表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/67

044 王様からの頼み

 俺が王様にベアルの釈放などを要求すると、王様はそれを受け入れる代わりに俺に頼みがあると切り返してきた。転んでもタダでは起きないってやつか? 


「頼み? なんだ?」


「そなたは先ほどマイモン商会の話をしたな。このブライデンで一番大きなオーブ商だ。余の叔父に当たるマイモン公爵が裏で経営しているのだが、ありていに申せば、余はマイモン公に手を焼いておるのだ……」


 王様の話によると、マイモン公は王族の一人だ。王様の長男と次男、長女に次いで、4番目の王位継承権を持っている。だが、王族にもかかわらず、オーブ商で莫大な利益を上げて、それを元手に勝手にロードナイトの私設軍を作っているらしい。公爵自身もブライデンでは有名なロードナイトだ。その部下のロードナイトたちは公爵や商隊の専属護衛という名目だが、実質的には公爵の命令だけに従う私設軍だと王様は言うのだ。


 私設軍のロードナイトは三十人程度。ブライデン以外の国であれば国軍に所属しているロードナイトの数に匹敵するレベルだ。たしかに、王様にとっては脅威だろうな。


 公爵やその部下のロードナイトたちの横暴さが最近、目に余るようになってきたと王様は嘆いた。公爵は王様の命令に従わないだけでなく、裏で魔族と取引きをしたり、国民に対して勝手に政令を出したり、好き放題のことをやっているようだ。公爵の命令に従わない国民に対しては部下のロードナイトや私兵たちが取り締まりを行ったりしている。罪のない国民に暴力を振るうなどは日常茶飯事らしい。


 公爵が王様や国に対してここまで強気に出られるのは、王族で私設軍を持っているという理由だけではないだろう。公爵のバックにどこかの国か勢力がいるのではないだろうか。ここまで王様から話を聞いて俺はなんとなくそう直感した。テレビのドラマなんかを見ていると、そういう話の展開が多いからな……。


 俺の直観どおりこの話が尾を引いて後々大きく影響が広がっていくことになるのだが、このときはそんな大きな話に繋がっていくとは思ってもいなかった。


 王様の話はさらに続く。1か月ほど前に公爵が経営するマイモン商会が盗賊に襲われて、金庫に保管していたソウルオーブ1万個が奪われるという盗難事件が発生した。公爵は王都の警備が甘いせいだと王様を責めた。しかし、王様は公爵の自作自演ではないかと疑っている。なぜなら公爵はこの盗難を理由にして税の免除と私設軍の増強を王様に迫っているからだ。


 この盗難事件は俺やベアル親子にも関係がある話だ。俺たちが盗賊と間違われたのも、その背景にこの盗難事件があったからだ。


 もしかすると、俺やベアル親子が現れたのはマイモン公爵にとって渡りに船だったのかもしれないと王様は言う。ありもしない獣人盗賊団を仕立て上げて、盗難事件の罪をすべて俺たちに被せ、さらに公爵は私設軍を増強する理由にできるからだ。


 なんだか腹が立ってムカムカしてきた。許せないぞ! マイモン公爵!


 いや、待て待て。王様の言葉だけで動くと王様にまんまと乗せられるだけかもしれないぞ。マイモン公爵と会って話を聞くべきだろうな。まぁ、公爵が悪人だろうが善人だろうが、どっちにしてもブライデンの軍関係のロードナイトは全員を無力化するが。


「あんたが公爵に手を焼いている話は分かった。それで、俺への頼みとは何だ?」


「マイモン公爵の私設軍にいるロードナイト全員と公爵自身のロードオーブを使えないようにしてほしいのだ。余たちにやったことと同じようにしてな」


「無力化するってことだな? 公爵たちを無力化して、その後はどうするんだ?」


「余は公爵が反乱を起こし、内戦になることを恐れておるのだ。もし、そなたの手で公爵の戦力を無力にできれば、反乱や内戦のような国の危機に至ることなく公爵たちを捕縛できる。そうなれば、余は公開の場で公爵の罪を明らかにしてくれるぞ」


