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064 ダンジョンの最下層

 ガンガンと響き渡る騒音。自分のバリアが攻撃を受けている音だ。意識がはっきりしてきて、俺は目を開けた。たしか穴の中で気を失ったはずだが、いつの間にか草の上に仰向けで寝ていた。両手を紐のようなもので固く縛られている。


 俺の周りに誰かいる。ワイトロード! 三体だ。バリア破壊の魔法で俺を攻撃しているのはこいつらだ。すぐそばに丸太小屋が見えていて、その中にも二体いることが探知魔法で分かった。


 三体のワイトロードたちは俺を取り囲んで、ガンガンと魔法をぶつけてくる。たぶん穴の中で俺を見つけて引き摺り出したのだろう。


 意識を失っていても俺のバリアは有効に働いている。だが、俺の魔力ではバリアで手を防御できない。手だけは攻撃で使うからバリアの外に出ているからだ。俺を殺すつもりなら手を切り落とすはずだが、縛ったということは俺の体を五体満足のままで使うつもりなのだろう。


 バリアの耐久度は50%を切った。バリアは攻撃を受けると自動的に回復機能が働く。だが、さすがに三体から同時に攻撃されてはバリア回復が追いつかない。かなりヤバイ状況だ。しかし俺には奥の手がある。


「人族の男、目を覚ましたな。おまえを我らの仲間にしてやろう。だが、その前におまえのバリアが邪魔だ。壊すからおとなしくするのだ」


 ワイトロードはさすがに知能が高いだけあって、普通に会話ができるようだ。俺に話しかけたヤツは見た目は中年の男で革の服を着ている。顔色が青白いことが気になるくらいで見た目は普通の人族と変わらない。


「わるいが、おとなしくはできないな」


 そう言いながら俺はゆっくり立ち上がった。


「クックッ。おまえの手は縛っておいた。何もできまい」


「そうかな?」


 俺はそう呟きながら手枷連射のスキルを発動した。シッポから蜘蛛糸が次々と飛んでワイトロードたちの手に絡み付いていく。


 危険を察知したのかワイトロードたちは「クェーッ! クェーッ!」と叫び声を上げて、蜘蛛糸を外そうと必死だ。


 俺はその隙に自分の手を縛っている紐をシッポから出した魔力剣で断ち切った。そして、三体に向けて両手とシッポで「雁字搦め」を発動して蜘蛛糸でグルグル巻きにしていく。


 そのとき、丸太小屋の中から別のワイトロードが飛び出してきた。二体だ。騒ぎを聞き付けたのだ。


 俺に向けて何やら呪文を唱え始めた。熱線魔法の呪文か!? ヤバイ! 俺は「雁字搦め」を中断して、二体に対して「手枷連射」を放った。距離は15モラほど。ほぼ同時に熱線が放たれて俺のバリアに当たった。白い光を発してバリアが発光する。熱線は防げているが、バリアの耐久度は見る見る落ちていく。


 そのとき、俺が放った蜘蛛糸がワイトロードたちの手に絡み付いた。熱線が止まった。俺のバリアが急速に回復していく。


 一体のワイトロードが俺に突進してきた。手を縛られては剣も魔法も使えないが、脚は使える。体当たり攻撃をする気か!? 俺は横に跳んで体当たりをかわした。「雁字搦め」を発動して、体当たりしてきたヤツを蜘蛛糸でグルグル巻きにしていく。


 もう一体はどこへ行った? 見回すと、遠くにそのワイトロードが背を向けて逃げていくのが見えた。もう200モラ近く離れている。脚が速い。これは追い付けそうにない。俺は追うのを諦めた。


 さっき「雁字搦め」を中断して中途半端になっていたワイトロードたちはバリアごと蜘蛛糸に絡まってもがいているが、もう一度雁字搦めで包み直した。四体のワイトロードたちは、それぞれ着膨れしたミイラ男のようになった。


 一体毎にバリアを破壊したが、さすがに相手は魔力が〈360〉のワイトロードだ。時間が掛かったが、四体のバリアを破壊して魔法で眠らせた。


 ふぅー。なんとか助かった。しかし、不思議だ。自分の命が危なかったのに、身が竦んだり体が震えたりしないのだ。以前の俺なら、不良たちに囲まれただけで体が動かなくなったのに。


 たぶん、この体が危険に対して冷静に動くようにできているのだろう。ククルの体質なのか、それとも豹族の特性なのかは分からないが、俺にとっては有難いことだ。あらためてククルの体に感謝した。


 ところで、ここはどこだろ?


