065 ロードオーブデュアル機能
俺は捕えたワイトロードたちを尋問した。結論だけ書こう。ワイトロードたちは何も喋らなかった。
ヤツらには電撃マヒと沈黙魔法を掛けて暴れないようにした。そして一体ずつマヒを解いてから尋問したのだ。ワイトロードたちが痛みに無関心なことはすぐに分かった。肩を脱臼しているヤツがいて、かなりの激痛があるはずなのに平気な顔をしているからだ。つまり、拷問などはムダということだ。
それで尋問の手段として違う方法を使った。俺が使ったのは調伏魔法だ。体に食い込んでいるゾンビ虫のソウルを魔力を流して少しずつ引き剥がしながら、念話魔法で尋問したのだ。
『今のままでは浮遊ソウルになってしまうぞ。命が惜しければ俺の質問に答えろ』
『勝手にしろ。我らは何も話さぬ』
どのワイトロードもそんな感じだった。結局、尋問から得られたものは何も無く、ワイトロードたちには死んでもらった。
二体目のワイトロードを殺して俺の魔力が〈300〉を超えたときに、突然、メニューにメッセージが出てきた。
〈ロードオーブデュアル機能が使えるようになりました。オンにしますか?〉
ヘルプには、この機能をオンにすると、ロードオーブを2つ装着することができるとあった。これは2つを合わせた魔力を得られるということだろう。すごい。ともかくオンにしてみよう。
〈新たなソウルオーブを装着してください〉
オンにすると、そういうメッセージが出たので言われるとおり新品のソウルオーブを装着してみた。
あら、不思議。既に俺はロードオーブを装着しているのに、新品のオーブのほうも装着できてしまった。
〈ロードオーブAのスキルや機能をオーブBにコピーしました〉
〈オーブBに新たなソウルを格納できます〉
なんだかよく分からない。とりあえず、オーブBはポケットに入れて、三体目の始末をした。そして、さっきのメッセージを信じてソウル格納の魔法を発動してみた。
おぉ! なんと言うことでしょう。ワイトロードのソウルを格納すると、新たに魔力〈180〉のロードオーブとなった。
よし! これで俺は一気に魔力が〈180〉高まって、合計で〈480〉くらいの魔力になったはずだ。自分の魔力を確かめてみよう。
あれ!? おかしいぞ? 探知魔法で調べても俺の魔力は〈300〉のままだ。どういうことだ? ロードオーブBを有効にするためには何か他の条件があるのだろうか? 体に埋め込まないとダメなのか?
試しにオーブBを自分の体の中に埋め込んでみた。しかし、相変わらず魔力はオーブAの〈300〉のままだ。なぜだろ?
色々試しているうちに、有効となるロードオーブをAからBに切り替えたり、BからAに戻したりできるようになった。しかし、両方を同時に有効にする方法が分からない。何かの条件があるのかもしれない。きっと何かの拍子に条件を満たして有効になるのだろう。それを待つしかなさそうだ。
今回の偵察はここまでだな。偵察と言うより、結果的にゾンビ虫の苗床を破壊するところまでやってしまった。だが、ワイトロードの一体を取り逃がした。当面の間はこの場所からゾンビ虫やゾンビが地上に現れることはないだろう。だが、これで終わりではない。この苗床を作った首謀者を明らかにして鉄槌を下さねばならない。
………………
俺は眠ったままのブルノをゾンビの巣の煙突を通って蟻の巣まで運び上げた。浮遊魔法と念力魔法を駆使した。ゾンビの巣の中は完全に燃え尽きて煙も治まっていた。焼け跡は無残な状態だったが、今はこれを土に戻す気力が無い。
蟻の巣の中も悲惨な状態だった。蟻たちは不燃質の殻に覆われているのか燃えていないが、熱のために丸まって死んでいた。その死体が何百と転がっているのだ。これもそのままにして、俺はマルグとエドリーをぶら下げたドームに戻った。
何時間経ったか分からないが、俺はもうヘトヘトだ。マルグとエドリーを地面に下ろして、ブルノの隣に川に字に並べて寝かせた。彼らは蜘蛛糸に包まれて幸せそうに眠っている。こいつらのせいで俺は大変な思いをしたのだが、腹を立てる気力も湧いて来なかった。
