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夜
夜はいい。
昼間よりも空気は柔らかく、音も少ない。
吾輩の足取りも自然と軽くなる。
地面の冷たさも、風の流れも、よく分かる。
暗さは不便ではない。
むしろ、その方が都合がいい。
……にもかかわらず、人間は違うらしい。
あの者たちは、わざわざ強い光の下に集まる。
闇を避けるように、明るい場所へ、明るい場所へと引き寄せられていく。
ある者は、強い光の下で足を止める。
箱の前に立ち、しばし動かない。
やがて何かを取り出し、満足したように去っていく。
光に用があるのか、
それとも、立ち止まる理由を探しているのかは分からない。
一方で、光を持ち歩く者もいる。
顔だけを白く照らしながら、暗がりを進んでいく。
足元よりも、その手の中の光の方が大事らしい。
ときどき危なっかしいが、本人は気にしていないようだ。
その横を、吾輩は音も立てず走り去る。
夜は静かで、よく見える。
余計なものが少ない分、都合がいい。
だが、人間は違うらしい。
……あれほど光を連れて歩くのだから、
きっと、理由があるのだろう。
吾輩には分からない。
吾輩はひとつ、伸びをする。
夜はまだ長い。




