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033 お猿さんたちをやっつけて!

 夜明けの1時間前。マーカイ村を飛礫猿つぶてざるの群れが襲ってきた。探知魔法で周囲を探ると、村の至る所に猿たちがいると分かった。厩舎の外に出て、暗視魔法を使って周りを見回したが特に変わった様子はない。遠くから猿の鳴き声や村人の悲鳴が聞こえるが、猿たちはまだベルガドの家までは来ていないようだ。


 この村は魔樹海に隣接しているから魔物や魔獣が襲ってくることもあるだろう。だが、襲ってきたのが飛礫猿の群れとなると事態は深刻だ。猿たちは百頭くらいで群れを作っている。しかも群れのボスは魔獣猿のはずだ。


 この村には三百人ほどの村人がいるらしいが、それとは別に国境を警備するための兵士が百人ほど駐屯している。その中にはロードナイトが二人いるそうだから、駐屯兵とロードナイトが村人たちを守ってくれるだろう。


 ともかく今は、一刻も早くエディルとミクを隠れ家に待避させねばならない。


 俺は急いで地下通路を通って物置小屋へ向かった。


 エディルたちは外の騒ぎで目を覚ましていて、不安そうな顔をしていた。俺の顔を見てミクが抱き付いてきた。


「飛礫猿たちが村を襲ってきたみたいだ。だが、心配するな。隠れ家でじっとしていれば大丈夫だ。さぁ、行こう」


 俺の言葉にエディルは頷いて、ミクの手を引いて隠れ家へ通じる階段を下りていった。俺は階段の入口を木箱で隠して、エディルたちの後を追った。


 隠れ家は石の家の地下5モラくらいの深いところにあるから、外の騒ぎは全く聞こえない。テーブルと椅子、食料、水、麦藁の寝床や簡易トイレまで用意しておいたから、1週間くらいはこの中で隠れていられるはずだ。部屋の中は俺が発動した照明魔法で明るい。照明は20時間くらいは持つだろう。


 とりあえずエディルたちを寝床に座らせた。


「俺はこれから外の様子を見てくる。おまえたちはここを動くな。寝てろ」


「ダメ。ニャロも一緒にいて」


 ミクが俺の腕を取った。心細いのだろう。


「ミクは兄ちゃんが守ってやる。ニャロは父さんたちを助けに行くんだから我慢しろ」


「そうなの?」


 ミクはエディルの話が本当なのか、俺に尋ねてきた。俺は一瞬、言葉に詰まった。


「ミクは父さんが好きなのか?」


「うん、大好き。大きい母さんがイジワルしても、父さんが優しくしてくれるから」


 俺が聞くと意外な答えが返ってきた。ベルガドは子供には優しいようだ。


「大きい母さんや、大きい兄ちゃんたちは?」


「イジワルするからキライ。でも、お猿さんに殺されるのは可哀そう。助けてあげて、ニャロちゃん」


「エディルもミクと同じ考えなのか?」


「うん、あれでもおれの兄ちゃんだ。ニャロならすごく強い魔闘士だから、猿なんかに負けないよな。だから、父さんや兄ちゃんたちを助けてやってくれ」


「大きい母さんもか?」


 エディルはちょっと迷ったが、頷いた。


「兄ちゃんたちの母さんだからな……」


 意地の悪いアベラルや、腐ったメシを俺に出し続けた女など助けたくないが、ミクやエディルに頼まれたら仕方ない。


「分かった。じゃあ、助けに行ってくるから、おまえたちはここでおとなしく待ってるんだ」


「お猿さんたちをやっつけて!」


 ミクの言葉に後押しされて、俺は地下通路から厩舎に向かった。階段を上がり、麦藁の寝床をずらして頭を出すと、目の前に猿がいた。探知魔法で厩舎の中に猿がいるのは分かっていたから、魔力剣で一刀両断にする。


 牛や馬たちは夜になるといつも俺が眠りの魔法を掛けているから、猿が襲ってきたことも知らずにぐっすり眠っている。


 厩舎の外に出ると、アベラルや護衛たちが猿と戦っていた。と言っても、アベラルたちは石の家の3階に陣取って、家の壁面をよじ登ってくる猿たちを窓から身を乗り出して火砲の魔法で撃っているだけだ。


 探知魔法で探ると、家の周りや壁面には合わせて十頭くらいの猿たちがいることが分かった。


 俺は斬りまくりのスキルを発動して猿たちを一気に殺していった。家の周囲にいた猿たちを殲滅した後は、家を中心に同心円状に範囲を広げながら村に散らばっている猿たちを殺しまくった。