 う~む。王様は公爵に対して強い憤りがあるようだ。


「ロードナイトたちはどうするんだ?」


「あやつらも罪を問う。じゃが、全員がワルではないからな。余の軍に組み込む者と罰する者を選り分けよう。性質の悪い者どもは死罪にするか奴隷に落とすことになる」


「マイモン商会は? そのままにはしないのだろ?」


「国有化するか解体することになるだろう」


「聞いてると、あんたがすごく得する話ばかりだな」


「いや。余が得すると言うより、このブライデン王国が安泰になる話ということだ」


「なるほど。それで、その話に乗ると俺にはどういう得があるんだ?」


「もし余の頼みを叶えてくれるならば、そなたが望むことは何でもしよう。余ができることであれば何でも言ってくれ」


 俺が望むことと言えば、まずは優羽奈を捜すことだ。


「ある人を捜してほしい」


「人捜しだと? そんなことだけでいいのか? 何か欲しい物は無いのか?」


 そう言われてもなぁ……。


 何も欲しい物が無いというのが悲しい。そもそも俺はこの世界のことをろくに分かってないから欲しい物が思い浮かばない。優羽奈の捜索はすぐに始めてもらうとして、報酬については「王様への貸し」ということにしておこう。


 それに、もう少し王様から話を聞かないと依頼を受けていいかどうか決められない。まずは相手の情報が必要だ。


 王様に聞くと、ロードナイト三十人の内の十人はマイモン商会の商隊の護衛として旅に出ているそうだ。商隊はソウルオーブの原材料となるオーブ玉を仕入れて近々戻ってくる予定らしい。これは俺と因縁がある例の商隊だな。


 その商隊の護衛三人は既に俺とレオラで無力化済みだ。モーイット村の辺りで商隊を追い越したから、その商隊が王都に着くのは明日か明後日だろう。


 と言うことは、まず片付けなければいけないのは王都にいるロードナイト二十人と公爵自身だ。公爵たちは王都の中にある公邸にいるはずだと王様は言う。相手が気付かないうちに奇襲をかけるべきだな。


「よし、あんたの依頼を引き受けよう。報酬については今すぐには決められない。とりあえずはあんたへの貸しにしておく。俺が依頼したい人捜しの詳細についてはマイモン公爵の件を片付けて、俺がここへ戻って来てから内容を説明する。今は俺にはこの国でゆっくりしている時間はないんだ。だが時々戻ってくるから、いつか貸しは返してもらうぞ」


「そうか、承知した。じゃが、報酬については無茶な要求は受けられぬぞ」


「分かっている。心配するな。俺は今から公爵たちを無力化してくる。あんたは部下を起こして活を入れろ。まずは、あんたとそこで眠っている護衛二人を元に戻そう」


 俺はそう言って、王様と護衛二人のロードオーブを回復させた。


「教えてくれぬか。そなたが使うその不思議なスキルは何だ? どのようにしたらロードオーブを停止させたり回復させたりできるのだ? 余にも教えよ」


 ロードオーブ停止機能は正確に言えばスキルではないが、そんなことをこの王様に説明する必要はない。


「それは教えられないな。言えることは、俺は特殊なロードナイトで、そのスキルは俺だけが発動できるってことだけだ。ロードオーブを無力化させたり回復させたりするのは何度でも俺の一存でできるんだ。言ってみれば、そのロードナイトを俺が支配したようなものだな」


 俺がそう言ってニヤリと笑うと、王様は不愉快そうに顔を歪めた。


 この王様には自身の立場がどれだけ危機的な状況にあるかをもっとはっきりと言ってやらねばならないだろう。


「いいか。勘違いするなよ。俺に敵対しようとすれば俺は直ちにあんたたちのロードーオーブを無力化する。ついでに言っておくと、俺は自分が支配したロードナイト全員を一斉に無力化できるんだ。それも一瞬でできるからな。そうなると、この国の防衛力はガタ落ちだぞ」


 正確には一斉に無力化できるのは俺の探知範囲内だけだが、少し大げさに言っておいてもいいだろう。


 俺の話を聞いた王様の顔は少し強張っている。何かを考えているようだ。悪いことを企まないうちに釘を刺しておこう。


「俺を殺そうとしても同じだ。誰かに頼んで俺を暗殺しても、それはあんたたちが滅びることを意味するぞ。なぜなら、俺が定期的にあんたたちのロードオーブを維持するための特殊な魔法を発動しなければならないからだ。俺がその期限までに特殊な魔法を発動しなければ、あんたたちのロードオーブは無力化されるぞ。それはブライデン王国の滅亡を意味する。忘れるなよ」


