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ラノベ作家と予言の書  作者: ふりまじん
かくれんぼ

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インディーズ


少し混乱しながら、私はミネルバの話を聞いていました。

これから、新シーズンが始まるにあたって、役職バトルが始まるのだそうです。が、私はそのようなものには興味がありません。ビデオゲームは作者が好きではありませんでしたから、私もそれほどしたことはありませんし、面白いとも思いませんでした。仮想空間で戦って何が楽しいというのでしょうか?

そんなことより、作者です。

ああ、あの方は私の事など忘れて、どこかで新しい物語を楽しんでいるのです。いいえ、それならまだ良いのです。1番怖いのは、もう、物語を書く事に飽きてしまったかもしれません。


コーヒーを一口。最高ブレンドを自分で淹れては見ても、作者がいなければ美味しいとは思えないのです。作者の笑顔、困り顔、怒った顔。私たちは何度、こうして、コーヒーを一緒に飲んだのでしょうか。

あの頃の楽しい日々を思うと、彼女を失った自分を想像して恐ろしくなるのです。

そして、離れていることが恐ろしくも感じるのです。アストラル界の時間は相対的に流れています。

まるで浦島太郎のように、こうしてコーヒーを飲んでいる私の数分は、作者の3年なんて事もあり得るのです。私が魔王になる頃、もし、作者が逝ってしまったら…そんな事を考えると居ても立ってもいられなくなるのです。


立ち上がりました。もう、我慢の限界です。

私はゲームをすることをやめました。作者に会うのです。そして、私を思い出していただくのです。

私が淹れたコーヒーを作者が嬉しそうに飲む。あの素敵なひと時を取り戻すのです。

ストーリーテラーの私が、モブキャラのようにゲームをプレイする必要はありません。

どちらにしても、勝手にゲームをしている輩。そんなものは追い出してしまえば良いのです。

歩き出した私の腕をメイザースが止めました。


「どこに行く気かね?」

そい聞かれて私は静かにメイザースの手を離しながら言いました。

「魔王を倒しに行ってきます。」

私の言葉に、メイザースは困った顔で苦笑した。

「それはやめた方がいいね。」

と、彼は金縛りの術を私にかけておきながら止める。

「いやです。私はつまらないゲームに付き合う気はありません。」

そうです。作者と私の時間を早く合わせてしまわなけれは、手遅れになるかもしれません。

「つまらない?それはレディに失礼じゃないかね?」

「いいえ!これは作者の世界を冒涜した者のつくり出した蛇足ではありませんか!」

思わず声が荒くなる。そんな私をメイザースは悲しげに見つめて肩をすくめた。


「ああ、そんな顔で見つめないでくれないか。私も切なくなるからね。」

と、憐れむ顔をされて正気に戻りました。全く、私としたことが、何を熱くなっていたのでしょうか。

「それは失礼しました。さあ、これで切なくならずに済みましたね?では、どうして、私を止めるのか聞かせて頂きたい。」

私はメイザースをまっすぐ見つめた。いざとなったら彼らと戦う気持ちの準備は整いました。

メイザースは私の気持ちの変化に気がついたように穏やかに笑って、それから、ゆっくりと話始めた。

「チートという行為が不正を表すと言う事は知ってるね?」

「ええ。ゲームの世界では害悪なプログラムを未許可でインストールさせて有利に戦う不正行為でしたね?」

「そうだ。『他者が作った、プログラム、MODというものをゲームにインストールする行為』だ。が、MODは決して悪いものばかりではない。巨大なオープンワールドを展開すれば、必ず『バグ』という不良プログラムが生まれる。これを修正する『パッチ』と呼ばれるものもMODの仲間と言えるだろう。

これは、基本、制作会社から提供されるが、インディーズなどのもう少し緩い集まりの場合、ボランティアとしてゲーマーが提案する場合もあるのだよ。」

メイザースの話に私は不快になってきました。だからどうだというのでしょうか?私はゲームなど興味はないのです。

「ゲームの説明を聞いている時間はありません。」

そう、私の作者は…もう、若くはないのです。彼女が3歳のとき、王子様ごっこをしたあの頃から、時は過ぎていったのです。長いと思われた魔法の呪文『死が2人を分つまで』の誓いの効力は一日、一日と、薄れているのです。

「しかし、聞いてもらわないとね。これは、オープンワールドではあるけれど、ビデオゲームではない。私の魔術体系を利用して作り上げた、アストラルトリップの高騰魔術なのだよ。これだけの規模のものを、アストラル界に形成するのは、正直に告白すると、私でも不可能なのだよ。それを、魔術など行ったこともない素人の年老いたご婦人が作りあげ、起動している。これは、とても危険な事なのだよ。

レディは人間で、そして、アストラル界での失敗は精神に強く影響する。」

メイザースの言葉が胸に刺さりました。


そうでした。私は人ではありませんし、作者は、あのひとは…年老いたか弱い女性なのです。

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