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043 王様に要求を告げる

 闘技場から王城までは1ギモラも離れてなかった。さっきのロードナイトたちへの尋問で必要な情報を得ることができた。闘技場の出口や王城までの道順、王城の警備、そしてロードナイトたちの宿舎の位置も尋問で確認済みだ。


 俺は暗い街中を王城に向けて走った。探知偽装で種族も魔力も探知できないようにした。ステルスモードだ。もちろん俺の姿は見えるから、時々酔っぱらいや巡回の兵士がいれば、回り道をしたり蜘蛛糸移動に切り替えたりして、無用な争いは避けた。


 王都の中の家々は石造りで2階建てか3階建てだったが、さすがに王城は30モラくらいの高さがあって、すぐに分かった。ロードナイトの宿舎は城内と言っても城とは別の建物だ。簡単に言えば3階建ての高級アパートで、それが6棟ある。軍にはロードナイトのチームが6つあるから1チームに1棟ということだ。ロードナイト一人ひとりに宿舎が割り当てられているようだ。


 警備は皆無だ。まさかブライデンで最強の者が寝泊まりする宿舎が襲われるとは誰も考えていないのだろう。


 宿舎に泊っているのは2チームで合わせて四十人のはずだ。探知魔法で探るとそれぞれが部屋にいた。全員で三十七人だ。残りの三人は休暇を取って街中の自宅に戻っているか、遊びに行ってるのだろう。


 大半のロードナイトが寝ているようだ。部屋の中で動いているのは二人だけだ。ともかく一部屋ずつ静かに潰していくのだ。


 まず1棟目の1階1号室から。入口は施錠されていた。熱線で焼き切る。1LDKだ。まさか宿舎で襲われると思っていないのか、バリアも張らずに寝ている。残念ながら男。まぁ、今はどうでもいいが。


 魔法でぐっすり眠ってもらって、ロードオーブの機能を停止させ、沈黙の魔法も掛けておく。無力化するのに一人3分だな。三十七人全員に対してこの調子でうまく無力化できれば2時間くらいで制圧できるな。まぁ、そう簡単にはいかないだろうが……。


 結局、1階は六人全員が男で問題なく無力化した。2階の途中で起きているヤツに遭遇。軍人は悲鳴を上げたりしないところが素晴らしい。俺を見て冷静にバリアの呪文を唱えようとしたから、その前に魔法で眠ってもらって簡単に無力化できた。俺は無詠唱で魔法を発動するから1秒も掛からないのだ。2階も全員男で八人を無力化した。


 3階は五人で全員女だった。女は厄介だ。一人目から今までと違い、バリアを張って寝ていた。夜這いを警戒してるのか? 仕方が無いので「雁字搦め」を掛けてからバリア破壊だ。バリアが攻撃されたらガンガンとうるさいはずだが、この女はよほど深い眠りだったのかバリア破壊を掛けられても最後まで気付かなかった。これではバリアを張っている意味がないと思うが……。バリアを張っていたのはこの女だけだった。問題なく女全員を無力化できた。


 もう一棟も同じようにして三十七人全員を無力化した。要した時間は2時間半。


 次のターゲットはブライデンの王様だ。城のどこにいるのか分からないが、最強のロードナイトという話だから探知魔法ですぐに居場所は見つかるだろう。ともかく王城へ急ごう。


 見回りの兵士や召使いなど城内にいる者はすべて片っ端から眠りと沈黙の魔法を掛けて無力化した。ソウルオーブでバリアを張っている兵士にはバリア破壊&眠り&沈黙のスキルを使って一気に無力化した。これは言うまでもなくテオドのスキルだ。


 城内には十三人のロードナイトがいた。全員が魔力〈200〉以上だ。一人だけ魔力が分からないヤツがいる。俺よりも魔力が高いということだ。これが王様だな。


 城の2階に七人いる。それぞれが部屋で眠っているようだ。これが王様の親衛隊だろう。全員を無力化していった。親衛隊は十人という話だったから残りの三人は護衛に就いているのだろう。


