第12話 旅の道連れ
勇者一行の荷物持ち第12話掲載させていただきました。久しぶりに主人公が出た気がします。
盗賊達の襲撃を切り抜けた俺たちはフルード王国へ続く街道に入っていた。
盗賊の追っ手から逃れるため、オヤジが馬車を飛ばしてくれたからか早めに到着しそうだ。
俺個人としては、ゆっくり馬車に揺られるのも楽しみだったんだが…
「王国が近いとすれ違う人も多いですなぁ。」
先程まで襲われていたのが嘘みたいに御者のオヤジは呑気に話している。
実際、オヤジからすれば盗賊に襲われることなんて珍しいものでもないらしい。今までも自慢の愛馬と共に切り抜けていたと話していたし。
「でも、気になりますねぇ。あいつら荷物のことを知ってたみたいだ。」
大方、バルト侯爵とか言うやつの差金じゃないだろうか。村の会議でもどんな手を使ってくるかわからないって言ってたしな。
盗賊の一人くらい連れてきたほうが良かったのかもしれないが……。荷物が増えるのも嫌だし、変なことをされても困るからな。
それに、ああいう奴らは下手に手を出すよりさっさと逃げたほうが安全なんだ。面倒臭いけどね。
外の風に当たりたくなり、アルマは馬車から身を乗り出した。街道を駆け抜ける風が体の中に入り込み気持ちがいい。
「オヤジ!馬車を止めてくれ!」
御者のオヤジが慌てて馬車を止める。アルマは馬車が止まり切る前に荷台から飛び降りて草原の方へ走り出してしまう。
オヤジの止める声も聞かずに何かに向かって。
「おーい!お前達どうかしたのか。」
アルマの声の先には、三人ほどの人影が力無く項垂れてへたり込んでいた。
「だいたいねぇ。ノアは魔力使いすぎなのよ。」
「そういう、ルミアだってバンバン魔法使うしぃ前に出て怪我するから、私が回復してあげてるんじゃない…」
「もう、二人とも口喧嘩やめてよ。後少しで王都だからさ。」
三人とも突っ伏してる割には口は元気なようだ。
と言うか、コイツらは何をしているんだ。王都が近いとはいえ、草原のど真ん中で無防備に寝転がって。
魔獣にどうぞ食べてくださいって言ってるようなものだろ。
「す、すいません!見苦しいところを。」
パーティの一員の男がようやくこちらに気付いたのか慌てて二人を起こそうとする。
だが、二人とも口を揃えて動きたくないと喚いている。
「動けないのはいいけど、そのままだと魔獣の餌食になっちゃうよ。」
アルマがそう言うと、動けないと叫んでいた割に機敏な動きで立ち上がる。何なんだコイツらは。
その様子に男は呆れた感情の籠ったため息をついている。その様子から日常的に二人のわがままを食らっているのだろう。
わかるよ、その気持ち。アルマの脳裏に白い双子(特に元気の有り余ってる方)がチラつく。
「お見苦しいところを…恥を承知なのですが、ポーションをもらえませんか。お金はキチンと払いますので。」
まあ、予想はできていた。三人はまだ駆け出しの冒険者パーティなのだろう。
回復薬が足りずに帰る途中で力尽きる冒険者もいるし、駆け出しならお金をケチって帰りは徒歩で、なんてのもあるにはあるからな。
「わかった。初級回復薬とマナポーションを持ってきてるから使いなよ。」
カバンから回復薬の一式を出して三人に手渡した。みんなありがたがって手を合わせてくる。
側から見たら宗教の教祖のようだ。
三人ともポーションを勢いよく飲み出す。本来ならそんなにがっついて飲むようなものじゃないんだが…。薬酔いが怖くないのだろうか。
まあ、うちの回復薬だとそんな心配はいらないんだが…。
それにしても、絵に描いたようなパーティだな。剣士と魔法使いと…僧侶か?にしては白すぎて聖女に見えるが。
それに白僧侶に至ってはその服の素材はかなり高級だろうし…。
アルマが考え込んでいると、魔法使いらしき女の子が薬を見つめ何か訝しんでいる。
「これ、本当に初級薬?魔力がすごい回復してるんだけど…。」
それを聞くと、剣士が飲んでいた小瓶を見つめる。どうやら鑑定のスキルを持っているらしい。
鑑定スキルかぁ。剣士なら攻撃系を重視してあまり汎用的なスキルは取らないって聞いたことがあるけど…。
耐性しか持ってない俺からすると羨ましい限りだ。
「これ、確かに初級薬ですけど回復効果がほとんど中級以上ですよ。しかも、ナツエ村産じゃないですか!こんな貴重なものを!」
「すごいな。そんなことまでわかるのか。」
感心しているアルマを他所に、冒険者たちは何かオロオロと慌て始めていた。
「ナツエ村の薬は王都じゃ今はほとんど手に入らないんですよ!しかも、それを簡単に渡すなんて。何を考えているんですか。」
剣士は、アルマに掴み掛かりそうな勢いで捲し立てる。
俺からすれば、別にそこまで貴重じゃないんだけどな。それこそ、村に戻ればいくらでも作れるし。
「も、もしかして。貴重な薬を提供した見返りに身体で…」
白僧侶が怯えた目でこちらを見てくる。魔法使いも獣を見るような目つきで睨んでくる。
勝手に俺を悪人に仕立て上げるのはやめてほしい。
「お願いです!炭鉱でも!何でも行きます!なのでこの二人だけは見逃してください!何でも!何でもします!」
剣士が必死になって懇願してくる。だから、俺を悪人にしないでくれ。
「いやいや。そんなことしないよ。それにこの薬は俺が作ったんだからお金はいらないよ。」
「あなたが、作った?」
いつも村で作るのとは別に薬は数本持ち歩いている。何かあったら大変だしね。
「じゃあ、あなたはナツエ村出身ということですか?」
「そう。さっきから話に出てる回復薬を王都に納品する途中なんだよ。」
噂をすれば、遠くから御者のオヤジの呼ぶ声が聞こえる。いきなり馬車を止めたもんだから心配して探しているんだろう。
「これも何かの縁だよ。王都まで送ろうか?」
回復薬は傷と魔力は回復できても今まで蓄積した疲労までは治せない。
冒険者達は遠慮しているかのように顔を見合わせている。
「本当ですか!ありがとうございます!」
その空気を破ったのは白僧侶だった。他の二人はそれを、諌めようとしているが白僧侶の推しが強く、結局折れてしまったようだ。
決まりだな。少し狭いが三人を馬車に乗せるとしよう。少しの間だけど多少うるさい方が楽しいもんだ。
でも、その時はこの三人と長い付き合いになるなんて思ってもなかったんだけどね。
皆さんのご意見・感想お待ちしております、、




