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041 ブライデンの王都に侵入する

 翌日。起きてすぐに脚の怪我を確かめた。うん。完全に治っている。横穴の中を走ってみたが全然痛くない。もう大丈夫だ。


 レオラはあまり眠れなかったみたいだ。少し腫れぼったいまぶたをしていた。可哀そうに。ベアルと赤ん坊のことが心配で堪らないのだろう。


「心配するな。必ずベアルたちは救いだすから。俺は今からあんたたちが住んでいた小屋を確認して、それから村へ行ってみる。様子を探って帰ってくるから、ここで隠れて待っていてくれ」


「分かりました……」


 レオラは頷いた。なんだか熱っぽい目をして俺を見ている。疲れてるのだろう。


「必ず戻って来てください」


 俺はレオラに手を振って隠れ家を出た。魔力は〈130〉に偽装済みだ。


 レオラたちの小屋には誰もいなかった。誰かが来た形跡も無い。では街道に出て村へ行ってみよう。


 浮上走行で原野を走って進んだ。街道まで2ギモラだ。半分くらい進んだところでロードナイト二人を探知した。260モラほど先の茂みの中に隠れている。二人の魔力は〈212〉と〈165〉だ。たぶん、あの男の仲間だな。男を捜しにくる途中で俺の姿を見つけて隠れたようだ。不意打ちをする気だろう。


 俺は気付かない振りをして、そのまま進んだ。距離が30モラくらいになったところで男たちが飛び出してきた。こちらの思う壺だ。


 二人は剣をかざして走り寄ってくる。俺は得意の「雁字搦がんじがらめ」を立て続けに発動して蜘蛛糸を二人に絡めていく。二人とも俺に辿り着く前に蜘蛛糸に脚を取られて転倒した。昨日やったのと同じように、グルグル巻きにしてバリアを破壊してから眠りの魔法を撃ち込んだ。


 さて、どうするか。まずはこの二人を尋問してベアルのことを聞き出そう。その前に男たちの体からロードオーブを取り出して預かっておくとしよう。尋問するときに彼らのロードオーブを言わば人質にするのだ。


 そう考えて、最初に倒した男の手に触れると、突然、メニューにメッセージが表示された。


 〈ロードオーブ停止機能が使えるようになりました。オンにしますか?〉


 何だ? いつも、突然だな。


 俺の「ロードナイト機能一覧」の中に「ロードオーブ停止機能」というのが新たに追加されていた。それをヘルプで調べてみた。この機能をオンにすると、戦いなどでロードナイトを眠らせるかマヒさせた場合に、相手のロードオーブの機能を好きなときに停止させることができるようだ。ロードオーブを停止させると魔力が供給されなくなるから魔法やスキルが使えなくなるってことだ。


 この機能をオンにしていると相手が自分の探知範囲内に入れば、いつでもそいつのロードオーブを停止させたり復活させたりできるらしい。また、俺を攻撃しようとした時点ですぐに、そいつのロードオーブが自動停止するようだ。


 ロードオーブを停止させる相手は何人でも登録できるとある。探知範囲内に登録済みのロードナイトが複数いる場合は、その全員を一斉に無力化できるらしい。


 この機能は使えそうだ。相手のロードナイトを殺したりロードオーブを没収したりせずに、相手のロードオーブを停止させたり復活させたりできるのだ。これを使えば、相手は俺に逆らえなくなるだろう。


 俺はこの機能をさっそくオンにして使ってみた。男たち二人のロードオーブを停止させて、眠り解除の魔法を放った。


 男たちは目を覚ますと、すぐに何があったか思い出したようだ。藪の中で起き上がって、それぞれが呪文を唱え始めた。バリアの呪文だな。だが、バリアは張れるわけがない。男たちもそれに気付いたようだ。


「何かヘンだぞ! 魔法が使えない!」


「おい! 何をしたんだ!?」


 口々に叫びながら、腰まである藪の中でもがいている。うるさいだけだな。ということで、もう一度二人を眠らせた。


 この機能は役に立つだけに、もっと細かく何ができて何ができないのか調べておく必要がある。ちょうど目の前に実験台が二人もいるし、ほかの機能やスキルでも試したいことが色々あるのだ。