 城の3階の一人目。豪華な部屋で寝ていた。若い女だ。たぶん王様の娘だろう。王女様もロードナイトって凄いな。とりあえず無力化する。


 二人目は男だ。もう一人のロードナイトと一緒に寝ている。これは王子様とその女護衛だな。二人とも簡単に無力化できた。


 四人目も男だ。こいつも王子様のようだ。女護衛と一緒に寝ていた。この王家はこれが家風なのかもしれないな。二人を問題なく無力化した。


 3階には一般人の女性も何人かいた。豪華な部屋に寝ているから、これは女王様や側室かもしれない。ゆっくり容姿を確かめたいところだが時間が無い。ともかく手当たり次第に無力化していく。


 そして城の4階。王様の部屋はすぐに分かった。その前に別の部屋で待機していた召使いたちを全員無力化しておく。


 王様の部屋にはロードナイトが三人いる。護衛が二人と王様だな。全員が起きているようだ。気付かれたかもしれない。


 一人が廊下に出てきて俺の方に近付いてきた。ここに来るまで静かに無力化してきたのに、なぜ気付かれたのだろう? ともかく今は敵を倒すしかない。俺はそいつに向けて手枷のスキルを発動した。相手は女だ。その女は手に絡んだ蜘蛛糸を解こうとしながら甲高い声で警告を発した。


「賊です! 王様、賊が侵入しています!」


 部屋から別のロードナイトが飛び出してきた。そいつにも「手枷」を発動して、続けて「雁字搦め」で身動きができないようにする。最初の女も同じように「雁字搦め」にした。残りは王様だけだ。魔力が分からないから要注意だ。たぶん、入口に向けて攻撃魔法を放とうと身構えているだろうな。


 部屋の入口から腕を少し出してみる。相手の力量を確かめるためのオトリだ。腕は指先までバリアで意識的にカバーしておいた。直撃を受けてもなんとか耐えれるだろう。


 案の定、熱線魔法が俺の腕のバリアに当たって強烈な光を発した。衝撃で腕が痺れる。バリアの耐久度が60%に落ちたが、すぐに回復した。


 狭い部屋の中でまともに攻めたら危ないな……。これは、あれを使おう。


 入口の柱の陰からシッポの先っぽをちょこっと出して部屋の中を覗く。俺のシッポは潜望鏡のようなもので、こっそり覗くのに最適だ。


 シッポの目で部屋を覗くと王様らしき人物がいた。こっちを見ているがシッポの指には気付いていないな。シッポの先っぽをもう少しだけ出して「手枷」を発動する。


「うわっ! なんだ、これは!?」


 叫び声が聞こえると同時に俺は飛び出して「雁字搦め」を発動して王様をグルグル巻きにした。後はいつもどおりだ。王様とその護衛の女二人を無力化した。


 これでブライデンの城内にいるロードナイトはすべて無力化した。ブライデン王都にいる軍のロードナイトもほぼ無力化した。王様は俺の手の中だし、ブライデンの王城は制圧したと言っていいだろう。


 夜明けまで後1時間半くらいだ。さて、王様と交渉開始だ。相手が王様と言ってもこちらが勝者だ。それらしく対応するべきだな。


 俺は近くの椅子に腰掛けて、王様に絡まった蜘蛛糸を分解した。王様は見た目は40歳くらいだ。がっしりした体格で口髭と顎髭をきれいに整えている。威厳がある顔立ちでハンサムと言っていいだろう。沈黙と眠りも解除してやろう。


「目が覚めたか? 起き上がって座れ」


 俺は椅子を指さした。王様は眠りから覚めたばかりで、まだぼんやりしているようだ。


「いいか? あんたは負けたんだ。この城は俺が制圧した。あんたの家来であるロードナイトや兵士は全員を無力化した。あんたも含めて、今は魔法を使えない状態だ。分かるか?」


