表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/67

027 ソウルの移植その1

 ――――――― フィルナ ―――――――


 目の前で起きていることが信じられなかった。ダイルが殺されてしまった。


 それまでダイルは強かった。ククル兄と私を守り、海賊たちが怯んだところで何かのスキルを発動して凄い速さで海賊たちを倒していった。


 しかし、どこからか現れた男が電撃魔法を使って一撃でダイルを倒してしまった。そんなことってあるの?


 とにかく今はククル兄を守らなくてはいけない。私は男に向けて熱線魔法を撃った。しかし男のバリアに簡単に弾き返されてしまった。逆に私はバリア破壊魔法を食らって、一発でバリアを壊されてしまった。


 ダメだ。魔力が違いすぎる。私では勝てる気がしない。


 男は私が反撃しないことを見極めると、ダイルの死体に群がっている海賊たちに何か指示を出している。どうやらダイルが亜空間バッグに入れていたソウルオーブやお金などが、ダイルが死んだことで辺りに散らばって、海賊たちが我先に奪い合っているようだ。その隙にアイラ神様に助けを求めよう。


『それで、ダイルはいつ殺されたの? 1時間以内なら助けられるかも……』


 ダイルが殺された経緯を掻い摘んで話すと、アイラ神様はダイルを助けられるかもしれないと言う。神族は死んだ人間を生き返らせることができるのだろうか? そんな話は聞いたことがない。


『ダイルが殺されたのは数分前です』


『分かったわ。すぐにそっちへ行くから、あなたは自分が殺されないように時間稼ぎを……』


 私がアイラ神様と念話で話していると、その男が近付いてきた。何かの紋章が入った黒っぽいマントを着ている。ほっそりした顔立ちだ。30歳くらいだろう。


「おまえがマイダール商会の娘だな? そっちの豹族の男は誰だ?」


「あなたこそ誰ですか?」


「おれは神族でザイダルだ」


 神族!? 私は急いで、そのことをアイラ神様に伝えた。


「尊い神族の方が、なぜ、この場に?」


「おれが率いる兵団から救助の連絡が入ってな。それで、急いでワープしてきたのだよ」


「兵団? 海賊の間違いでしょ?」


「フッフッフ。たしかに、おまえから見れば海賊と言われても仕方ないな。マイダール商会の娘が船で何か貴重なお宝を運ぶらしいと連絡が入った。そのお宝をおれの兵団がもらい受けに来たのだからな」


「それは残念でした。貴重なお宝と言うのは、このククル兄のことです」


 私は石化したククル兄をアイラ神様のところへ運んでいたことや、数日前にアイラ神様が石化を解除してくれたことをザイダル神に説明した。


 そこへアイラ神様がワープしてきた。救援に駆け付けてくれたのだ。


「久しぶりね、ザイダル神。相変わらず海賊ごっこをして遊んでるのね」


「どういうことだ? なぜ、アイラ神が現れたのだ?」


 ザイダル神が少し慌てて聞いてきた。私から説明してあげよう。


「私が念話でアイラ神様に連絡したからです。数日前に私はアイラ神様の使徒にしていただきました。私を攻撃することはアイラ神様を攻撃することになります。神族の戒律に反しますよ」


 神族の戒律とは「神族とその配下の者は他の神族やその一族を攻撃してはならない」ということだ。これは数少ない神族とその一族を守るために定められた戒律だ。もしこの戒律を破れば神族全体を敵に回すことになる。その話は、アイラ神様の使徒になるときに教えてもらったことだ。


「くそっ! そういう話だったのか……」


 ザイダル神は悔しそうに顔を歪めていたが、すぐにニヤリと笑みを浮かべて再び口を開いた。


「だが、その戒律を破ったのはおまえだ。先に攻撃したのはおまえだからな。おまえは神族に対して攻撃してきたのだ。その罪の重さが分かっているのか?」


 たしかに……、そうだ。私はアイラ神様の使徒になっているから、私もザイダル神に対しては攻撃はできない。攻撃してはいけなかったのだ。でも、私が先に手を出してしまった。


 大変なことをしてしまった。なんとかして言い逃れないと……。


「そ、それは、あなたがダイルを殺したからです。それに、あのときは、あなたが神族だとは知りませんでしたから」


「ダイルというのは、このロードナイトの名前か? おまえとはどういう関係だ?」


「私の大切な友だちでした。私やククル兄を助けてくれた恩人です」


「このロードナイトは高い魔力を持っていたようだな」


 ザイダル神は少し考え込んでいたが、何か思いついたのか、アイラ神様に顔を向けた。


「アイラ神よ。おまえの使徒がおれを攻撃した。これは神族の戒律に反する行為だ。このことを神族の間で公にしてもよいが、それは少し面倒だ。だが、罰を与えねば気が済まない。おれはこの娘を死罪としたいが、それでよいか?」


