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冷徹な闇の女神様の孤独を癒したら、甘々束縛生活が始まったんですけど!?  作者: 鐘楼


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レイヌ様のこと、教えてください!

「怒らせてしまったね」

「はい……いや、スルグ様のせいですよね?」

「間違いないね」


 なんか共犯にされそうだったのであたしは悪くないことを主張すると、スルグ様は笑って認めた。割と愉快な一面があるのは原作通りだなぁ、なんて思いつつ、その表情が……なんというか、心底嬉しそうに見えて。


「なんか……嬉しそうです?」

「! そうかもしれない……いや、そうだ。私は嬉しい。あんな怒り方をするレイヌは初めて見たものだから」

「……」


 あんな怒り方、というのはスルグ様があたしのことを話題にしてからのことだろうか。それより前のやり取りはいつも通りだったみたいだし。

 いや……それよりも。レイヌ様はともかく、スルグ様はどう見たってレイヌ様に友好的だ。原作……五千年後の世界では、世界のために消滅させるしかない存在だと語っていたのに。


「あの、スルグ様にとって……レイヌ様はどういう存在なんですか?」

「……!」


 スルグ様が目を見開く。そして、その瞳が誰より優しそうなものへと変わる。


「キミは本当に……いや、そうだな……私とレイヌは互いに欠かせない存在なのだ。私と彼女の力が拮抗していなければ、暴走の危険がある」

「え、そうなんですか!?」

「……というのが、立場の話。そして私個人としては……彼女には負い目がある。だからこそ、彼女が自らの猜疑心と恐怖に苦しんでいる現状を良く思っていない」

「はぁ……」


 どちらかが欠けると暴走とか、初耳なんですけど。後半の言葉も、負い目とか大事な部分はうまくぼかされていて、この人はちゃんとレイヌ様を心配しているんだ、ということくらいしか分からなかった。そんなあたしの内心を見透かしたのか、スルグ様は締めくくる。


「とにかく、キミには期待している。どうか巫女として、レイヌを支えてほしい。私では彼女を救うことはできないと、本当は分かっているから」

「あ、あの!」


 なんか寂しそうな顔をしてまとめようとするスルグ様の言葉を遮る。たしかに、レイヌ様とスルグ様は相性悪そうだし溝がありそうだし、スルグ様がレイヌ様をあたしに託そうとするのも分かる。だけど、だったら。


「ヒントください!」

「は……ひ、ヒント?」

「レイヌ様についてです!」


 それくらいは協力してくれても良いんじゃないか。つまりは、レイヌ様が絶対教えてくれなさそうな、なぜ必要もないのに人間に加護を与えるのかという疑問だ。この答えを、スルグ様なら知っているんじゃないかという希望。


「なんでレイヌ様は……」

「ちょっと待った」

「え……」


 その質問には答えられない、とか言うのかと思ったら、スルグ様は手を振りかざしあたしたちがいる場所を光で包み込む。光が止むと、あたしとスルグ様の周りには半球状の膜のようなものが展開していた。


「これって……」

「レイヌには聞かれたくない話かなと、そう思ってね」

「お、お気遣いどうもです……」


 たしかに、こういうこと勝手に聞いたらレイヌ様は絶対怒る。危ない、そしてさすがスルグ様だ。


「それで、何かな? 私の知る限りではなんでも答えるし、嘘偽りはしないと誓おう」

「あ、はい。その、レイヌ様とスルグ様って、別に信仰が力になったりとか、人間がいなきゃ消えちゃうとか、そういう存在じゃないですよね?」

「……そうだね。我々の存在や力は人に依ることなく確立している」

「だから、お二人が人間に加護を与えるメリットって、別にないですよね? いや、スルグ様は分かるんです。でもレイヌ様は……人間不信だし、裏切りをあんなに恐れてて。なんで、それでも人間に加護を与えてるのかなって……」

「──想像以上に、核心を突くね」


 あたしの言葉に、スルグ様は驚嘆していた。やっぱり、ここがレイヌ様を理解する鍵で間違いないようだ。


「……その慧眼に免じて、まずは謝罪しよう。先ほど私はキミに我らの重要な事実を伏せてやり過ごそうとした」

「暴走とか、負い目とかの話ですか?」

「その通りだ」


 ここでそれを謝罪するってことは、その辺りについても話してくれるってことだろうか。意を決したのか、スルグ様は鋭く息を吐く。


「私とレイヌは、もとは一つだった」

「え……!?」


 ……知らない。そんな設定は初耳だ。


「一つであった頃は、どちらかと言えば私に近い存在で、変わらず人を導こうとしていた。だが……失敗した。ある日、人々は私の力を我が物にしようと反旗を翻した」

「……っ!」

「夢にも思っていなかったことだった。愛した存在に裏切られるなど、耐えられることではなかった。許しがたいことだった。私は怒りのまま人々に罰を与えようとして……踏みとどまった。だが、怒りや失望は消えることなく……抑圧されたそれらによって自我の崩壊を予感した私は、それらを力と共に切り離したのだ」

「それが、レイヌ様……?」


 衝撃的な話だ。裏設定としてはあったのかもしれないけど、そんな事実はゲームで描写されなかった。先ほどレイヌ様がスルグ様に言っていた《《また》》裏切られるぞというのは、二人が一つだった頃を指しているってことなのだろうか。


「以来、我々は力と世界を等分し、今日まで至るわけだが……もう分かるだろう。私が人を許し親しむのは、何も私が成熟しているからでも、善きものだからでもない。本来向きあうべき負の感情を、すべてレイヌに押しつけてしまったからでしかない」

「……それが、負い目ですか?」


 スルグ様は、静かに頷いた。


「故に、私はレイヌのやり方や在り方に強く抗議することなど出来るはずもない。かと言って、彼女の民が生け贄を強いられていることに目を瞑ることもできず……なんとか、話し合いをしようとレイヌを訪ねていた」


 それが失敗続きだったのに、唐突に現れたのがあたし。それは、スルグ様が期待してしまうのも無理はないかもしれない。


「……お二人のことは分かりました。でも、あたしの疑問はまだ答えてもらってません」


 この際、暴走の話はいい。どうせ二人の均衡が崩れるとよくないとかそういう話だろう。それは、あたしがレイヌ様を支えるのにそこまで関係はない。


「……なぜレイヌが人々に加護を与え続けるのか、だったね」

「はい」

「単純な話だ。一つだったからこそ、分かる」


 スルグ様が、あたしの目を真っ直ぐに見つめる。あたしがもはや単なる興味で聞いてはいないことを認めてくれたのか、スルグ様は答えを口にする。


「怒りに焦がされても、猜疑に囚われても、人間を嫌悪しても。それでも彼女は、人に、誰かに必要とされたいんだ。それが、私たちの根源だから」

「───」


 ほんの短い時間だったかもしれないけれど。あたしの脳裏に、レイヌ様の色んな表情が浮かんでは消えていった。


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