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縄張り争い
人間もさほど通らない路地の奥で、二匹の猫が向かい合っている。
尾を揺らし、低く声を出しながら、じりじりと距離を詰める。
どうやら、縄張りの確認らしい。
吾輩は少し離れた場所で、それを眺める。
無駄なことをする。
……だが、ああして決めておかなければ、落ち着いて眠れないのだろう。
吾輩には関係のない話だ。
吾輩は欠伸をひとつしながら、騒がしい猫たちを眺める。
低い唸り声が、しばらく続く。
互いに距離を測りながら、決して引かない。
やがて――人の足音が近づいてきた。
その瞬間、二匹は同時に動く。
弾かれたように、それぞれ別の方向へと走り去った。
あとには、何事もなかったかのような静けさだけが残る。
吾輩はしばらくその場に留まり、空気の揺れを眺めていた。
……やはり、落ち着かない場所だ。
ゆっくりと踵を返し、吾輩は表通りへと歩き出す。
人の流れのある場所の方が、よほど静かに過ごせる。