 俺は周りを見渡した。俺のすぐ近くに丸太小屋が建っている。その向こう側、50モラほどのところには石造りの大きな建物が見えた。


 だが目を引くのは目の前の絶壁だ。それがどこまでも上に伸びている。岩の壁が地面から垂直に立ち上がっていて、右側へも左側へもずっと続いているのだ。頭の真上には遥か上空に青空がある。いや違った。良く見ると、あれは青い光を発している天井だ。これまでのドームと同じように天井があるから、ここは地中なのだろう。


 後ろを振り向くと草地が広がっていた。その先、1ギモラほど離れたところにも黒っぽい垂直な壁がある。凄い高さだ。その高さは1ギモラくらいあるかもしれない。おそらく、こっちの壁と同じように岩の壁だろう。その黒い岩壁は倒れて来そうな迫力で天井まで届き、左右に果てしなく続いている。


 俺は高さ1ギモラの峡谷の底にいるってことだ。地底にこんな場所があるなんて、驚きで言葉も出ない。ここには草地だけでなく、森や丘もあって川が流れているのも見える。


 ともかく、ここが自然にできたものでないことは確かだ。何かの意志を持ってこの場所は作られている気がする。ここを作ったのは偉大な力を持っている者。それはつまり、神話どおりに大地の神様ってことか……。


 そしてここが、ベルド・ダンジョンの最下層だろうか? これほどの空間だから、おそらく最下層なのだろう。


 この場所は蟻の巣から1時間近く下って辿り着いた場所だと思う。なぜなら、50モラほど離れたところにある石造りの大きな建物が円錐形の形をしていたからだ。あれがゾンビの巣だろう。円錐の片側半分だけが岩壁から迫り出しているような形だ。入口と思われる扉があり、そこから薄い煙が流れ出ていた。


 その建物のすぐ上のところの岩壁に小さな横穴が空いていた。そこからも煙が出ている。地表から30モラくらいの位置で、穴の大きさは1モラほどだ。たぶん俺が空気を求めて必死に掘った穴だ。きっと、あの煙を見てワイトロードたちは俺がいることに気付いたのだ。


 危険な魔獣や魔物はもういないか? 俺は探知魔法で周囲を探ったが、大丈夫なようだ。俺の探知魔法は半径300モラの範囲を把握できる。その範囲で探知に掛かったのは一人だけだ。丸太小屋の中のロードナイト。動かないから眠っているのだろう。たぶんブルノだ。


 俺はエドリーの顔を思い浮かべながら、それがブルノであってほしいと願った。彼女はブルノと結婚の約束をしてると言ってたからなぁ。


 ゾンビの巣にも魔物の反応は無いから、さっきの絨毯爆撃で殲滅できたのだろう。逃がしてしまったワイトロードは俺の探知範囲外へ出てしまったから、どうしようもない。気掛かりではあるが、今は放っておくしかない。


 では、丸太小屋のロードナイトのところへ行こう。


 俺は丸太小屋に足を踏み入れた。ワイトロードたちがいた小屋だから内部は凄惨な状態だろうと覚悟していたが、拍子抜けするくらい普通だった。


 入口から入ると広いリビングで、奥にキッチンが見えた。木製の大きなテーブルがあり、大きめの窓からは外の景色が一望できる。寝室が3つあって、各部屋にベッドが2つずつあった。そのベッドの一つに男が寝かされていた。


 よかった。ブルノだ。ブルノは生きていた!


 だが首を噛まれている。検診魔法で診てみるとゾンビ虫が脳にまで達していることが分かった。俺は手早く調伏魔法を掛けてゾンビ虫のソウルを取り除いた。全身にキュア魔法を掛けたから治療は終了だ。


 ブルノを起こすべきだろうか? いや、この最下層らしき場所を俺一人でもっと探索したい。今、ブルノにこの場所を見せると、軍令大臣のガイザやザイダル神に報告するだろう。あいつらがこの場所を知ったら何を企てるか分からない。今回の作戦には3か月間の期間を与えられている。その期間をたっぷり使わせてもらおう。俺はブルノに向けて眠りの魔法をたっぷり放った。好い夢を見てくれ。


 さて、尋問だ。ワイトロード四体は草の上で眠っている。でも、どうやって尋問すればいいんだ? 拷問とか、俺にはできないぞ!


 ※ 現在のダイルの魔力〈296〉。

 ※ 現在のフィルナの魔力〈150〉。

 ※ 現在のハンナの魔力〈220〉。


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