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そうぞうしたタンサイボウな異世界で  作者: 吉田玲
チャプター1 序章
18/22

第18話 潜入

 地を駆け森を駆け街に出た。さすが王都。大きな道路の脇には出店が所狭しと並んでおり、絶えず人は移動し、活気を忘れることのない様子だ。

 おっと、俺達は観光をしに来た訳では無い。むしろ、人目に触れてはいけないのでこの大通りを通るのは危険だ。


「少しこの道を外れると、人通りがガラリと変わるからそこを通るよ。」


 自称探偵もとい師団長、フランソワ・ヴィドックは的確にルートを構築していく。人目に触れず、怪しまれないよう迅速に移動する。

 少し大通りから外れると、さっきとさほど変わらない場所かと思うほど人の気がない。それだけ大通りが栄えている証拠か。むしろ栄えすぎて過疎化が進むんじゃないかと不安になってしまうが、そんなことは関係ない。今は彼の住処となる王都の城内にある兵舎に向かう。

 話を聞くと、なんでも師団長クラスとなるとやはり待遇は違うようで、部屋も下っ端兵士に比べると1人で悠々自適な暮らしが待っているようだ。どこにでも貧富や階級の差はあると実感した。


 感心している暇はない。もう少しで城に到着する。門に向かって右側から壁を伝って裏の方に回り込んだ。丁度城の南側に到着するとそこには地下へと続く小さな隠し扉があった。


「また地下か」


 思わず愚痴を漏らす。


「仕方ない。僕だけが知っている道というのも限られくる。さぁ、急ごう!」



 彼は左手に持った手燭(てしょく)に乗っている蝋燭(ろうそく)に火をつけ辺りを照らす。そして、周りの土に偽装された分厚い鉄のドアの取手に手をかけて、ゆっくりと動かしていく。


 通路は、少しかがむ程度しか高さはなく、通路も人ひとりがようやく通行できる程の非常通路に思える。東条アリスを背負っているのでさらに走行が困難だが立ち止まってもいられない。確実に一歩ずつ、前へ、前へと進む。

 蝋燭(ろうそく)の光は、僅かに手を伸ばすほどの余裕しかない。それに比べると現代の科学技術の発展は目まぐるしい。新海の持っているスマホのライトなどに比べると遥かに性能が低い。

 なぜヤツはスマホを使わないのだろうか。と、気になったので少し背負っている東条の重心を右に移し左手でポケットを探りスマホを出すと…………おかしい。電源がつかない。いや、起動する気配すらない。ただの板のようだ。もしかして、俺達が普段使っているようなものはここでは使えないのだろうか?


「おい、スマホがつかないぞ。動く気配もない。一体どうなってるんだ?」


 どうやら、まだ俺がこの世界を理解出来ていないことに呆れているのか、少しため息混じりに


「新海くん……この世界には電子機器は存在しないんだよ?」


「……は?」


「あのね、この世界に存在しないものは使うことが出来ないんだ。だから、パソコンとかタブレット端末とかそういった電子機器……僕達が元の世界で普段使ってるものはほとんど……いや、すべて使えない。この世界にアイテムは持ち込めないようになっている。その代わりの魔性力(アイネガイエスト)さ」


 要するに、この世界は想像力又は創造力をエネルギー、原動力として成り立っているわけか。そうなると、この世界の全ての人が能力を使えることになる。


「それじゃあ、全人類が魔法使いみたいなものか」


「残念ながら、そうではない」




「この世界の人々に、そうぞうをする力はない」




 この時の俺はまだ無垢な心だった。




 そう信じたい、この時までは。




 彼の言ったことに理解出来なかった。常識が邪魔をしていた。



 俺が見た世界は真っ暗だった。



 それから彼との会話はなく、ただひたすらに彼が住まう兵舎へ向かった。

 そこへ着く頃にはもう無垢な心などどこかへ消え去った。






「まぁ、東条さんをそっちの部屋に、新海くんはそこに椅子に座って休んでな」


 足腰の限界などとうに過ぎ去った故に、体はオイルを注し忘れたブリキのようにいうことを聞かない。なんとか体を動かしてアリスを隣の部屋のベッドに寝かせ、俺は元の部屋の椅子に腰を下ろした。


「はは、随分とやられた顔をしてるね」


 正直話す余裕もない。なんせ、最後に話してからしゃがんだままの体勢で約30分も歩いたのだ。さらにアリスも背負っていたので彼の倍以上は疲れていた。


「これからなんだが、君はこの国の王様に報告しなければならない。不正入国したのだから、犯罪者扱いになる。だけど、この僕が入れたとなれば話は変わってくるだろう? そこで、僕も一緒に報告するんだ。話すのは全て任せて。君はそばにいるだけでいい。」


 そんな虫のいい話があるものか。と思ったが、彼は師団長である。それなりの権利等は持ち合わせているだろう。そう思い、俺は全てを任せた。疲れているせいもあって特に話も聞かずに重ね返事をした。


「少し休んでから、王様のもとへ行こう」

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