 私を死罪!? でも、ザイダル神は本気ではないみたいだ。


「そんなの絶対にダメ。拒否するわ」


 よかった! アイラ神様は拒否してくださった。それを聞いたザイダル神はニヤリと顔を歪めた。なんだか陰険そうな厭らしさがある。鳥肌が立ちそうだ。


「では、代わりにアイラ神をおれの第一夫人として迎えることで手を打とう」


「またその話を持ち出すの? 今までも何度も断ったでしょ。断固拒否よ。誰があなたなんかと結婚するものですか!」


 凄い拒絶だ。この二人の間には今までもそういう話があったということらしい。


「フフフッ、相変わらずだな。おれが持っている神族封じの首輪を使っておまえを無理やりにでも花嫁にしたいところだが、そんな無粋な真似は止めておこう。

 その代わりに……。さて、どうするか……」


 ザイダル神は何か考える素振りをした。


「そうだな……。神族の仕来しきたりにしたがって損害を賠償してもらうとしよう。おれと五条受諾ごじょうじゅだくの契約を結ぶのだ。金額は1年でソウルオーブ500個で我慢してやるよ。それと、五条受諾の契約を満たすまでは、この娘を人質としておれの手元に置くぞ。この娘と使徒従属の契約を結ぶ。それでどうだ?」


「五条受諾? フィルナを死罪にするとか、あたしに神族封じの首輪を使うとか言ったけど、あなた、初めからそれが狙いだったのね? フィルナと少し相談するから待ってもらえる?」


「その娘はフィルナという名前か。よい名だ。いくらでも相談しろ」


『フィルナ、聞いたわね? ザイダル神はあなたを人質に取ると言ってるわ。使徒従属の契約というのは、あなたに使徒用の従属の首輪をつけさせて、あなたを束縛するということよ。ザイダル神はあなたに対して、いつでも、どこにいても罰を与えることができるようになるの。罰と言うのは電撃魔法よ』


『そういうこと……ですか。私はアイラ神様のためであれば、人質になることも、従属の首輪も受け入れます。でも、私のせいで、アイラ神様にご迷惑が掛かることが耐えられません。その五条受諾の契約というのは何ですか?』


『神族の間で結ぶ契約よ。相手の神族に何か損害を与えたときに、その弁済べんさいとして相手からの条件とか要求とかを五つ受諾して実行するという契約なの。嫌な条件なら何回でも拒否はできるけれど、五つの条件を満たさないうちは、相手に毎年一定の金額を支払い続けなければいけないの。それが1年でソウルオーブ500個ということよ。満期は15年。条件を一つ満たす毎に3年が軽減されるわ』


『ということは、ザイダル神様からの条件をすべて拒否したら、15年間、毎年ソウルオーブを500個支払うということですか?』


『そういうことになるわね』


『そんな! やめてください。私のためにアイラ神様がそのような屈辱的な契約を結ぶなど、あってはなりません。どうか、私を殺してください』


『いえ、この条件を受け入れるわ。これはあなたのためだけではないの。あたしのためでもあるのよ』


『それは? どういうことですか?』


『もし、五条受諾の契約を断れば、ザイダル神は神族の総括審判に訴えるかもしれない。そうすれば確実に負けて、あなただけでなく、あたしも罪を問われる。たぶん、あたしは強制的にザイダル神と婚姻させられるわ。そんなの絶対に嫌なのよ。あいつ、見ているだけで鳥肌が立つの』


 それは私もそうだから、アイラ神様の気持ちは分かるけど……。


『でも、もしそうなら、ザイダル神はこんな裏取引をせずに初めから総括審判に訴えるのでは? ザイダル神はアイラ神様と結婚したいのでしょう?』


『たしかに、あいつはあたしとの結婚を望んでいるけど、ザイダル神も総括審判は嫌なのよ。なぜなら、ザイダル神は今は自分の私掠兵団を作って自由奔放に遊びまわっているけど、神族の総括審判を受けたら、たぶんザイダル神も神族封じの首輪をつけることになって行動を制限されるわ。なんと言っても今回の揉め事の原因はザイダル神の私掠兵団にあるのだから。ザイダル神はそれが分かっているから、この件を公にしたくないのよ』


 なるほど、神族にも苦手なものがあるということだ。神族の総括審判とか、神族封じの首輪とか初めて聞いたけど……。


 今度のことをアイラ神様もザイダル神も公にしたくない事情があって、それをお互いに分かっているようだ。


『分かりました。それなら……、五条受諾ではなく三条とか二条とかに減らすよう、ザイダル神と交渉したらどうでしょうか?』


 私の言葉にアイラ神様は困ったような顔をされた。


『交渉をしている時間が無いのよ。ダイルの命を救うためにね。だから、五条受諾の契約を受け入れるしかないわ。そのためには、フィルナ、あなたに大事なお願いがあるの』


『はい、なんでしょう?』


 ダイルの命を救う? ダイルは死んだのに、どういうことなの?


『ダイルを浮遊ソウルにしたくないのよ。そのために、あなたにお願いしたいことがあるの。ククルさんの体をダイルに提供してほしいのよ。今ならまだダイルのソウルは体に留まっているわ。殺されてからソウルが離れるまで1時間が限界よ。まだ間に合うから、どうか、お願い』


 ククル兄の体にダイルのソウルを入れるってこと!?


 考えもしなかったが、神族ならばソウルを移し替えることができるのだろうか?


 ※ 現在のダイルの魔力〈230〉。

 ※ 現在のフィルナの魔力〈150〉。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