 俺の言葉に王様は真っ青になった。俺を暗殺したら云々はブラフだ。俺の身を守るためのウソだ。こう言っておかないと、たぶん、王様は俺を暗殺しようとするからな。


「そ、それなら、そなたが不慮の事故か何かで死んだら、余や部下のロードナイトたちもロードオーブが使えなくなるということではないか!」


「心配するな。俺は死なない。万一、俺が死んだときは、俺の友人に代わりに処理してくれるよう頼んである。友人が俺の死因を調べてブライデン王国が俺の死に関与していないと分かったら、あんたたちに迷惑が掛からないよう上手く処理してくれるはずだ。俺は用意周到なんだ」


「そうか。それを聞いて少し安心したぞ。余はそなたと敵対する気など少しもない。むろん、暗殺など絶対にしないと約束しよう」


「分かった。それでいい」


 王様がどこまで信じたか分からないが、俺が言ったことが事実かどうか調べようが無いから信じるしかないだろう。ウソも方便だ。


「では、俺は行くから、あんたは城内と闘技場の部下を起こして活を入れろ。それと今回の件は緘口令かんこうれいを敷いて城外に漏れないように徹底しろよ。俺のことや俺が持っている特殊な能力も秘密だぞ」


「分かっている。言われるまでもない」


「ベアルの保護も頼んだぞ。俺は公爵たちを無力化したらここに戻って来て、ベアルを引き取る。俺が城に入れるように手配しておいてくれよ」


「それも了解した」


「では、行ってくる」


「ちょっと待て。そなたに渡す物がある」


 俺が出て行こうとしたら王様が呼び止めた。机の引き出しから何かを取り出して、ペンでさらさらと書き込みを行った。最後に王様は何かの呪文を唱えた。


「これを持っていくといい。余が認めた私掠認可証だ」


 王様が俺に箱を差し出してきた。文庫本くらいのサイズで軽い。髑髏どくろと剣のマークが彫り込まれている。どこかで同じような物を見たな。あぁ、あれだ。サイズは違うがアイラ神が俺にくれた身分証と似ているのだ。


「そなたの血を落とし込めば有効となる。やってみよ」


 アイラ神が俺にくれた身分証と仕組みは同じみたいだ。俺は指先を少し切って、自分の血を箱の小さな穴に垂らし込んだ。箱が緑色に光ったから登録は完了だ。


 確認しておこう。箱の裏側の窪んだ部分に指を乗せると箱が緑色に光って、箱の表面に文字が浮かんだ。


 〈私掠認可証……この認可証を緑に発光させる者がブライデン国王より私掠認可を受けた当人である。ブライデン王国または当人へ敵対する者に対して当人が自らの判断で敵対者を討伐しその財産を没収することを認める。この認可はブライデン王国の国内外で有効とする。なお、当人への敵対行為はブライデン王国への敵対と同じことと見なす。 ブライデン国王 ダンテ・ブライド〉


「この私掠認可証は余とそなたは敵対しないということを示すためのものだ。それと、余の兵士たちをそなたから守るためのものでもある。そなたが公爵やその部下のロードナイトたちを討伐したときに、余の兵士たちがそなたに敵対することを防ぐためにな。そなたに敵対しても勝てるはずがない。余の兵士たちに余計な血を流させたくないからな」


「なるほど」


 俺の要求を王様は受け入れ、その代わりに俺も王様の頼みを聞くことにした。ウィンウィンの取引きってことだろう。おまけにブライデン王が発行した私掠認可証をゲットできたのはラッキーだ。


「それと、その認可証とは相反するが、公爵を討伐したときに、その財産はブライデンへ返してくれぬか。公爵は莫大な財産を隠し持っていると思われるが、もともとはブライデンの国や国民のものだからな。そなたへの報酬は別の形でするということで、どうか承知してもらいたい」


「それは初めからそのつもりだ。では、行くぞ」


 夜明けまでもう時間が無い。人の姿が見分けられるほど明るくなり始めた。俺はバンダナを巻きマントを羽織った。顔にはストールを巻いたままだ。


 ※ 現在のダイルの魔力〈265〉。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