 駐屯部隊の近くは兵士たちが猿と戦っていたから、近寄らずに遠慮した。


 生き残っている猿がほとんどいなくなった頃、魔樹海からそいつが姿を現した。群れのボス。魔獣猿だ。


 魔獣猿は真っすぐに俺に向かってきた。俺は村の広場に移動した。魔獣猿と戦うなら広い場所の方が戦いやすいからだ。


 魔獣猿は「グゥオーーッ」と咆えて両腕を高々と挙げた。魔獣猿の頭上にスイカくらいの大きさがある岩石が数十個現れて一斉に放たれた。俺に向かって飛んでくる。すべてが誘導弾だ。


 俺は蜂落としのスキルを発動して迎撃のための熱線を次々と放った。全弾破壊と言いたいが、1個だけは間に合わずに俺のバリアに当たった。眩い光を発して砕け散った。


 魔獣猿は両腕を挙げたまま固まっていた。自分の必殺技が通じなかったことが分かったのだろう。俺はその隙に一気に魔獣猿へ迫って、その右脚を切り落とした。以前、テオドが俺に見せてくれた戦法だ。


 魔獣猿はドンと地響きを立てて倒れた。俺はすかさず電撃マヒと眠りの魔法を撃ちこんだ。こいつを殺さないのは訳がある。エディルにラストアタックを取らせて、エディルをロードナイトにしようと考えているのだ。


 俺が猿たちと戦っていたのは40分くらいだろう。もうすぐ夜明けで、辺りは明るくなり始めていた。


 念力魔法で魔獣猿を持ち上げてベルガドの家まで戻ると、剣撃の音が聞こえてきた。まだ、猿が残っていたのか!?


 しかし、護衛たちが戦っているのは猿ではなかった。相手は十人ほどの人族だ。


 あっ! こいつらはあの盗賊たちだ。猿の群れが村を襲った後で火事場泥棒をしようという魂胆かもしれない。


 魔獣猿を道端に降ろした後、俺はバリア破壊&眠り&沈黙のスキルを発動して、周りにいるヤツらを片っ端から眠らせていった。これはテオドからコピーさせてもらったスキルで、相手を殺したくないときに役に立つ。盗賊と護衛の区別がつかないから、護衛たちも一緒に眠らせた。


 盗賊は残っていないか? 探知魔法では盗賊と村人の区別がつかないから、念のため家の周囲を探したが怪しいヤツはいなかった。


 よし、大丈夫のようだ。では、エディルを外に連れ出して魔獣猿へのラストアタックを取らせよう。


 俺は厩舎から地下通路を通って隠れ家に向かった。エディルとミクは寝床の上でおとなしく待っていた。


 俺が隠れ家に入っていくと、二人はパッと顔を輝かせた。


「ニャロちゃん、どうなったの?」


「父さんや兄さんたちは?」


 二人に一斉に聞かれたが、俺は言葉に詰まった。


「うっ! ちゃんと確かめてないんだ。猿と盗賊たちをやっつけるのに忙しくて。でも、家の中に人が何人もいたから、たぶん大丈夫じゃないかな……」


 探知魔法で家の中に人族が何人かいることは分かっていた。戦っているような動きではなかったから、盗賊ではなくてベルガドの家族だろう。


 だが、俺の言葉にミクは頬っぺたをプクッと膨らませた。


「とにかく家に行ってみよう。それと、エディルには仕事を頼みたいんだ」


「おれにしごと? どんなこと、するんだ?」


「行ってから話す。とにかく外に出よう」


 俺はエディルたちを急かせて隠れ家を出た。


 外に出ると、ベルガドの家族と何人かの護衛たちが家の外に出ていて、一カ所に集まって騒いでいる。見ると、ベルガドやアベラルなど家族の者が全員いた。


「よかったな。家族はみんな、無事みたいだぞ」


 俺の言葉にエディルとミクは「ありがとう」と言って微笑んだ。


 ベルガドたちが集まっているのは、俺が魔獣猿を寝かせておいた場所だ。魔獣猿はマヒさせていて動かないから死体だと勘違いしているのかもしれないな。


「ベルガド、何をしている?」


 もう芝居をする必要はないから、俺は遠慮なく尋ねた。


「うっ!」


 ベルガドは俺を見て言葉を詰まらせた。


「もう芝居は必要ないぞ。もう一度、言おうか?」


「え?」


 ベルガドは俺が言ってることを理解していないみたいだ。


「俺がこの家に留まる理由はなくなった。すぐに俺は出ていくから……」


 俺がベルガドに説明をしていると、横からアベラルが口を挟んできた。


「おい、ニャロ! 何を訳が分かんねぇことを言ってるんだ? また、電撃罰を食らいたいのか?」


 そう言って、首輪の呪文を唱え始めた。だが、従属の首輪は機能を止めているから電撃罰の呪文など発動するはずがない。


 アベラルは電撃罰の呪文を失敗したと思ったのか、何度も繰り返して唱えた。


「無駄なことをするな」


 俺は首輪を外しながら言った。


 ※ 現在のダイルの魔力〈230〉。


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