 ………………


 実験が終わった。次は尋問だ。二人の男を交互に目覚めさせながら取り調べを行った。男たちはすっかり怯えてしまって素直に何でも喋った。


 男たちに話を聞くと、なんだかとんでもない騒動になっていることが分かった。1か月ほど前にブライデン王国で最大手のオーブ商が盗賊に襲われて、金庫に保管していたソウルオーブ1万個が奪われた。円に換算すると200億円だ。そのオーブ商はマイモン商会という名前だ。そして二日前、同じマイモン商会の商隊が再び襲われた。襲ったのは獣人の盗賊。つまり俺ってことだ。


 これは獣人の盗賊団が横行し始めたに違いないということになり、その情報がマイモンの商隊からモーイット村に伝わった。それは大変だと村では大騒ぎになり、村長は直ちに獣人盗賊団の討伐要請をブライデン王国へ出したそうだ。


 熊族のベアドは盗賊の一人としてブライデン王国で尋問されるらしい。村に常駐していたロードナイト二人がベアドを護送して、昨日の昼に出発したという話だった。ロードナイトたちは討伐要請書も携えて、罪人のベアドは眠らせて、念力魔法で運んでいるようだ。


 ところで赤ん坊はどうなったのだろう? 男たちの話の中にジュリのことが出て来ない。聞いてみると、男たちは目を逸らして赤ん坊がどうなったか知らないと言った。小屋で拉致して商隊までは連れていったが、そこから先は本当に知らないらしい。商隊の誰かが赤ん坊の世話をしていたはずだが、モーイット村に着いたときには話に出なかったし、護送隊も赤ん坊は運んでないと男たちは言った。行方不明ということか……。


 護送隊とはすでに丸一日の差がある。追いつくのは難しいかもしれないな。ここは隠れ家へ一旦戻って、レオラに事情を説明してから護送隊を追いかけよう。


 この二人をどうしようか? 殺してしまうほど非道なことはしてないが、ここで解放してしまうと俺たちが危ない。仕方ないからベアルやジュリを救い出すまでは、ロードオーブを停止させた上で眠らせておこう。俺たちの隠れ家に閉じ込めておくしかないな。


 俺は二人を眠らせて念力魔法で隠れ家まで運び、レオラに事情を説明した。


「ジュリが行方不明……」


 レオラは絶句した。すぐに脚を引きずりながら横穴から出て行こうとした。俺はそれを急いで止めた。


「離して! 離してください。ジュリは私が見つけるの!」


「待て! あんたが出ていったら却って危ない。あんたも盗賊だと思われてるから捕まるぞ。あんたは脚が治ってないから戦えないし、あんたがジュリの行方を捜し回れば、ジュリがあんたの赤ん坊だと分かって盗賊の子供ということで殺されるかもしれないぞ」


 俺がそう言うと、レオラは泣き崩れた。


「どうしたら私たちが盗賊ではないって認めてもらえるの? ジュリは盗賊の子供ではないのに……、どうしたらジュリを捜せるの?」


「まずは父親のベアルを捜して救い出そう。ジュリも俺が捜すよ。だからあんたはここで待っていてくれないか。戦うのも隠れて捜すのも、あんたより俺の方が上手いからな」


 レオラは悲しそうな表情で頷いた。盗賊に間違われているから、本当の盗賊を捕らえて俺たちが無実であることも認めさせたい。俺が蒔いた種だから俺がどうにかしないといけない。でも、言っておいて今さらだが、ハードルが高いな……。


 男たち二人を眠らせたまま監視するようレオラに依頼した。念のために二人を閉じ込めておくための部屋を新たに作り、二人が目覚めてもレオラに危害を加えられないようにした。


 そして、ブライデン王国に向けて出発した。レオラには15日以内に戻ると約束した。それを過ぎたらレオラは自分で行動を起こすということだ。


 豹族であることを隠すために、俺は捕獲した緑っぽい迷彩マントを羽織り、頭にも同じ迷彩色のバンダナを巻いた。


 護送隊に追いつこうと、俺は街道を走って進んだ。探知魔法で商隊や旅人がいることが分かると、余計な接触を避けるために魔樹海や原野に入って迂回した。モーイット村にも近寄らなかった。


