第14話 作戦会議1
勇者一行の荷物持ち14話掲載させていただきました。またしばらく期間が開くかも知れません。よろしくお願いします。
王都へ入るためには一度検問を受けなければいけない。今はその審査待ちと言うわけだ。
毎度思うが、この審査待ちの長蛇の列はどうにかならないものか。
とは言うものの、定期納品の商品などは審査を簡単に済ませんこともできる。そう言った商人たちは簡単な検査をしてスムーズに入国している。
それに、事前に納品物を申告しておけば手間取られることもない。
なぜ、今こんなに列になっているかと言うと
「申請にない薬物を発見!直ちに拘束します!」
前の方でそんな声が聞こえると、衛兵たちが剣や槍を持って馬車を取り囲む。馬車に乗っている商人たちが引き摺り下ろされ、縄にかけられていく。
と、まぁこんな感じで薬物の密輸を行おうとする輩がいるせいで時間を食っているわけである。
連れられていく商人が、俺たちの国では合法なんだ!とか喚いているが、それなら自分の国で売れば良いじゃないか。
抵抗も虚しく、諦めたように数人の商人がトボトボと衛兵に連れられていく。今のうちだぞ、青い空を見られるのは。しばらくは埃とシミに塗れた天井だろうし。
まあ、次見られるのは人生の最後だろうけど。
「ダンナ、あまり良い趣味ではないですよぉ。」
オヤジが呆れたようにため息混じりに小言を言ってくる。仕方ないだろ、俺たちの時間を奪ってるんだ。自業自得だ。
一騒ぎが落ち着くと、検問が再開される。俺たちも事前に書類を渡しているからすぐに終わるだろう。
そう思いながらぼーっと眺めていると、検問官に見知った顔があるのを見つけた。
遠くからそいつを見つめていると、向こうもそれに気づいたのか少しずつ近寄ってくる。
やっと顔がわかったのか、検問官は全速力でこちらに向かってきた。軋む鎧がガッショガッショと音を鳴らす姿は小さなゴーレムが走っているようである。
「ローレンス!ローレンスじゃないか!」
アルマは馬車を飛び降り、ローレンスと呼ばれた検問官を迎え入れる。
「久しぶッッ」
しかし、その瞬間。アルマの脳内に鈍い激闘音が反響する。
何を思ったのか、ローレンスは速度を落とさないままアルマに抱きついてきたのだ。
「アルマさん!!良かった!無事だったんですね!」
まだ若い青年の声が、何重にもなってアルマの鼓膜と脳内を駆け巡る。目の前の景色が鈍灰色でぼやけていく。
「ダンナしっかりしてくだせぇ!」
「アルマさん!しっかりしてください!」
2人同時に大声を出さないでほしい。輪唱蛙のボイスを食らった時みたいに頭が割れそう。いや、物理的に本当に割れそう。
幸い、俺の馬車には回復薬が積んである。オヤジが俺の鞄からすかさず回復薬をかけてくれたおかげでなんとか復活する。本当に死ぬかと思った。
「すいません。無事だったのが嬉しくて…つい。」
今さっきまで全く無事じゃなかったけどな。アルマは頭痛の余韻が残る頭を抑え、ローレンスに支えられながら立ち上がる。
そう言えば、無事がなんとかって言ってたよな。
「ローレンス。無事ってどう言うことだ?」
「そうでした!先ほど、回復薬を積んだ馬車が盗賊に襲われ…その、全員死亡した、と報告がありましたから。それに今日、回復薬の納品はナツエ村だけだったので。それで。」
何を言ってるのかさっぱりだ。現に俺たちはピンピンしてるし。盗賊なんて蹴散らしてきたばかりだ。
「ダンナ。やっぱり変ですぜ。アイツら俺たちのことを知ってたみたいだし。」
そうだよなぁ。出来すぎてるって感じてはいたんだ。あの村の周辺はあまり盗賊が棲みつくような場所はない。
それに、ミィとミラが定期的に巡回という名の散歩をしてるから警備にも事欠かないし。
