アルマさまは…あの〜、、す、好きな人とか、いるんでさか…?」
まだ落ち着きが足りないのか、若干舌足らずな話し方になっている。
「俺の好きな人?どうだろうあんまりそんなこと考えてこなかったしなぁ…」
ミィはそう聞くとなにか言いたげな表情をしながら俯いてしまう。
(好きな人…かぁ)
今まで考えたこともなかった。生きることに必死で幼い時から仕事をする毎日だったし、寂れたこの村を活気あふれる場所にするために自分のことを後回しにしてきた。
別にその暮らしが嫌だったわけじゃないし、むしろ役に立ててるって実感できてそれはそれで楽しかった。
村の歳の近い仲間連中だって恋人もいるだろうし、結婚して早いやつなんて子供が2人も生まれてる奴もいる。
俺自身、そういったことに興味がないって言うと嘘になるけど『魔力なし』の俺を好き好んで選ぶ人もいないし…
うーん…と悩んでいる姿を見て、ミィは少し心配しているようだった。
「ア、アルマさま…そんなに悩まずとも…お相手なら…」
「いいよミィ。慰めなんていらないさ。そもそも『魔力なし』に言い寄るほど物好きはいないだろ?」
そういうと、ミィは顔を真っ赤にして怒り出す。
「そんなことはありません!アルマさまの魅力が魔力のありなしで待ってしまうような、そんなものではないのです!大体、魔力がないから結婚できないなんて誰が決めたんですか!」
荷車を引く手足に力がこもっている。本気で怒ってくれているんだろうなと感じながら街の広場まで歩く。
しかし、魔力があるなしでは本当に人としての価値が違うのだ。
この世界、誰しも魔力を持って誕生する。個人的に魔力の量が多い少ないはあるが完全に魔力0で生まれてくることはあり得なかった。
魔力があれば少量でも身体強化に回せるし、適正魔法なんかもあればもっと仕事の範囲も増えるのだ。
それに、スキルを魔力で強化すればもっと出来ることも増える。
例えば、今の家事スキルで2時間かかる掃除も魔力を使えば30分程度で終わられられたり…身体強化を補えれば狩猟の王様になれるかもしれない。そもそも、この大量の荷物を運ぶミィですら意識していない状態で、筋力などに魔力を込めているから運べているわけでもある。
今の世の中は魔力のある前提で動いている。魔力なしの俺はまずそこのスタートラインにも立てていないと言うわけだ。
(魔力が少しでもあれば、冒険者にもなれてたかもしれないな…)
「俺が持っているスキルなんて家事スキルみたいな便利スキルと魔力消費がない耐性ぐらいだ。それだけでどうやって冒険者をやれって言うんだ…。なれたとしても、パーティの肉壁ぐらいにしかならないだろう。」
そう伝えると、ミィは耳もしっぽもヘタレてしょんぼりとしている。小声で「そんなんじゃ…そんなんじゃないです。アルマさまはだって…」と呟いている。
ミィなりに俺を励まそうとしてくれているんだろう。冒険者の夢は諦めはしたが今はみんなと過ごすことが楽しいんだ。それだけでもありがたいことだ。
気がつけば、御者連中が集まっている広場の入り口に到着した。ここからは荷物を積み込んでギルドまで運ぶだけだ。
自分の仕事も終わり、名残惜しそうにしているミィの姿を見つけるとアルマはゆっくりと近づき頭に手を置く。
「帰りに何かお土産でも買ってくるから、ハルナのいうことちゃんと聞いておくんだぞ。」
そう言うと、ミィはキラキラと目を輝かせてはしゃいでいた。こう言うところは姉妹揃って一緒なんだな、と思い微笑ましくなる。
「約束だよ!ミラとは違うやつがいいからね!」
そう言いながらものすごい速さで荷車を引き、診療所の方へと戻っていく。
(聞かれてたのか…さすが、犬の獣人。耳もいいんだな。)
小さくなっていくミィの影を見つめ手を振りながら思った。
いつのまにか荷物の積み込みも終わり、御者の親父が出発の準備を整えている。
「アルマさん!積み込みは終わりましたぜ。もう、そろそろ出発したいんですがよろしいですか?」
「ああ!そろそろ行こうか。」
そう言うと、馬車にのり納品先の王都ギルドへと出発するのだった。
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