5-1 大帝賞④
〖――一着はファンディルサーガ! アフカードは惜しくも二着! 粘りましたファンディルサーガ、三冠を得てボンヴァルノンと同率!〗
熱波月の重賞。
ロラン記念。
ロンセスバージェス競竜場での重賞にて、ザラエグ様の騎乗された、ファンディルサーガ号が勝利したが、これは観客たちは皆、予想していたことだ。
ロット記念を、ロット家の騎士様方が絶対に落とさないよう画策するように。
ロラン記念は、ロラン家にとって大切な重賞だ。
そしてそのことを身を以て証明するごとく、ザラエグ様は、今年でロラン記念を七連覇している。
先々月のバトラズ杯は、三連覇が達成されるのに百有余年を要した。一方のロラン記念やロット記念は、家の威信を懸けているため、連覇記録が連なっている。ザラエグ様の七連覇というのも、七年前に阻止したというか勝ったのは、同じロラン家の騎士だったので、家的には何の問題もないことだ。
とはいえ逆にいえば、それだけボンヴァルノン号のロット記念勝利は、ロット家にとっては一大事だったわけである。もっとも、そうならないように、慎重かつ大胆に競争を操作すればよかったというのはあるが、少なくともロット家より立場が弱かったり、ロット家と揉めたくなかったりする騎士家の騎手は、間違っても一着など取らないし、そもそも最初から出場しない騎手も多い。
ただ、僕はベレー様が、負けられたほうがよかったとは思っていない。負けるために出場するとはおかしい話だ。出場するならば勝つべきで、勝つ気がないなら、出場すべきではない。ベレー様もそう考えられて、ボンヴァルノン号と共に、全力で翔けたのだろう。
ところで、連覇というのは、一頭の竜は各重賞に一度しか出翔できないため、勿論騎手としての記録であるが、竜としての記録もある。一番分かりやすいのが重賞を勝利した数で、アクセル号・アクセルテグ号は六勝したため六冠、ヤチルシーム号は五勝したため五冠、と呼称する。
それに加えて、特定の組合せの重賞勝利に称号が与えられることもある。たとえば、マーファハーブ号が獲った二歳竜のオリヴィエ記念、三歳竜のダノワ記念、四歳竜のアクセルテグ記念。これらは全て、冬期の重賞で、これを一頭の竜が全て勝利すると、聖三冠の称号を与えられる。同様に、春期・夏期・秋期の三勝それぞれに称号がある他、騎士の名を冠している四つの重賞、つまり三歳竜世代における華洛月のロット記念と風雲月のダノワ記念、四歳竜世代における萌芽月のライル記念と熱波月のロラン記念、これらをまとめて輝四冠と呼ぶなど、いくつか特別な呼び方がある。
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二歳竜二戦目の重賞、甲賞が終わり、次なる重賞は、二ヵ月開いて、葡萄月の剣賞である。葡萄月といえば、秋の大帝賞が開かれる月でもあり、今年の五歳竜の、マーファハーブ号や、エルダーフェス号といった竜たちは今、最後の仕上げの時期にあるだろう。
二歳竜世代も、二ヵ月の(競争の開催日的には、三ヵ月開くわけだが)重賞と重賞の間の期間を、有意義に使うことが求められる。
たとえば、競争に出翔するという手もある。
模擬競争ではなく、本番の競争だ。競竜は何も、十二の重賞だけ開催されているのではなく、あちらこちらの競竜場で、毎週何らかの競争が開かれている。
今月――果実月でいうと、一番盛り上がるのは、帝立第一競竜場で開催される、果実ステークスだ。
こういった重賞以外の一般競争は、世代による出翔制限がな場合がほとんどで、基本的は全世代の竜が出翔できるのだが、重賞開催月との兼ね合いで、大抵は一世代か二世代での競争となる。果実ステークスの場合は、今月三歳竜の重賞があるため三歳竜は参加しないことが多く、四歳竜は、先月のロラン記念から、年末のタルギタオス記念まで、三ヵ月開くため、今月はまだ飛ばないという竜が多い。よって今月は、ほとんどが二歳竜の出翔する同世代同士での競争になる。
よい経験になることは間違いないが、ステークスと銘打たれている競争は、その名の通りステークス形式で行われる。
競争で上位入着した竜には賞金が支払われるが、これらの金は、竜券の売り上げからまかなっている。集金をする賭博の元締が、競争運営の母体に上納した売上を、賞金に流用しているというわけだ。一方のステークス形式の競争では、勿論賭博は行われるが、義務づけられる上納の割合は重賞競争に比べて著しく低い。つまり運営が払ってくれる賞金も低くならざるを得なく、出翔竜の竜主様方が、払われる賞金をそれぞれで拠出しなければならないため、調教師や騎手が気軽に出場したいといえるものではないのである。近年は、帝立競竜場で行われるような大きい一般競争は、運営がまかなってくれる金額も多くなったが、それでもある程度の金額を用意しなければならないことに変わりはない。
「出るよ。果実ステークス」
「えっ」
だから、ベレー様にそう伝えられた時は驚いた。
だが、改めて考えてみると、果実ステークスが開かれるのは帝立第一競竜場。一般競争の中では、帝立競竜場で開催される、比較的格の高いものであるため、竜主様としても、一般競争を飛ばすとしたら上位の選択肢に来るだろう。ちなみに第一といえば、年末のタルギタオス記念などでお馴染みの競竜場である。
まあ決まったものは決まったので、差し当たっては剣賞ではなく、果実ステークスのための調教をする。
帝立第一競竜場で、距離は6フェレンだったか。かなり短期決戦になるので、本番までに、速力を高めておくのと、併翔では他の竜に惑わされない飛調管理を練習したほうがいいだろう。