 結局、護送隊には追いつけず、隠れ家を出て3日後の夕方、ブライデンの王都が見えるところまで来てしまった。


 原野の小高い丘から王都の全体が見渡せた。少し霞んでいるが奥には水を湛えたブライデン湖が見えた。マップによると、この湖は琵琶湖くらいの大きさで、その三方が魔樹海に囲まれているようだ。湖の北側だけは平野で、こちらに向かって扇状に畑地が広がっている。湖の畔に街壁に囲まれたブライデンの王都があった。まるで万里の長城のような存在感のある石造りの壁が王都の周囲を半円形に囲っている。王都の直径は5ギモラくらいあるかもしれない。王都の中も石造りのような建物が多数見えるが、意外にも緑が多いのが印象的だ。


 〈知識〉によるとブライデンの人口は十万人程度で、もともとは魔樹海の海賊が作った人族の国だ。ソウルオーブ貿易の中継点であり、商隊や旅人から通行税を徴収している。この王都に本拠を置くオーブ商や私掠船団も多いらしい。この国は神族には支配されてなく、自らの力で国を守っている。国土が魔樹海の奥地に位置しているため王都の中に魔物や魔獣が侵入することも多いようだ。それに備えて、この国に属するロードナイトが二百人ほどいるそうだ。普通、神族に支配されている王国だとロードナイトの数は五十人くらいらしいから、ブライデンの戦力が如何に高いかが分かる。と言うか、ブライデンの国土がそれだけ厳しい環境の中にあるということだ。二百人いるロードナイトのうち、百二十人くらいが軍に所属していて、その半数くらいが王都を守っている。残りの半数は国境警備や商隊、私掠船の護衛として出ているらしい。


 今俺がいる位置から王都の街壁と正門が見える。ここから10ギモラくらい離れているが、遠視の魔法を使えば手に取るように様子が分かった。王都への出入りは厳しくチェックされているようだ。これは夜を待って、蜘蛛糸移動で街壁を越えた方が安全だな。


 まずは王都に侵入して、こっそりベアルを捜して救い出すのだ。


 ………………


 そして、夜。日が暮れてから3時間くらい経った。マントやバンダナを身に着け、捕獲品の中にあったストールを顔に巻いた。兵士や住民に出会ってしまったときは眠らせるつもりだ。顔を見られたくないからな。


 俺は街壁の下に立った。暗視の魔法を使って街壁や周囲を観察した。街壁は20モラくらいの高さだ。街壁の上部通路は頻繁に兵士が巡回しているようだ。高さ10モラくらいのところに街壁を抉るように窪みが続いている。どうやらそこは街壁を巡る側面通路になっているみたいだ。たぶん監視や防御のために使われる通路なのだろうが、今は誰もいない。では、そこから入らせてもらおう。


 俺は蜘蛛糸移動を使って側面通路に立った。意外に広い通路だ。いざというときに大砲か何かを設置するのかもしれない。この通路のどこかに街へ入る入口があるはずだ。俺は入口を探して通路を走り始めた。


 入口は簡単に見つかった。大きな入口だ。高さは5モラ、幅も5モラくらいある。しかも扉は無いし、監視の兵隊もいない。なんだか不用心だな。


 その入口から中に入って道なりに進んだ。通路は下り坂で緩やかなカーブになっている。側壁も天井も石壁でできていて、まるでダンジョンに入っていくような感じだ。もしかして、これは本当にダンジョンの入り口なのかな? しかし、常時発動している探知魔法には特におかしな動きは察知されない。


 突然、地響きとともに後方で何かが落ちたようなドスンという大きな音がした。


 なんだ? 俺は通路を戻ってみた。何が起こったかすぐに分かった。


 さっきは無かった壁が通路を塞いでいた。金属でできた壁で頑丈そうだ。これは落とし戸だ。もしかすると俺は罠に掛かったということか!?


 ※ 現在のダイルの魔力〈265〉。


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