表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/67

046 公爵たちを捕縛

 兵士たちが部屋になだれ込んで来て、俺を取り囲んだ。厄介なことになりそうなので、公爵には魔法でもう一度眠ってもらってベッドに移しておいた。


「おまえたち! 俺に手を出すなよ。俺を攻撃した者はブライデン王国への反逆者になってしまうぞ」


「泥棒のくせに何を戯けたことを言っている! こいつを捕らえろ!」


 隊長らしき兵士が叫ぶと、兵士たちが一斉に呪文を唱え始めた。バリア破壊の呪文だ。俺を取り囲んでいるのは十五人ほどだ。全員がソウルオーブを装着しているが、そんな魔力では一斉に魔法を発動しても俺のバリアは破壊できない。


 俺は自分のバリアが攻撃されているのを無視して、隊長らしき男に話しかけた。


「おまえたちの魔法では俺を捕らえるのはムリだ。それより、これを見ろ」


 王様からもらった私掠認可証を隊長に見せた。隊長はちらっと見たが無視して攻撃を続けている。


 私掠認可証の文字が小さいから見えなかったのだろう。俺はもう少しちゃんと見せようと隊長に近付いた。


「おのれ! 刃向うか!」


 隊長はバリア破壊魔法を中断して剣を打ち込んできた。ほかの兵士たちも同じように剣を抜いて打ち込もうとしている。公爵の部屋は広いが戦闘するには手狭だ。


 仕方ない。こいつらも眠らせるしかないだろう。


 俺はため息を吐きながらバリア破壊魔法を広範囲に放った。「パリン、パリン」という音が立て続けにしてバリアが壊れていく。


「ウワーッ!!」と悲鳴を上げながら兵士たちは部屋から逃げ出そうとするが、廊下にも兵士たちがぎっしり詰まっていて身動きができない状態だ。俺は遠慮なく眠りの魔法を撃ち込んでいった。兵士たちが次々と倒れていく。廊下にいるヤツらも同じようにして眠らせていった。後ろの方の何人かは逃げ去ったようだ。放っておこう。


 俺は部屋に戻って隊長らしき男を起こした。男の意識がはっきりしてくるのを見定めて、俺はもう一度、私掠許可状を見せた。今度は目の前でじっくり見せた。


 隊長はそれを読んで目を大きく見開いた。


「こ、これは!?」


 そう言ったきり固まってしまった。自分がどうしていいか分からないのだろう。


「俺はおまえたちの王様から私掠の認可をもらっている。マイモン公爵の捕縛もダンテ王からの依頼だ。おまえたちはそれを邪魔しようとしている。それがどういうことか分かるな?」


「わ、分かりました」


 隊長は頷きながら答えた。頬を引きつらせて卒倒しそうな表情だ。


「分かったなら、これからは俺が言うことに従うんだ。今から他の兵士たちを起こす。おまえは俺が盗賊ではなく、王様の依頼で動いていることを兵士たちに伝えろ。そして……」


 隊長は俺が指示したとおり他の兵士たちに説明して、公爵や部下のロードナイトたちを捕縛した。


 俺はまだ今回の捕縛を公邸の外に漏らしたくなかった。その理由は、商隊の護衛に出ているロードナイトがまだ七人残っていて、そいつらに公爵の捕縛を知られたくないからだ。そいつらが公爵に対してどれくらい忠誠心を持っているのかは分からないが、捕縛の件を知られると戦闘になる可能性が高い。下手をすると王都の中で内戦のような騒動になる恐れもある。


 俺を捕らえるために大勢の兵士たちがこの公邸に入ったため、それが公邸の外でどれくらいの騒動になっているのかも気になった。隊長に聞くと大丈夫だと言うが、この騒動はいずれ商隊に伝わるだろう。


 今回の騒動が商隊に伝わる前に、俺が商隊のロードナイトたちを潰すしかないだろう。商隊は明日か明後日、ブライデンの王都に到着するはずだ。その前に、相手を潰すのだ。魔樹海か原野の街道で戦うことになるな。


 それまでは、公爵の一族とその部下たちをこの公邸内に閉じ込めておくことにした。その監視は隊長や兵士たちに依頼した。


「俺を捕らえようと攻撃してきたことは見逃してやるから、公爵の一族やその部下たちが逃げ出さないように厳しく見張ってくれ」


 俺の要請を隊長は喜んで受けた。


 では、まずは王城に戻ろう。それから商隊との戦闘だ。


 ………………


 王城の正門で私掠認可証を見せると、上級将校らしき軍人が出てきて俺を案内した。応対が馬鹿丁寧だから王様から何か言われているのだろう。俺はバンダナとマントを身に着け顔にはストールを巻いたままだが、それで押し通すつもりだ。


 広間に案内された。体育館ぐらいの広さがある。そこには大勢の兵士や召使いが集まっていた。ロードナイトも全員がこの中にいるはずだ。一番前に王様がいて何かを話していた。