簡単な食事を取ったら少し元気が出てきた。よし! こいつらを起こそう。蜘蛛糸分解と眠り解除の魔法を三人に向けて放った。
「おい、何をぼんやりしてる! 走るぞ! 逃げるんだ! 魔獣が追ってくるぞ」
まだ頭が回っていない三人に発破を掛けた。魔獣が追ってくるというのはウソだが、そう言わないと動きそうにないからだ。それにマルグが蟻の巣へ行こうと言い出しかねない。俺一人でやってしまったあの惨状を見られたくないのだ。
「ど、どういうことだ!?」
俺にせっつかれて走りながらマルグが聞いてくる。
「後で説明する。今は逃げるんだ!」
「た、隊長! く、首を噛まれてますよ!? ブルノも!!」
エドリーが二人を見て驚いた声を出す。
「大丈夫だから、とにかく走るんだ!」
みんなは訳も分からず逃げているはずだが、不思議なものだ。なんだか本当に追い掛けられてる気がしてきた。逃げてるということが怖さに拍車を掛けるのだろう。事情が分かっている俺でさえも、なんだか怖くなってきて逃げ続けた。
結局、ずっと走り続けて、地下4階に上がって一息ついた。
「とにかく、このダンジョンを出よう」
マルグがそう言い始めて、俺たちはそれからも走ったり歩いたりして地上に出た。日はとっくに暮れて夜になっていた。
ベルドランの王都に向けて歩きながら、俺は何があったかを説明した。蟻たちの罠にはまってマルグとブルノが行方不明になったこと。エドリーからマルグたちの救出を頼まれて、蟻の巣へ向かったこと。蟻やゾンビに捕らわれていた二人を運よく助けることができたが、ワイトロードに見つかって二人を連れて必死に逃げたこと。当たり障りのないウソも交えながら適当に話をした。
「マルグもブルノもゾンビに噛まれていたから、キュア魔法で治療はしておいた。だが、念のために魔医に診てもらったほうがいいな」
俺がそう言うと、二人とも必死に自分の体へ検診とキュア魔法を掛け始めた。
「あー、それと首の噛み跡は簡単には消えないだろうから、人前には出るときは注意したほうがいいぞ」
これでマルグは当分の間は静かにしてるだろう。マルグたちはボソボソと俺に感謝の言葉を述べた。
「今度は俺とフィルナでダンジョンに潜って行けるところまで進む。あんたたちは来なくていい。出発は数日後だ。それでいいな?」
俺が言うと、マルグは何か釈然としないという感じだったが、黙って頷いた。
途中でマルグたちと別れ、真夜中に家に帰り着いた。フィルナとハンナは俺を心配して、寝ないで帰りを待っていてくれた。俺は話もそこそこに自分に清浄の魔法を掛けてベッドに倒れ込むと、あっと言う間に眠ってしまった。
………………
翌朝。フィルナたちにベルド・ダンジョンでの出来事や発見したことを話した。
「そう言うことで、俺とフィルナは当分の間はベルド・ダンジョンの最下層に拠点を置いて、そこで周辺の調査を行う。ハンナはセルド魔医と一緒にゾンビ症の治療を進めてくれ」
「イヤよ。あたしもダーリンやフィルナと一緒にダンジョンの最下層に行く。ダーリンはいつもあたしを守ってくれるって約束したでしょ?」
ハンナがそんなことを言いだした。
「うん、当然よ。ダイルぅ、ハンナ姉も一緒に三人で行こうよ! 三人はいつも一緒に暮らすって言ったよね?」
フィルナが「ハンナねぇ」と言ったぞ? この二人、どうなってるんだ? ライバル同士じゃなかったのか? いつの間にそんなに仲良くなったんだ!?
「でも、ハンナがいなかったら、セルド魔医だけじゃゾンビ症の治療ができないぞ?」
「そうなのよ。それで、あたしの弟子のことでダーリンにちょっとしたお願いがあるの。ねぇ、聞いて……」
ちょっとしたお願いだと? どうせろくでもないことだろうな……。
※ 現在のダイルの魔力 オーブA〈307〉、オーブB〈180〉。
(ワイトロード四体を倒したため、その魔力の1%分ほどが増加)
※ 現在のフィルナの魔力〈150〉。
※ 現在のハンナの魔力〈220〉。