 俺の言葉に王様はようやく何があったか思い出したようだ。すぐに呪文を唱え始めた。いつものパターンだな。何度もやって魔法が使えないことが分かったらしい。


「何をしたのだ!? おまえは誰だ?」


「今からそれを教えてやる。聞け!」


 俺は王様に対して今の状況を説明した。言葉だけでは信じられないだろうから、王様を連れて親衛隊の宿舎とロードナイトの宿舎を回った。全員が無力化されていることに王様は驚愕して言葉も出ないようだ。


 俺たちは王様の部屋に戻って交渉を再開した。


「分かっただろ? ブライデン王都にいるあんたの家来は全員がロードオーブを使えない状態になって眠っている。だが、俺はそれを普通の状態にも戻せるんだ。まず、あんたを普通の状態に戻してやろう」


 そう言って王様のロードオーブの機能を回復させた。


「おぉ!」


 王様はすぐさまバリアの呪文を唱え始めた。そして、俺に対して熱線魔法を撃ち込もうとしてロードオーブが自動停止した。


「俺を攻撃しようとしたら、その時点でロードオーブは自動停止するようになっている」


「くっ!!」


 王様は悔しそうに顔を歪めた。


「もう一度、あんたのロードオーブを回復させてやる」


 王様の表情が少し明るくなる。


「どうだ? 魔法が使えるようになったろ?」


 王様が頷く。


「今度は止める」


 すると、魔法が使えなくなったことが分かったのだろう。王様の表情が沈んだ。


「どうだ? 今の状況が理解できたか? 夜が明けて、あんたの家来たちが城に来て今の事態に気付いたら大騒ぎになるだろう。それが城外に漏れたらブライデンという国が保てなくなるだろうな。つまり、今のブライデンは危機的な状況ということだ」


 王様はそれを理解したのだろう。青白い顔で頬が引き攣っている。


「それで、余にどうしろと言うのだ?」


「心配するな。俺は金や地位をあんたに要求するわけではない。俺の要求はささやかなことだ」


 俺は王様に要求を告げた。盗賊と間違われて連行されたベアルの釈放、盗賊と間違われた俺やベアルたちの名誉の回復、行方不明になっているジュリの捜索、そしてブライデン王国における獣人に対する差別の撤廃だ。これらの要求を即刻実行するよう求めた。


 俺がこのような要求をすることになった経緯も説明した。マイモン商会の商隊の護衛たちと争いになったことや、レオラが傷付けられ手込めにされるところを俺が助けたこと、手込めにしようとした護衛を殺したことなどだ。


「俺はあんたの敵ではない。あんたしだいでは味方になってもいい。あんたにとっては、ある意味、この事態は部下に活を入れて部下を掌握するチャンスかもしれないぞ」


「それは? どういうことだ?」


「あんたは俺に襲われたのではない。あんたが負けたことは俺以外は誰も知らないからな。今夜のことは、あんたが俺を招いてたるんでいる部下に活を入れるために仕組んだことだ。夜が明けたら部下を集めてそう言えばいいんだ」


「なるほど……。そなたは余の敵ではなく味方だ、今回のことは余がそなたを使ってすべて仕組んだと、そういうことにするのだな」


 王様は俺が言ったことをじっくり考え込んでいる。


「実際にそなたが話していた盗賊の件は今初めて聞いたことだ。余がそなたから事情を聞いて、そなたの仲間を釈放しても矛盾は無いな……」


 王様はそう呟きながらさらに何かを考え込んでいる。しだいに顔に赤みが差してきた。


「そなたの要求を受け入れよう。そなたの言うとおり、夜が明けたら家来を集めて活を入れることにする。じゃが一つ、そなたに頼みがあるのだ」


 あれ? なんだか王様の表情に凄味が出てきたぞ。なにか企んでいるのか?


 ※ 現在のダイルの魔力〈265〉。


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