「おぉ、戻ってきたな。どうぞ、こちらへ」


 王様が俺に気付いて手招いた。


「皆をここに集めて話は済ませたぞ。そなたの友人は別室で食事中だ」


 俺は王様の言葉に頷いた。王様に公爵たちを捕縛して、駆け付けた兵士たちに監視を依頼したことを説明した。


「俺はマイモン商会の商隊を捕縛に向かう。捕縛した後に商隊の護衛と罪人の護送が必要になるから、ここのロードナイトを十人借りるぞ」


「それは構わぬが、その前にここにいるロードナイトたちの能力を元に戻してほしい」


「分かった。ではロードナイトだけここに残って、あとの者は仕事に戻ってくれ」


 俺はロードナイト全員のロードオーブを回復させた。ロードナイトたちは何も俺に話しかけてこない。目も合わせようとしなかった。王様から何も聞くなと言われているのだろう。


 俺が広間から出ようとすると、突然、後ろから誰かが斬り掛かってきた。当然、俺のバリアが弾き返した。振り返ると若い女性が剣を構えて俺を睨みつけていた。


「許さぬ! いくらお父様の依頼に応じたとは言え、私の部屋に押し入ったことは許さぬぞ!」


 あぁ、これは2階で寝ていた王女だな。俺を攻撃したことで、王女のロードオーブは再び停止している。そのことに王女自身も気付いているはずだ。他のロードナイトたちは固唾かたずを呑んで俺たちを見ている。


 王女は本気で怒っているようだ。だが、怒って当然だな。寝ているところを自分の部屋の扉を壊されて押し入られ、抵抗もできずに無力化されたのだから。


「すまない。謝るしかないな。あんただけでなく、ほかの人たちにも謝らねばならない。強引なことをして申し訳なかった」


 俺は頭を下げた。


「今回の件は余がそなたにお願いしたことなのだ。そなたが謝ることはない。王女が無礼なことをしてしまった。申し訳ない。余が甘やかして育ててしまったせいだ」


 王様は王女を睨みつけながら俺に謝った。


「無礼なのはこの男です。私は謝りません!」


 王女はそう言い捨てて出ていった。ロードオーブの機能を停止したままだが、いいのだろうか?


 ………………


 俺は十人のロードナイトたちより少し先行して出発した。俺の戦い方を見せたくなかったからだ。


 マイモン商隊の護衛たちとも一方的な戦いになった。商隊は魔樹海の街道を一列になって進んでいた。護衛は先頭に三人、最後尾に二人、中間に二人だ。最後尾から順に倒していった。運搬役の奴隷たちが騒いだために途中から護衛たちに気付かれてしまった。だが、魔樹海の中での戦闘は魔力もスキルも戦闘の経験も俺が圧倒していたようで、問題なくロードナイトたちを無力化できた。騒いでいる奴隷たちも眠らせた。


 1時間程して追いついてきた王様のロードナイトたちに後のことは任せて、俺は先に王城に戻った。


 ………………


 王様は俺が半日ほどで戻ってきたので、その速さに驚いていた。


「赤ん坊の捜索や俺たちの名誉の回復はどうなった?」


「手配済みだ。赤ん坊の捜索は時間が掛かるやもしれぬ」


「それは仕方ないな。では、王都の中にベアル親子が住む場所を確保してくれないか。ベアル親子が安心して王都で暮らしているか、俺は時々様子を見にくる。親子が心安らかにここで暮らしていれば、俺たちの名誉回復や獣人への差別撤廃が進んでいる何よりの証となるからな」


「分かった。そなたとの約束はきちっと果たす」


「では、俺はベアルを引き取って一旦ここを立ち去る」


「あ、少し待ってくれぬか。王女がそなたに謝りたいと言っておる」


 王様が別室に控えていた王女を呼びつけた。


「ソニアです。先ほどあなたに無礼を働いてしまったことをお詫びします。ごめんなさい。このブライデンが内戦にならなかったのは、あなたが父上からの依頼を引き受けて、横暴なマイモン公とその賊兵たちを捕らえてくださったからだと聞きました。それに罪なき獣人を助けて、その赤ちゃんも捜していると……」


 俺はソニアと名乗った王女を初めてじっくり見た。18歳くらいだろうか。キラキラ光る瞳を持った勝気そうな女性だ。


「いや、あんたが怒ったのは当然だ。謝ることはない」


 俺はそう言いながら王女のロードオーブを回復させた。さっき、俺を攻撃したことで王女のロードオーブは機能が停止していたままになっていたのだ。


 ソニア王女はそれが分かったのだろう。大きく目を見開いた。


「本当だったのですね!? 父上が言われていたことは。あなたには不思議な力があってロードオーブを自在に停止させたり回復させたりできると……」


「それは秘密にしてくれ」


「はい。それより、ソニアにあなたのお顔を見せてくれませんか」


「これ! そんな無礼なことを言うものではないぞ」


 王様の咎めに王女は不満顔だ。


「お顔もお名前も分からないというのでは困ります」


「もっと仲良くなったら見せるよ」


「きっとですよ」


 なんとなくソニア王女とはまた会いそうな気がした。


 ※ 現在のダイルの魔力〈265〉。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