「それについてなんですが、昨日エールハルト様がいらしたんです。明日、アルマさんの身に何が起きても信用するなって。でも、心配で心配で。」
領主様がそう言う時は、何かしらあったんだろう。でも、信用するなって俺たちが本当に盗賊に殺されるなんて思わなかったんだろうか。
まあ、別に死にやしないけどさ。
「それと、アルマさんたちの積荷は検閲免除となっていますので、こちらについて来てもらえませんか?」
そう言うと、数人の衛兵たちを呼んでくる。連れて来た衛兵も全員顔見知りだ。
「エールハルト様には信用できる人を数人集めろと言われていましたので…顔見知りだけになっちゃいました。それでも、みんな大丈夫です。」
こいつらは昔、魔獣に襲われていた時に助けてやったことがある。その恩で検問の時もだいぶ良くしてもらっている。気心知れた仲だ。
俺たちは、ローレンスに連れられ待機列から離れていく。並んでいた商人たちが蔑んだ目でこちらを見てくる。
まて、俺たちはさっきの密輸業者じゃないぞ!アイツらと一緒にするなよ。
「どこに連れて行かれるんだ?」
ローレンスに聞くと案外簡単に教えてくれた。どうやら、今はほとんど使われていない、兵士たち用の出入り口があるらしい。
なんか、秘密の抜け道みたいでワクワクするな。
案内された門は、正面の新しいものとは違い古臭く、壁も無数の傷跡が残っていた。
フルード王国はかつて、異世界から召喚された勇者が邪神と邪竜を討ち倒した場所に建国されたと、昔話で聞いたことがある。
それ以来、何百頭のドラゴンが攻めて来た時もこの堅牢な城壁が耐え抜いて来た…らしい。
にわかには信じ難いが、これを見ると多少信憑性は増すだろう。
まあ、昔話なんて盛られてることがほとんどだし。そんなもんだろう。
「そう言えば、俺たちが襲われたって誰に聞いたんだ?」
「バルト公爵様の私兵が昼前くらいに詰所で報告に。」
やっぱりそうかぁ。嫌な方の予感が的中してるじゃないか。あの時はほとんど笑い話だったのに。
昼前って言ったら、ちょうど俺たちが襲われてたぐらいか。でも、私兵って感じじゃなかったし、金で雇われてたんだろう。
こうなるなら、一人くらい捕まえてた方が良かったかもしれないな。
門を潜ると、少し開けた広間に出た。使われていないのは本当らしく、床や壁には苔とツタがこれでもかと張り巡らされていた。
ただ、これは俺が田舎育ちだからかも知れないけれど、人だらけの街より心地がいい。
「アルマ。よく来てくれた。」
「領主様!アンナさんも!」
アルマの到着を待っていたエールハルトたちが出迎える。
「アルマ、到着早々悪いんだが、今からその積荷をこちらで回収させてもらう。」
待機していた衛兵たちが一斉に馬車の荷物を運び出す。
「領主様、ギルドに納品するんじゃなかったんですか?」
「事情が変わってな。今回ギルドは通さないようになったんだ。諸々の説明は…」
「それは、私から説明させていただきます。」
従者を連れた若い男が現れる。エールハルトも膝をついていることから、かなりの上級貴族なのだろう。
「初めまして。私は、ロムルス・フルード。この国の第一王子です。」
なんだって??今、第一王子って言ったか?隣で跪いているいているエールハルトの顔を見れば嘘はついていないようである。
俺、そんなの聞いてないんですけど。そう思いながらエールハルトを睨むが、あ!こいつ、目を逸らしやがった!
「ことの経緯を説明しますので、私について来てください。」
アルマたちはロムルスの案内の元、ギルド近くの会議室に入れられる。
道中、エールハルトは全く目を合わせなかったため、いつか、この仕返しをすることを心に決めるのだった。
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四暗刻単騎。




