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第3話 納品へ行こう

勇者一行の荷物持ち三話投稿させていただきました。 



 片付けも早々に終わり、俺は庭の植物たちに水をあげていた。あのとっ散らかった部屋がものの見事に整理整頓の行き届いた空間になっている。


 これも全て俺の持つ『家事』スキルにある。元々は『料理家』と『掃除屋』の複合スキルで家政婦や使用人が持つ便利スキルだ。長年、ハルナの生活を支えてきたおかげでいつの間にか身についていた。


「アルはどこに嫁に出しても恥ずかしくないな。」


 コーヒーを片手に、一仕事終えたハルナが優雅に話しかけてくる。

 少しは手伝ってくれてもいいとは思うが…


「嫁って…俺は男ですし、それに『魔力なし』の俺を旦那にしようとする酔狂な人はいませんよ。」


 少し諦めの入った表情でヘラヘラと笑うアルマを、そうかねぇ…と呟きながら、人の気配のする表の玄関の方を見つめる。


 すると、バタバタと誰かが走ってくるような足音が聞こえる。


「アルマさまーーー!!!」


 そう聞こえるや否や、白い塊がアルマに勢いそのまま飛びつく。側から見れば、人間大の獣が襲いかかっているように見える。

 というよりも、頭にはキレの入った耳、腰あたりには人間にはない白い犬のしっぽのようなものがついている。

『獣人』と呼ばれるものだった。


「アルマさま。ミィに会いにきてくれたんですか???きっとそうです!そうに決まってます!」


 そういうと、ミィはもっと強くアルマを抱きしめる。獣人の筋力は並の人間とは桁違いに強いため、抱きしめられているアルマの体はギュウギュウと締め付けられていた。


「ミィ!何度言えばわかりますの?アルマさんが苦しそうです!」


 ミィに出遅れてもう1人が裏口の方へ走ってくる。そのままミィを引き離そうとするがびくともしない。それに本人は嫌だ嫌だと言ってさらに力を込める。


「ミラ!はなせ! アルマさまはミィに会いに来てくれたの!」


「ちがいます!私です!」


 どっちも違うわ。それに、そろそろ離してくれないと俺も苦しい。


「おはよう、ミィ、ミラ。今日はギルドに納品する回復薬を取りに来ただけだよ。」


 そういうと、不貞腐れたようにミィと呼ばれる獣人はアルマを解放した。


 ミラもミィと同じく犬型の獣人の双子だ。ミラはミィと違い力は強くないが手先が器用で優しい。聞き分けもいいためハルナの助手としても優秀だ。


「回復薬なら入り口に置いてあるよ。量もあるし今日はミィが手伝ってあげな。」



 ハルナに言われるとミィは子供のようにはしゃいだ。ミラに得意げな顔をしてそのまま荷車を運びに行ったようだ。呼ばれなかったミラは残念そうにため息をついている。


「今日行くギルドは結構大きいし、帰りに何かお土産でも買ってくるよ。」


 ミラにそう言うと、俯いていた顔をあげ嬉しそうにしている。

 犬の獣人だし、干し肉とかでもいいかもしれないな。


「アルマさまー!荷車準備できたよー!」


 入口の方からミィの明るい声がしている。さっさと回復薬を荷車に積み込んでいるようだった。


「ほいこれ。納品書ね。今回の発注はいつにもなく大量だし、なにかあった時のための保証書とか入れてるから。」


 ハルナはそういうとアルマに紙の束を渡す。これが金貨よりも価値があるなんてと、毎度のことながら思う。


「まあ、他のところでも納品はしてるし慣れてるよ。それに相手はギルドだから、そうそう変なことは起きないと思うよ。」


 まあ、最近はここの近くでも荷物を狙った山賊が増えてるらしい。でも、荷物よりこの保証書が大事なんて現金主義のあいつらは思わないだろう。


「まあ、山賊程度なら心配はなさそうだ。」


 そう言うとハルナは俺の肩をポンポンと叩く。この村で生きていくために狩猟だってしてきたんだ。ある程度、自分の身は守れる。しっかりギルドには届けるさ。


 そうこうしていると、入口の方から積み込みが終わったミィが呼んでいる。


「まだー??」


 そろそろ御者も集まってきている頃だろう。呼んでいるミィに適当に返事をして準備をする。


「あ、そうだこれ渡さないと」


 そう言うと、ハルナはポケットから小袋を渡してきた。揺れるたび中から金属の擦れる音がする。


「これ、金貨じゃないか。こんな大金いらないよ。自分の財布も持ってるし…」


「違う違う!お前じゃなくてロベルトに。それで何か買ってきといてくれない?いつも仕事引き受けてくれてるお礼にさ。」


 この量の金貨なら、家ぐらいなら買えるんじゃないか…?


 相変わらず金に頓着しないようだ。まあ、ロベルトも狩猟用のグローブとか新調したいって言ってたしそんなもんでいいだろ。


「わかった。あいつが欲しそうなやつにしとくよ。」


 そう言ってミィと2人で村の広場まで歩く。結構な重さだと思うがミィは軽々と荷車を引いている。

 診療所のまえでハルナとミラがいってらっしゃいと言いながら手を振っていた。


感想、ご意見お待ちしております。

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