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冷徹な闇の女神様の孤独を癒したら、甘々束縛生活が始まったんですけど!?  作者: 鐘楼


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レイヌ様、ちゃんと話せば怖くないですよ?

 思いつく限りの調味料を生成してもらって、レイヌ様との仲の進展もあって良い気分でミナちゃんの……というより村長の家に戻ろうとしていると、道中で大きな声が聞こえた。


「もうこんなところ嫌だ! 出て行ってやる!」

「滅多なことを言うな! この村を見捨てるというのか!」


 それは若い男性の声と、年配の男性の声。見たところ、どうやら親子の喧嘩らしい。


「スルグ様の領域は、活気があるし明るいし、こんな陰気な村とは大違いだ! ここにいたって何もいいことがない!」

「それでもここはお前の故郷だろう! レイヌ様の加護があってこそお前は……」

「加護? スルグ様はもっと加護を下さるって噂だぞ! 俺たちはスルグ様のところに行く!」

「リンダ、あんたも出て行くって言うのかい?」

「……うん、ごめん……」


 若い男性と並びながら、申し訳なさそうに佇む同年代の女の子。カップルのようだけど、まるで上京すると言って喧嘩しているみたいな話だ。

 できることなら喧嘩は止めたいけど、何も知らない上に巫女扱いされているあたしが出てもややこしくなるだけだろう。そう考えて、あたしは大人しくミナちゃんのところに戻るのだった。



「春乃さん! おかえりなさい! ……それ、なんですか?」


 出迎えてくれたミナちゃんが、あたしの抱える調味料の数々について聞いてくる。


「ふっふ~、これはだね……えーっと……」


 得意げに自慢しようと思ったけど、どう説明しようか迷って言葉に詰まる。レイヌ様にはバレてしまったけど、ミナちゃんたち村の人々にはまだ異世界のことは黙っておいた方が良いだろう。


「そ、そう! レイヌ様のお恵みだよ!」

「お恵み……!?」

「料理を捧げた対価にくれたの! これを使って更に料理に励めって」

「な……レイヌ様が対価に、こんな見たこともない品を……!? 春乃さん、あなたは……」


 それっぽいカバーストーリーを組み立てて話すと、ミナちゃんの目がどんどん尊敬に溢れていく。う、嘘なのに……ほんとはただおねだりしただけなのに……心が痛い!


「こ、これは大変なことです……! すぐにおじいさま……村長に伝えなきゃ……!」

「ちょちょちょっと待って!」

「? どうかしましたか?」

「えっと、レイヌ様はあんまり騒ぎになってほしくないみたいだからさ。これは内緒にしておいて欲しいなーって……」


 本当のところ、これはあたしが個人的に貰った物だし、あたしは大きな騒ぎになるのが嫌でそう言った。


「わかりました。春乃さんがそう言うなら」


 すると、ミナちゃんは本当に素直に言うことを聞いてくれた。心が痛い。一緒にこの調味料使った美味しい料理食べようね……。


「それでさ、話は変わるんだけど……ここに帰ってくる途中で村の人が喧嘩しててさ……」


 気になっていたことをミナちゃんに聞いてみる。すると、ミナちゃんは嘆くような顔をして説明してくれた。


「……よくあることなんです」

「よくあること?」

「最近、若い者たちはスルグ様の領域に憧れて出て行ってしまうことが多くと、そう聞いています」


 スルグ様。あたしもその名前は知っている。レイヌと対になる存在で、この世界を二分している光の男神。『コントラスト』のゲーム中でも主人公を導く重要な役割を担っていたので、その人柄は知っている。ゲームの通りであれば、光そのものというか、太陽の良い部分を切り取ったみたいな存在なので……まぁ正直、レイヌ様より人気があるのもさもありなん、といった感じだ。


「ミナちゃん、スルグ様の領域って、そんなに人気があるの?」


 あたしが尋ねると、ミナちゃんは複雑な表情を浮かべた。


「はい。スルグ様の領域には、大きな街もたくさんの村もあって、人々は活気に満ちて暮らしていると聞きます。それに、スルグ様は時たまこちらの領域にも様子を見に訪れてきて……その度に、スルグ様の人柄に惹かれていく者も増えていって……」

「え!? スルグ様って闇の領域にも来るの!?」

「は、はい。レイヌ様を訪ねるついでに我々のことも隔たりなく気遣ってくださります」

「はぁ~」


 たしかに、あたしの知るスルグならば自分の領域の人間でなくとも親身になってくれるだろう。客観的に見て、生け贄のような手段でしかコミュニケーションを取っていなかったっぽいレイヌ様よりも彼を選ぶ若者の気持ちも理解できる。

 というか、スルグ様はレイヌ様に会いに来るのか。ゲームの時代とは違って、今はまだ結構仲が良いんだろうか。


「私も……正直なところ、レイヌ様よりもスルグ様の方が……信頼が置けます」

「あ、ちょ、ちょっと……」

「? なんですか?」


 多分だけど、レイヌ様は今もこの会話を聞けるし、聞いている。だから、こういう発言は機嫌を損ねるんじゃないかと思ったんだけど……それだったら、さっき見かけたカップルなんかはただでは済まないだろう。


「あの……そうやってここを出て行く人たちに、レイヌ様は何もしないの?」


 あたしの質問に、ミナちゃんは首を振る。


「去って行く者に罰が下ったという話は聞いたことがありません」

「そうなんだ……」


 正直、ちょっと意外だった。レイヌ様は人間に感謝を忘れさせないように生け贄を求めていたのに、実際に村を離れて他の神に仕える人たちには何もしないなんて。


「よし……決めた。考えても分かんないし、次にレイヌ様にお会いするとき、それとなくそのことを聞いてみよう」

「えぇ!? レイヌ様に直接そんなことを尋ねるなんて……」

「大丈夫。ちゃんと話せば、答えてくれるよ。レイヌ様優しいし」


 そう言って微笑んでみても、ミナちゃんの心配そうな顔は晴れなかった。知っているレイヌのイメージとあたしの話すレイヌ様の印象が一致しないんだろう。……今度、一緒にレイヌ様のところへ行ってみようかな?


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